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ドッペルフェアリー  作者: 二ッ木みりん
1/1

失業してもボチボチ元気


 その1


 四月初旬、春の遅いこの地域にも

ようやく暖かさが季節の変わり目を告げた。

煙草をやめて暫く立ち、雪から顔を出した土の匂い、

車行き交う道路の匂いなどが

感覚の戻った鼻を…心を楽しませる。

そんな事で楽しいなんて感じるのは

何時ぶりだろうか。


「さあ、妖精の薬酒よ!のみなさい!!」 


目の前に市販の薬用酒を入れた軽量カップを

両手で抱えて浮遊する、

昆虫のような二対の羽根をそなえた

とてもとても小さな少女が、

そんな感傷をぶち壊す。


「うん、ありがとう」


手渡された薬用酒を飲み干して溜息ひとつ。

空いたカップをひったくる様に回収した、

ちいさなちいさな少女は

洗い場へ向かい飛び去った。

その姿を横目で見ながら、さらに溜息ひとつ。


自分の心の安らぎは、まだ遠いのだろうか…。



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