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悪魔の象徴  作者: 小籠pow
第2章 学園編~魔紋五傑攻略戦~
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第1話 波乱の入学式開幕

 朝日に照らされながら目を覚ました。


 ゼーレクス悪魔専門学校の寮で迎える初めての朝。


 僕はムクリと起き上がり、大きく伸びをしながら欠伸をした。


「新しいベッドだから寝つけないかと思ったけど、意外とぐっすり眠れたな...」


 自分は意外と繊細だと思っていたけれど、どうやらそうでもないらしい。


 立ち上がると洗面台へ向かい顔を洗う。冷たい水が肌に触れ、意識がしっかりと覚醒した。


 鏡に映る自分を見て、心の中で改めて呟いた。


(今日から本格的に学園生活が始まるんだ...)


 気持ちを引き締めるようにもう一度深呼吸すると、昨日受け取った学園の制服に着替え始めた。


 ゼーレクス悪魔専門学校の制服は黒を基調としたデザインに胸元の校章が輝いている。


 初めて見た時、素直に「かっこいい」と思った。


 制服を整え、ネクタイを締めると玄関へ向かう。

 

 そして、無意識に——


「行ってきます!」


 ぽつりと、誰もいない部屋に向かって声をかけていた。


(この癖は当分抜けないだろうな...)


 実家では毎朝欠かさず言っていたからだろう。

 

 思わず苦笑しながら僕は部屋を後にした。



※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※



 入学式は大講堂で行われる。


 新入生は指定の時間までに到着すれば参加できるため急ぐ必要はない。


 時計を確認すると、まだ開始まで1時間ほどあった。


 (ちょっと早く起きすぎたな)


 特にやることもなかったので大講堂の前にあるベンチに座り、ぼーっと時間を潰すことにした。


 時間が経つにつれ、少しずつ新入生が集まり始める。


 皆、早めに大講堂へ入って席を確保しようという考えのようだった。


 その流れに乗り、僕も一足先に中へ入ることにする。


 大講堂の中は広々としていてすでに多くの新入生が座っていた。


 何気なく辺りを見渡していると——


 隅の方で誰かを探すようにキョロキョロしている人物がいた。


(あれは...!)


 思わず僕は駆け寄った。


「アリアさん!」


 僕の声に気づいた瞬間、アリアさんの顔が一気に明るくなった。


「カインくん!」


 再会を喜び合いながら僕たちはさっそく話し始める。


 どうやらアリアさんは王都への到着が少し遅れてしまったため、おばあちゃんの家への挨拶が遅くなったらしい。


 だから僕は彼女の合格を知らず、逆にアリアさんはおばあちゃんから僕の合格の話を聞いていたそうだ。


「それで、さっきからカインくんを探してたんだよ!」


 嬉しくなると同時に、彼女とこうしてまた一緒に学べることに安堵する。


 ひとしきり会話を楽しんだ後、次に話題に上がったのは——


「...それで、リアムさんはどうなったのかな?」


 僕がそう尋ねると、アリアさんも頷く。


「私もさっきから探してはいるんだけど」


 どうやら、彼女も同じことを考えていたらしい。


 まだ会場に来ていないだけかもしれないが、試験の時にあれほど頼りになったリアムさんがここにいないとどうしても不安になる。


「まだ来てないだけだよね...」


 祈るように呟いたその時——


「誰か探しているのかい?お二人さん」


 背後から聞こえてきたのは——


 聞き覚えのある落ち着いた声。


 ハッとして振り向くと、そこに立っていたのはリアムさんだった。


「「リアムさん!!」」


 僕とアリアさんは声を揃えて彼の名前を呼んだ。


 リアムさんは相変わらずの爽やかな笑みを浮かべていた。


「信じてはいたけど...2人とも受かっていて本当に安心したよ」


 彼のその言葉に僕とアリアさんは思わず目を潤ませる。


「僕たちもリアムさんがいないから不安だったんです!」


「試験の後、探したけど見つからなくて……」


 僕たちは試験の日に感謝を伝えたかったこと、しかし彼を見つけることができなかったことを伝えた。


「試験の日はごめんね。少し急用が入っちゃって……」


 リアムさんは申し訳なさそうに言った後、優しく微笑む。


「それに、感謝なんて気にしなくていいよ。それよりもこうして2人と一緒に学園生活を送れることが何より嬉しいし」


 その言葉に僕たちは思わず涙目になった。


 (本当に……また3人で一緒にいられるんだ……)


 こうして無事に再会を果たした僕たちは、入学式が始まるまで途切れることなく会話を弾ませるのだった。


 僕たちが話しているうちに大講堂には次第に人が増え始めた。


 リアムさんによるとどうやら新入生だけでなく在校生も参加しているらしい。


 確かに、ちらほらと大人びた雰囲気の人や明らかに強そうなオーラを纏う人物がいる。


 そんな上級生たちに圧倒されていると、突然——


「静粛にしてください」


 透き通るような声が講堂内に響き渡る。


 その声の主は——


(アルノーさん……!)


 僕の一番の恩師である彼が壇上に立ち、生徒たちを見渡していた。


 やがて静寂が訪れると、アルノーさんは満足そうに微笑み、開式の挨拶を始めた。


「——ようこそ、ゼーレクス悪魔専門学校へ!」


 彼の明るく響く声が広い講堂を満たす。


「本校は悪魔と契約した者たちが真に強き者となるための学び舎です。そして、ここに立つ君たちは熾烈な試験を乗り越え、この門をくぐる資格を得た者たちだ。」


「そんな君たちに我々教師陣は最大限の敬意を表します。」


 アルノーさんはゆっくりと視線を巡らせ、新入生たちの表情を確かめる。


 しかし、次の瞬間——


「……だが、誤解してはいけません」


 一瞬で空気が張り詰めた。


「入学できたからといって、安心するのは早いのです」


「ご存知の通りこの学園では生徒はランク付けされ、それに基づいてクラスが決まります。しかし、私は全生徒がSクラスになれるように努力するべきだと考えています」


 ざわめく新入生たちを前にアルノーさんは愉快そうに笑う。


「もちろん、そのための道は険しく途方もない努力を要するでしょう。しかし、学園での試練を乗り越えればそれは決して不可能ではないと私は約束します。」


「強くなるも、挫折するも、すべては君たち次第」


「この学園での時間が君たちをどこへ導くのか——それを決めるのは君たち自身です」


「君たちは今、無限の可能性を持っている」


 彼は真っ直ぐに新入生たちを見据え、微笑んだ。


「この学園で自分の限界を超えてください。己の力を証明してください。そして、どんな未来を掴むのか——私に見せてくださいね」


 そう言い切ると、アルノーさんは一歩下がり——


「では、これより入学式を始めます!」


 彼の宣言と同時に大講堂は大きな拍手に包まれた。


(やっぱり……アルノーさんはすごい人だな)


 僕は改めてそう思うのだった。


少しずつですが、多くの方々にお読みいただけるようになり大変嬉しい限りです。今更かよという話ではありますが、初めての作品であり拙いところもありますゆえご容赦願いたいです。リアクションやポイントは大変励みになりますのでお暇がある際にでもしていただければ幸いです。

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