こたえる
確か、つべのラジオで流れていた話で。日本語っていうのは、正書法の無い珍しい言語なんだそうです。他の言語は大抵、正しい綴り方、読み方がある。しかし、日本語には唯一の正しい漢字の使い方、送り仮名の付け方、って言うのが無い、っていうのは皆さん深くご存じの通り。
もともと、校正っていうのは、この明らかである誤字を、正字に直す役職であった、ということで。そうなると正書法の無い日本語での校正っていうのは、何と難しい仕事なんでしょうか。
さて、今回は「こたえる」。漢字に直すと主に「答える」「応える」「堪える」となります。
答えるは、一番はっきりしていて、質問に対する回答を返すもの。つまり「回答する」の意味の時に使われる感じですね。
応えるは、相手からの働きかけに反応すること。「反応する」とか、「応諾する」とかの時に使う漢字。さて、これで「応答する」となるとちょっと難しい。「呼びかけにこたえた」みたいな場合ですね。同じような意味の漢字を重ねた熟語ですが、こういった場合は多分「答える」でも「応える」でもいいんじゃないかと思います。
堪えるは少し面倒。この綴りで、実は読み方としても「こたえる」「たえる」「こらえる」の三種があるようです。ですので、こちらを使う場合にはなるべくルビを振るのが良いでしょう。意味的には頑張って耐えるということ。用例としては、「持ち堪える」あるいは「堪えられない面白さ」と言ったところでしょうか。実際には「たえる」の読みの方がよく使われ、この漢字を「こたえる」と読ませるのはあまりない気がします。
さて、今日見かけたのは「あいつの言ったことがとてもこたえたわ」と言った感じの時の「こたえる」。本文では「応える」を使っていて、なんか違和感が強かったです。その言葉のショックに耐えているのだから「堪える」の方が良いんじゃないかと思って念のため調べてみたところ。
実は、ここは「応える」が正しかったんですね。応えるの第二義に、「強く感じる」というものがありまして。「寒さが身に応える」って言うのが典型的な用法だそうです。相手の言った言葉が突き刺さってきた、というような場合は、やはりこの「応える」を使わないといけないでしょう。
でもなんか、違和感あるんですよねえ。なるべくなら、ここは「こたえる」とひらがな表記にしていただけるとありがたいなあ、と思います。
ちなみに、その後に読んだ別の作品では、同じ意味で「堪える」が使われていました。ちょっとさすがにこれは、という事でこちらの誤字報告もしないで済ませてしまいました。