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うなぎ・ウナギ・鰻

2023土用の丑の日。鰻が食えないことが確定したので代用品を作ることにした。ついでに以前に作った時の様子を公開してみた

作者: 鶴舞麟太郎

※本エッセイの体験部分は過去の話です。

 皆さん、令和5年7月30日は、土用の丑の日ですね。ホントは鰻を食べに行く予定だったんですけど、28日になって家族が熱を出してしまいまして、お店屋さんに行くことがままなりません。ですから、家で食べることにしました。



「はぁ!? お前、『鰻を買ってきて食うな! 食いに行け!!!』とか言ってたじゃねぇか!」


 私の過去の言動から、こう思った方もいらっしゃるのではないでしょうか?


 ちなみに、『鰻は専門店で食べるべきである』この考えは、いまだに1ミリも変わっていません。


 ですから、今回、私が土用の丑の日に食べるものは“代用品”です。


 それは何か?



 豚バラ肉の蒲焼きです。


※あくまで代用品ですから、正直食材は何でも良いんですが、食材によっては癖がきつすぎたり、たれのしみこみが良すぎて味が濃くなってしまったりしますのでご注意を。

※試していないのではっきりしたことは言えませんが、豆腐(※これ以上ないくらい水切りした物)、生揚げ、シイタケ、竹輪、笹かまあたりでも、それなりに美味しくできそうな気がします。



 ちなみに、この料理は、私の尊敬する先輩が教えてくだったものです。


 その方は、私にこうおっしゃいました。



「鶴ちゃん(※私のこと)。ポイントはタレだよ。ベースは普通に売ってるので構わないけど、隠し味が必要なんだよ!」


「何が必要なんですか?」



「鰻だよ鰻!」


「???」



「まあ、聞いてよ。C国産の安いので良いから、スーパーとかで鰻を買ってくんだろ、で、タレん中にドボンと入れて、そのまま煮詰めるわけよ。あ、煮詰まって味が濃くなっちゃうから、タレは最初から水で薄めとかなきゃだめだよ?


 こうすっと、鰻のダシがしっかり出て、鰻屋のタレの味になるんだよ」



「ウヒャ~! 贅沢ですね」



「でもさ、こうしないと、焼き鳥みたいな味になっちゃうんだよ。


 まあ、それはそれで美味いんだけどさ、俺ら、焼き鳥とは求めてる物が違うわけじゃん? だから、この一手間が必要なの!」



「なるぼど!」


「で、いい感じで煮詰まったら、常温になるまで冷やすだろ、そこに豚バラをぶち込んで、冷蔵庫で一昼夜漬け込むの。そうすっと鰻味の豚肉のできあがりってわけだ」


「先輩、ちなみに最初に入れた鰻はどうするんですか?」


「え? 捨てるけど? ダシ取り用だし、タレが染みすぎて、食うにはちょっとね!」







 先輩なので言い返しませんでしたが、私は納得できないところがありました。


 鰻を1本浪費する点です。


 ここまでして鰻味のものを食べたいという執念は認めます。が、ダシのためとはいえ、そのままでも食べられる食材を無駄に消費することは、私には耐えられません。



 鰻っぽくしたいけど、鰻の身は使いたくない。じゃあ、どうしたら良いか?




 ふと良いアイディアが考えついた私は、ちょっと離れた鰻屋に向かいました。そこなら、きっと私の求める物があるはずです。







 私がやってきたのは、大きな川の近くにある、とあるお店です。『国道沿いにある看板の店名が解読できない店』と言えば、ピンと来る人がいるかもしれません。


 私は天然にこだわってた東京の名店とかも含め、何件も鰻屋を食べ歩いていますが、今のところここの店が最高だと感じています。ここの店の特徴は、関西風の焼きと関東風の蒸しを折衷した調理法で、表面はパリッと、中はふんわりと仕上げてきます。そのため、タレは鰻の上にかけないくらいの徹底ぶりです(※味はきちんとしみてます)。


 タレ自体にもこだわりがあり、江戸の味を守るため、当時一般的ではなかった砂糖を一切使わず、甘みは味醂で出すと言う徹底ぶり。鰻本来の味で食わせる本格的な店です。



 また、ここの肝吸いが素晴らしいんです。


 私は肝吸いを美味いと思うことはほとんどありません。前にも書いたことがありますが、あれは『鰻をその場で裂いた』という証明です。肝吸いが別料金の店は、私は冷凍品を蒲焼き状態で仕入れているか、注文に関係なく流れ作業で調理している可能性を疑います。

 無いと幻滅するけど、あっても特に嬉しくもない。それが私にとっての肝吸いです。


 私にとって、普段は店の心情的なランクを下げるのにしか用いない肝吸い。この店だけは、肝吸いでさらにランクが上がりました。


 何が他と違うか? 実は、こちらのお店、肝が炙ってあるんです。たったそれだけ、それだけなんですが、その一手間が加わったことによって、肝特有の妙な生っぽい感じが消えて、椀の中に一つの世界ができあがっているんです。




