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BLUE TONIC 【1巻】  作者: じゃがマヨ
刀!?
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第8話


 滑空する刀身。


 その最中に、光が揺れる。


 回転していたのは少女と大男の間にある“射程圏内”だった。


 血液の中に酸素が入る。


 跳躍する筋肉が、バネのように空気を弾く。


 刀身の先端が地面の上を滑空するや否や、にぶい音が空間を走った。


 大男はバランスを崩したように膝を折る。


 下半身が崩れ落ちる間際、その半身はまだ、腕を下ろすことだけに終始していた。


 それが“間に合わなかった”のは、すでに腕を下ろせるだけの力が、——物理的な構造が、そこに残っていなかったからだ。



 ドッ



 大男の体には、一本の「線」が入っていた。


 膝を折る挙動と時間差で訪れたのは、



 ——血だ。



 噴水から出る水のように、体の中心から赤い鮮血が飛び出る。


 上半身と下半身のちょうど真ん中を切り裂かれた体は、それぞれが別の方向へと傾いていた。


 少女は刀を鞘に収めた。


 柄を握りながら、すでに息を“吐いている”。


 躍動する時間が、平坦な空間の中に飛び去ろうとしていた。


 少女の動きは滑らかだった。


 それでいて、限りない一点の中に縮まろうとしていた。


 勝負はもう決していたんだ。


 袂を分かったのは、少女が放った斬撃だった。


 凄まじい速度で絞り出された一閃が、大男の腹を裂く。


 そこに濁りはなかった。


 空気の乱れも、澱みも。


 少女が触れていたのは、大男との間にある直線的な間合いだった。


 斬撃が届く半径の手前では、大男の影が地面の底を衝こうとしていた。


 少女はただ、その中心に踵を押し込むように、“最小”の動作を繰り出しただけだった。


 刀が通り抜けたその角度には、踏み込んだスピードが緩む気配さえなかった。


 刀が鞘に収まる頃には、もう、2人の距離は永遠に分かたれていた。

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