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悪魔の象徴  作者: 小籠pow
第2章 学園編~魔紋五傑攻略戦~
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第16話 秘密の特訓 ①

 夕日が沈んだ頃、学園の訓練場には微かな音が響いていた。


 ザッ、ザッ、ザッ——


 地面を蹴る音、荒い呼吸、そして汗が地面に落ちる音。


 その音の主はヴォルドだった。


 彼は誰よりも早く訓練場に足を運び、朝から晩まで鍛錬を続けていた。


「ふっ……はぁっ……あと、もう一回!」


 両手に重りを担ぎ、全力でダッシュする。


 自分は中位悪魔としか契約できなかった。


 だからこそ、誰よりも身体を鍛えなければならない。


象徴(シンボル)がないなら、その分だけ自分自身を鍛えればいい——!」


 それがヴォルドの信念だった。


 授業が終われば鍛える。昼休みを終えた後も鍛える。授業の合間も、夜の時間も——。


 彼の一日はひたすら鍛錬で埋め尽くされていた。


 そんなヴォルドの訓練場から少し離れた場所で同じように特訓をしている影があった。


「ぐっ……はぁっ……!」


 カインだ。


 彼もまた、授業以外の時間を使い特訓に励んでいた。


 アゼルとの模擬戦以来、彼の頭にはひとつの目標が刻まれていた。


 ——“自分の象徴(シンボル)を信じる”


 そのために、毎日象徴(シンボル)を使い込み、戦闘技術を磨く努力を続けていた。


変化(メタモルフ)——!」


 彼は地面に意識を集中し地形を変えようとしていた。


 しかし——


(まだまだだ……!)


 地面は少し動き波打つような形にはなったものの、これでは実践で相手になにか影響を与えられることは無いだろう。


 もっと瞬時に攻撃的で複雑な形に変化させられなければならない。


(他にも出来ることは沢山あるはずだ…)


 そう自分を奮い立たせながらカインは訓練を続けた。


 ——だが、その時だった。


「カインくん!」


 突然、誰かに声をかけられた。


 カインが振り向くとそこにはヴォルドが立っていた。


「ヴォルドさん!?なんでここに?」


 ヴォルドは腕を組み、じっとカインを見つめる。


「こっちのセリフですよ!カインくんもこんな時間まで特訓してたんですね」


「えっ、あ……はい、まぁ……」


 カインがバツの悪そうに頬をかくと、ヴォルドはフッと鼻を鳴らした。


「なるほど……」


(上位悪魔と契約してるのにこんな時間から死に物狂いで……)


 ヴォルドは無意識のうちに拳を握りしめた。


 自分は中位悪魔としか契約できなかった。


 だからこそ、誰よりも努力しなければならないと信じてここまでやってきた。


 ——だが、カインは違う。


 上位悪魔と契約している彼なら普通にしていても十分強くなれるはずだ。


 なのに、カインはヴォルドと同じくらい、いや、それ以上に必死に鍛錬を積んでいる。


(……なんで、そこまで)


 ヴォルドは自分の胸に広がる感情に気づいた。


 それは、嫉妬にも似た感情だった。


(自分は……上位悪魔に選ばれなかった……)


(カインくんとは違う……)


 しかし——


「ヴォルドさん?」


 カインがまっすぐにヴォルドを見つめた。


 その瞳は何の曇りもない。


 ただ、自分が強くなるために努力し続ける意志に満ちていた。


 それを見た瞬間、ヴォルドは悟った。


(……自分は何を考えていたんでしょうか)


 自分が契約した悪魔の階級なんて関係ない。


 大事なのはどれだけ本気で強くなろうとするか——ただそれだけだ。


「カインくん」


 ヴォルドは静かに言った。


「明日からもここで特訓するんですか?」


「えっ、はい!するつもりです!」


「……そうですか」


 ヴォルドはニヤリと笑い、腕を組む。


「なら、自分も付き合います!どうせなら一人でやるより二人でやった方がいいでしょう?」


「え!? いいんですか?」


 こうして、ヴォルドとカインは一緒に特訓をすることになった。


 ——そして、その様子を少し離れた場所でじっと見つめている者がいた。


「……ふん」


 エリオスは腕を組みながら訓練場の様子を眺めていた。


 ヴォルドとカインがまるでライバルのように競い合いながら鍛錬を続けている。


 その姿を見てエリオスは静かに呟いた。


「あいつら……」


「うん、彼らは君が思ってるよりずっと頑張るタイプだよ」


「っ!?」


 突然、背後から声をかけられ、エリオスは驚いて振り向いた。


 そこにいたのは——リアムだった。


「お前……いつからそこにいた」


「さっきからずっとだよ」


 リアムはニヤニヤしながらエリオスを見つめる。


「あの2人が”努力しないヤツ”だと思ってた?それは大間違いだよ」


 エリオスは眉をひそめる。


「……何が言いたい」


「彼らと君は案外似た者同士かもしれないってこと」


 リアムはそう言いながら訓練場の二人を指さす。


「彼らも強くなるため必死に頑張ってる。君と同じようにね」


「……ふん」


 エリオスはリアムを睨みつけ、視線をそらした。


「くだらん……」


 そう言いながらも、どこか考え込むような表情を浮かべる。


 リアムはそんなエリオスの様子を見てくすりと笑った。


「ま、少しは認めてあげなよ」


 そう言い残し、リアムはその場を去る。


 エリオスは黙って二人の訓練を眺め続けていた。


 彼の瞳にはわずかに興味の色が浮かんでいたのだった。


少しずつですが、多くの方々にお読みいただけるようになり大変嬉しい限りです。今更かよという話ではありますが、初めての作品であり拙いところもありますゆえご容赦願いたいです。リアクションやポイントは大変励みになりますのでお暇がある際にでもしていただければ幸いです。

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