 で、来たからには食べないと。と、特上を注文しました。

 コレです。

挿絵(By みてみん)



 このお店の特上は、何も言わないと鰻とご飯がセパレートで出てきます。写真は自分でご飯に載せたものです。


 なんでそんな面倒なことをするかというと、タレの量を自分好みに調整するためです。いつもは、パリッとした食感を味わうため、1/4ほど食べてから載せるんですが、この時は忘れて全部載せちゃいました。ちょっと失敗です。


 そして肝吸い

挿絵(By みてみん)




 大変美味しゅうございました。







 幸せな気分に浸っていたいところですが、このまま帰ったら、鰻を食っただけで終わってしまいます。今回の来訪の本来の目的は、鰻を食うことではありません。ですから、私は、会計時に手土産コーナーで、今回のお目当て品を探します。


 ところが、いつもある場所にソレがありません。私は店の人に尋ねました。




「すいません。骨せんべい(※300円)ありますか?」


「ごめんなさいね、今やってないんですよ」




 がーん!!!


 聞けば、夏は回転が良すぎて、骨を揚げてる時間が無いんだとか。

 考えてみれば、骨せんべいは二度揚げする関係上、手間がかかりますもんね。


 豚骨、鶏ガラ、骨からは良いダシが出ます。鰻骨うなこつなら良い味が出るんじゃないかと思ったんですけど……。店に行って、ただ鰻を食べただけで終わっちゃいましたね(笑)




 その後、スーパーならどうだ? と思って近くの覗いたら。ありました! 『ウナ○ボーン』って商品が!!



 やった! そう思って原材料を見ると、唐辛子とか余計な物が入っています。コレじゃあ雑味が出ちゃって、ダシ用にはとても使えません。


 俺もC国産鰻に頼るしかないのか? そう、諦めかけた時、ある物を発見しました。それが『冷凍肝焼き』(4本入り298円)です。うーん安い!


 鰻エキス抽出食品はこちらで決定です。





 さて、『鰻ダシの素』を手に入れましたので、家に帰って早速調理を始めます。


 まずは肝焼きを解凍し、串から外します。少し暖まった方が扱いやすいので、レンジにかけるのが良いかもしれません。


 串から外した肝は、一度伸ばして、苦袋にがぶくろ(※胆嚢)を取り除きましょう。肝焼きとして食べるなら、この苦味がアクセントになるのですが、蒲焼きに苦味は不要です。ちなみに、苦袋は直径1cm弱で、黒っぽくて丸いです。わからなかったそれっぽい部分を試しに食べてみましょう。苦かったらそれが苦袋です。



 次に、買ってきた鰻のタレを鍋に注ぎます。今回は日本○研の商品(210ml)を1本使いました。ちなみにこの商品自体に鰻エキスが入っています。ですから、そのまま使っても、ある程度の鰻味はするはずです。



 そこに、肝を投入、水を適量注ぎ、火にかけます。



 煮立ったら火から下ろし、常温になるまで置きます。

挿絵(By みてみん)



 タレを冷やしている間に、豚バラ肉を食べやすい大きさに切ります。

 豚バラは鰻と違って箸で切るのは難しいです。角煮にするなら話は別ですが、今回は焼きますので、一口大にしておくのが良いでしょう。



 熱が取れたら、豚肉をタレに漬け込みます。肝も一緒につけ込んでしまいましょう。

挿絵(By みてみん)


 ちなみに肝は、身と違ってあんまり味が染みませんので、1日放置しても普通に食べられます。

※生の豚肉と一緒に漬けますので、必ずもう一度加熱してから食べてください。




 冷蔵庫で丸1日以上漬け込んだら、焼きます。

挿絵(By みてみん)



 ひっくり返しながら、じっくり焼いたら、ご飯に載せて完成です。

※お好みで、煮立たせた漬けダレを回しがけてもいいです。

挿絵(By みてみん)


 十勝風豚丼みたいな見た目です。が、味は鰻風味です。




 鰻とは食感とかが大きく違いますが、鰻風味は味わえます。

 間違いなく箸は進みますよ。



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― 新着の感想 ―
[一言] なんていうか、探し求める執念がすごいです。小説を書くというのには、こういう執念が、資質として必要なのでしょうね。私には、その執念がないので、残念ですが……。って、なんか話が壮大になってしまい…
[一言] 今年も鰻エッセイでしたね。 今年は当日食べられなくて残念、でしたけれど、別に土用丑の日に限るというものでも無し、むしろそこを外してあげた方がみんなハッピーになれるかもしれませんね。 鰻、食…
[一言] 鰻食いてぇ……。 豚でもちゃんと鰻風味が味わえるレシピありがたいです! 先輩が言っていた鰻の出汁を取るために、鰻を犠牲にするのはちょっと受け入れられないですね(^-^;
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