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悪魔の象徴  作者: 小籠pow
第2章 学園編~魔紋五傑攻略戦~
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第25話 ミコトvsレイヴン ①

 情報共有会議から二日が経った。


 最初に動いたのは——ミコトだった。


 彼女は振動(トレモール)を操る四年生の魔紋五傑(まもんごけつ)、レイヴン・アシュフォードに挑むためSクラスの教室を訪れた。


「失礼します」


 静かに扉を開けると、レイヴンは机に向かって黙々と勉強をしていた。


「お前は……?」


 顔を上げたレイヴンの鋭い目がミコトを一瞥する。まるで相手の力量を測るような無駄のない視線だった。


「私は1年のミコト・カゲツキです。あなたに魔紋五傑(まもんごけつ)の席を懸けて挑戦しに来ました」


 一瞬の静寂の後、レイヴンの口元にごくわずかな笑みが浮かぶ。


 彼の脳裏にはアゼルからの報告——“1年生が魔紋五傑(俺たち)に挑もうとしている”という言葉が蘇っていた。


「驚かないんですね?」


「お前はSクラスに属する者。正当な権利を行使しているにすぎん。驚くことではない」


 淡々とした口調だったが、その声にはどこか愉快そうな響きも混じっている。


「それに……1年で魔紋五傑に挑んだ者を俺はすでに二人ほど知っている」


 ノエルとアゼルの姿が脳裏に浮かぶ。


「——その挑戦、受けよう」


「ありがとうございます」


「日程は任せる。決まり次第、再度伝えに来るといい」


 そう言って再び机に向かおうとするレイヴンにミコトが一歩踏み出して言った。


「……今からではダメですか?」


「今から、だと?」


「はい。もちろん、先輩が構わないなら...ですが」


 わずかに挑発めいた笑みを浮かべたその言葉にレイヴンはふっと笑う。


「先ほどの“驚かない”という言葉は撤回しよう。今年の一年生……どうやら本当に面白い連中のようだ」


「それで、どうしますか?」


「……いいだろう。その提案に乗ってやろう」


「ありがとうございます。さすがは“最強候補”ですね」


「思ってもいないことを言うな。それに、“あいつ”と比べられるこっちの身にもなってみろ」


 アゼルの顔を思い浮かべながら小さくため息をつくレイヴン。


「場所は——闘技場でいいな?」


「はい。私は立会いの先生と皆を呼んでくるので先に向かっていてください」


 レイヴンは無言で頷き、静かに教室を後にした。


 その足取りは変わらず静かだが内心では確かに何かが燃え始めていた。


(ミコト・カゲツキか……こちらの情報は漏れているだろうが、それでも負けるつもりはない)



