第9話 再会
波乱の昼食を終え、僕とアリアさんはついに実技試験の時間を迎えることになった。そのため、僕たちは食器を片付けて食堂を後にした。
例のベンチへ戻り、3人で試験の内容について再確認する。
実技試験の内容は毎年同じ——バトルオートマタという戦闘用ロボットとの模擬戦だ。
受験生はバトルオートマタと戦い、その戦闘を試験官が評価するという流れで行われる。
「バトルオートマタはかなり強く設定されているらしいから倒すことを考えずに “自分がどれだけ戦えるのか” を試験官にアピールすることを意識するべきだよ」
リアムさんのアドバイスを聞き、僕とアリアさんは頷いた。
「それじゃあ2人とも頑張って!」
リアムさんの応援を背に僕たちは校舎へと向かう。
筆記試験の時と同じく試験会場は別々だったので、互いに軽く声を掛け合いそれぞれの試験会場へと歩き出した。
——が
僕は完全に道に迷ってしまった。
(まずい…このまま試験会場にたどり着けなかったらどうしよう…)
刻一刻と時間が過ぎていく。
本格的に焦り始めていたそのとき——
突然、目の前に人影が現れた。
「す、すみません!」
勢いよくぶつかってしまい慌てて謝る。
しかし、そのぶつかった相手は予想外の人物であり僕は驚きに目を見開いた。
「困っているようですね、カインくん」
「アルノーさん!」
そこに居たのはアルノーさんだった。
どうやら、遠くでウロウロしている僕を見かけて象徴を使ってここまで移動してきたらしい。
「会場まで案内しますよ」
そう言って歩き出したアルノーさんの後ろを追いながら僕は話しかける。
「アルノーさんが戻った後、めっちゃ頑張ったんですよ! 共鳴率も課題だった20%に何とか到達しました!」
自信満々に報告すると——
「ほんとに20%になったんですか!?」
アルノーさんは驚きの表情を浮かべ、思わず足を止めた。
「君には驚かされてばかりですね……」
詳しく聞くと、どうやら20%という数字は僕のやる気を上げるための無茶ぶりだったらしい。
アルノーさんの予想ではせいぜい15%程度に到達すれば十分だったとのこと。
(そういえば14%を超えたあたりから伸び悩んでたんだよな…)
アルノーさんの指導通りのトレーニングを続けていたのに 14%あたりからまったく上がらなくなくなったので疑問を感じていたがこれで解決した。
しかし、僕はそれでも 「課題の20%に到達しなきゃ!」 という一心でさらに自分流のトレーニングを課して追い込んでいた。
「ひどいですよ!ほんとに毎日死ぬかと思ったんですから!」
僕が怒ると、アルノーさんは苦笑いしながら謝った。
「しかし、その努力のおかげで君は実力を出し切れば“絶対”合格できるレベルにまで達していますよ」
——絶対合格できる。
その言葉に僕の胸の奥に熱いものが込み上げた。
気がつけばもう試験会場の前に着いていた。
「さて、私は他の会場の担当をしなくちゃいけないので……健闘を祈りますよ」
そう言い残してアルノーさんは再び消えてしまった。
その場に立ち尽くしながら僕は深く息を吸い込み、改めて感謝の言葉を心の中で送る。
(アルノーさん……ありがとうございます)
そして気を引き締め、会場のドアを開けた。
筆記試験と同じようにすでに多くの受験生が席についていた。
黒板には張り紙があり、そこには「受験番号が呼ばれるまで席で待機すること」と書かれている。
僕は空いている席に座り名前が呼ばれるのをじっと待った。
10分ほどするとついに僕の受験番号が呼ばれた。
(ついに……来たか)
深呼吸をして立ち上がり奥の部屋へと進む。
部屋の奥では2人の試験官が待っていた。
1人は女の人であり、もう1人は白髪のお爺さんだ。
女性の試験官に名前と受験番号を確認され、それに答える。
確認が終わると次に試験の注意事項が説明された。
「制限時間は10分です。その間は何をしても構いません。ただ、バトルオートマタも反撃をするので防御か回避をして対処してください」
「また、もし10分耐えられないと感じたらすぐに棄権してください。無理をした場合の怪我については責任を負いません。
試験官の言葉をしっかり頭に叩き込む。
「最後に武器についてです。受験生それぞれに愛用する武器があると思うので、1つまで持ち込みを許可します。ただし、アーティファクトの持ち込みは認めません」
(武器が1つまでしか持ち込めないってルールは僕の象徴と相性がいいな...それよりもアーティファクト...なんだそれ?)
僕が聞いた事のない単語に困惑していると、説明を終えた試験官が「では、好きなタイミングで開始してください」と告げた。
どうやら僕の合図で試験が始まるらしい。
(とりあえず余計な事を考えるのはやめよう。落ち着け……自分を信じろ)
改めて深く深呼吸する。
アルノーさんは無茶苦茶な人だけど嘘はつかない。その彼が 「実力を出し切れば絶対に合格できる」と言ったんだから僕は自信を持つべきだ。
自分を奮い立たせるように強く拳を握る。
そして——
「始めてください!」
僕は強く、はっきりと宣言した。
試験官の手が動く。
——試験開始の合図が鳴り響いた。
少しずつですが、多くの方々にお読みいただけるようになり大変嬉しい限りです。今更かよという話ではありますが、初めての作品であり拙いところもありますゆえご容赦願いたいです。リアクションやポイントは大変励みになりますのでお暇がある際にでもしていただければ幸いです。