第7話 ミコトとの共闘
波乱の一日目を終え、ついに本格的な授業が始まる日がやってきた。
僕が教室に入ると、すでに全員が席に着いていた。アリアさんとリアムさんが僕に気づいて手を振る。
「おはよう!」
僕も笑顔で挨拶を返し、2人の席へ向かった。
ちょうど何か話していたようなので「何の話?」と聞いてみるとリアムさんが軽く笑って答えた。
「試験のときに言ってた約束のことだよ。3人で受かったら僕に敬語を使うのは禁止ってやつ」
ああ、確かにそういえばそんなことを言っていた。
リアムさんの身分を考えてしまい最初はどうしても敬語を使ってしまっていたけど、クラスメイトとして接するならその方がいいのかもしれない。
「じゃあ、これからは敬語なしで話すよ!」
そう宣言するとリアムさんは満足そうに頷いた。
すると、横でアリアさんがもじもじしながら「じゃあ……私も……」と小さく呟いた。まだ慣れないのか声が少しぎこちない。
リアムさんはそんな彼女に「ゆっくりでいいよ」と優しく微笑んだ。
そんなやりとりをしていると教室の扉が開き、ヘルマン先生が入ってきた。
「さて、新入生諸君。今日の授業は昨日話した通り模擬戦を行うぞ」
教室に緊張が走る。
「2人1組でバトルオートマタを相手に戦ってもらう。だが、試験のときよりも強化された個体だ。油断するんじゃないぞ」
僕は思わず息をのんだ。試験のときでさえギリギリだったのにそれ以上となると相当厳しい戦いになるはずだ。
「戦闘はバトルオートマタを倒す、降参する、2人とも不死のアーティファクトで強制退場させられるのいずれかの条件を満たすまで終了しないから気をつけるように」
(つまり、勝つかギブアップするか、強制的に戦闘不能になるまで終わらないってことか……)
「ペアは試験順位に応じてわしが勝手に決めた。異論は認めん。まず、1組目は…」
そう言ってヘルマン先生が割り振ったペアは1組目が1位のイリスさんと8位のダリスさん。
2組目が2位のミコトさんと7位の僕。
3組目が3位のエリオスさんと6位のアリアさん。
そして、4組目が4位のリアムさんと5位のヴォルドさんだ。
模擬戦は直ぐに始めるようで、ヘルマン先生は「闘技場に集まるように」と言って去ってしまった。
僕たちも各々の武器を持ち、教室を後にする。
すると、僕の隣を歩いていたアリアさんの表情が沈んでいた。
どうやらペアがエリオスさんなので不安になっているのだろう。
「エリオスは気難しいけど、危害を加えてきたり嫌がらせをしてくるタイプじゃないよ。言うことを聞いておけば大丈夫だと思う」
リアムさんが優しくアドバイスするとアリアさんは不安そうにしながら頷いた。
闘技場に到着すると、すでにバトルオートマタと不死のアーティファクトの準備が完了していた。
「今から10分間だけペアと作戦を練る時間を与える。しっかり活用するんじゃな」
ヘルマン先生がそう告げると、僕はアリアさんとリアムさんに「お互い頑張ろう!」と声をかけてミコトさんのもとへ向かった。
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「よろしく!」
「ええ、よろしくね」
ミコトさんは落ち着いた口調で挨拶を返してくれた。軽い自己紹介の後、お互いの戦闘スタイルを確認する。
シャイターンにはいくつかの剣の流派が存在する。
その中でも影月流は王国流と並ぶ二大流派のひとつ。
そして、影月流の創始者がミコトさんの祖先であり彼女の実家の道場はその総本山だという。
「縮小はあらゆるものを小さくしたり、元に戻したりできるの。たとえば相手との距離を縮めて瞬間的に間合いを詰めるとか、刀を小さくして持ち運び、必要なときに元のサイズに戻すこともできるわ。」
なるほど……間合い操作が得意な剣士か。
「じゃあ、僕の象徴についても説明するね」
僕は変化の基本的な能力を説明した。
それを聞いたミコトさんは少し考え込んだ後「……いい能力ね」と呟いた。
「何か考えてたの?」
「ええ。もしあたしがそのシンボルを持っていたらどう使うかを考えていたの」
いかにも頭の良い人の発想だ。僕は感心しながら次の話に移る。
「試験のときより強化されてるって話だけど、どうしようか?ちなみにミコトさんは試験のバトルオートマタは倒せた?」
「ええ。確か7分くらいだったかしら」
(え……そんなに早く!?)
僕はギリギリだったのにミコトさんは軽く倒していたらしい。やはり実力の差を感じる。
「今回は足を引っ張らないように頑張るよ」
僕が意気込むと、ミコトさんはクスッと笑い「あれ相手に時間いっぱい耐えられただけでも十分だと思うわ」と励ましてくれた。
「作戦なのだけど、こういうのはどうかしら?」
作戦についてミコトさんはこう提案した。
「基本的にあたしが前衛で敵を引きつける。カインはその隙をついて攻撃する形がいいわね」
僕は頷く。確かに剣士のミコトさんがメインで戦う方が効率的だ。
「それと、あたしが攻撃を防げないときは盾でガードしてくれると助かるわ。」
「おっけい!」
「いいわね。じゃあ、この作戦でいきましょう」
作戦をまとめたところでヘルマン先生の声が響いた。
「10分経過!最初に戦いたい者はいるか?」
他のチームがまだ話し合いを続けていたので、僕とミコトさんは目を合わせ頷き合う。
「あたしたちが行きます」
ミコトさんが名乗り出ると、ヘルマン先生は頷き、闘技場の中央へ向かうよう指示した。
観客席ではリアムさんが「頑張って!」と手を振っている。僕は小さく手を上げ、目の前のバトルオートマタをじっと見つめた。
(試験の時と形は同じだけど……どう強くなってるんだ?)
隣を見ると、ミコトさんも同じようにバトルオートマタを注視している。
「準備はいいか?」
ヘルマン先生の問いに僕たちは同時に頷いた。
「では——開始!」
バトルオートマタが動き出し、ついに模擬戦が始まった。
少しずつですが、多くの方々にお読みいただけるようになり大変嬉しい限りです。今更かよという話ではありますが、初めての作品であり拙いところもありますゆえご容赦願いたいです。リアクションやポイントは大変励みになりますのでお暇がある際にでもしていただければ幸いです。