※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※



 レイヴンが闘技場へと続く廊下を歩いていると、不意に角から現れた一団と出くわす。


「緊張してるんすか?」


 聞き慣れた声。アゼルだった。


 その背後にはヴィクター、フェリス、ノエルの姿もある。


「……アゼル。それにお前たちもか」


「ノエルちゃんの予想、やっぱり当たっちゃったね!」


 フェリスがにこにことノエルの頭を撫でる。


 ノエルは無表情ながら、わずかに誇らしげな目をした。


「そうか。ノエルの《分析(アナライズ)》で今日の挑戦は読めていたのか。だったら一言、教えてくれても良かったのだが」


「伝えようとはしたんですけど、少し立て込んでしまって……まあ、レイヴン先輩なら問題ないでしょう?」


「嘘っすよ。こいつ、意外とイタズラ好きのサディストなんで」


 アゼルが肩をすくめると、フェリスに撫でられていたノエルがじろりと睨んだ。


「まぁ、お前らの絡みを見てたら別に意外でもなんでもないけどな」


 ヴィクターが呆れたように言いながら視線をレイヴンに戻す。


「……頑張ってくださいね」


「……元よりひとりで戦うつもりだったが。応援があるのも悪くないな」


 レイヴンは静かに笑い、また歩き出す。


「ミコトって子は“カゲツキ流”を生み出したカゲツキ家の一人娘らしいですよ。それに、今年の入試成績は2位だとか」


 ヴィクターの補足にレイヴンは頷いた。


「なるほどな。あの自信に満ちた態度にも納得だ」


「だからって、先輩として情けないところは見せられないすね」


 アゼルの一言にレイヴンは再び口元だけで笑う。


「当然だ」


 そして5人は闘技場に到着する。


 広々とした石造りのフィールド。


 ライトが淡く照らす中、その中央が静かに彼らを迎え入れていた。


「……ここはやっぱり気が引き締まるね」


 フェリスが少しだけ緊張した面持ちで呟いた。


 やがて扉が開き、ミコトと1年生Sクラスの面々、そして立会いの教師ヘルマンが姿を現す。


「来たか……」


 レイヴンが静かに呟くと、他の魔紋五傑の視線も扉に向かう。


 1年生たちは魔紋五傑(まもんごけつ)に軽く頭を下げ、ミコトに声をかけたのち観客席へと向かった。


 ヘルマンは静かにアーティファクトの準備へと移る。


「じゃ、俺たちも行くか」


 アゼルが言い、魔紋五傑たちもそれぞれ頷いて観客席へと移動を開始する。


「頑張ってくださいねー!」


 フェリスが声をかけ、レイヴンは背中越しに軽く手を挙げて応えた。


 観客席に魔紋五傑が並ぶと、カインが嬉しそうに話しかけた。


「アゼル先輩も見に来たんですね!」


「まあな」


 アゼルは気だるげに応えると、横目で1年生たちを見やる。


「……そこにいるので全員か?」


「はい!」


 カインが元気に返事をすると、イリスが前に出てアゼルに言った。


「久しぶりね。改めて自己紹介するわ!私はイリス・ゼーレクス。あなたに挑戦する予定だからよろしく頼むわ!」


 アゼルは面倒そうな顔をしながら「……結局か」と返した。


 その後、次に自己紹介をしたリアムを皮切りに1年生たちが順番に自己紹介をしていく。


 最後のカインまで終えると——


「私はフェリスだよ!よろしくね!」


 フェリスが笑顔で自己紹介をする。


 フェリスと目が合ったヴィクターが無言で頷き、自己紹介。


 続いてノエルも淡々と自己紹介を終え、アゼルを指さす。


「次はあなたよ」


「……チッ」


 アゼルは面倒くさそうに舌打ちをするが、ノエルが視線を逸らさず見つめてくると観念したように自己紹介を始めた。


 その様子を魔紋五傑(まもんごけつ)と1年生たちは笑いながら見守った。


 ——こうして思わぬ形で魔紋五傑と1年Sクラスの“顔合わせ”が完了したのだった。



※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※



 闘技場中央。


 レイヴンとミコトが静かに向き合う。


「改めて、急な申し出を受けてくださってありがとうございます」


 ミコトが軽く頭を下げる。


「構わん。むしろ歓迎すべきことだ。お前のような気骨ある後輩ならばな」


 その言葉にミコトは満足げに微笑むと、肩を回して身体をほぐす。


「じゃあ——全力で行きますね」


「当然、遠慮は無用だ」


 そこへ、ヘルマンがゆっくりと歩み寄ってくる。


「不死のアーティファクトの準備は完了じゃ。試合形式は1対1。勝敗はアーティファクトによる退場、もしくは降参とする」


 低く重い声が場に一層の緊張感をもたらす。


「異議は?」


 2人は静かに頷いた。


「……よろしい」


 ヘルマンが手を上げる。


「では——始めッ!」


 乾いた一声が静寂を切り裂いた。


 こうして——


 魔紋五傑攻略の第一戦「ミコト vs レイヴン」の戦いが幕を開けた。


少しずつですが、多くの方々にお読みいただけるようになり大変嬉しい限りです。今更かよという話ではありますが、初めての作品であり拙いところもありますゆえご容赦願いたいです。リアクションやポイントは大変励みになりますのでお暇がある際にでもしていただければ幸いです。

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