決着
ん!?勘太郎の様子がおかしい。
「ヒック……ヒック……おぇぇぇ」
勘太郎はビーストを消化しきれずに吐き出し
てしまった。
「あぁ……。昨日はストレス発散を兼ねて暴飲
暴食してしまいましてなあ。特に日本酒の飲
み過ぎが効いとりますわ。腹の調子が悪うて
消化しきれまへんでした。おっちんさんまた
何かあったら宜しゅう頼んまっす」
どろんっ
そう言い残し勘太郎は去っていった。
「あの黒蛇、帰っちまったぜ」
「あのクソ蛇め」
「どうすんの?」
「とりあえず勘太郎の口の中で爆発をしてくれ
たのは良かったが最後まで処理を出来なかっ
たのは誤算だったな。」
勘太郎が吐き出したビーストの残骸が空中で
集まり始めたではないか。
「これは再生するぞ」
「自爆はもうしないんだろ?なら俺がチョチョ
イっと倒して……」
ズキンッ
「うぁぁ全身が裂けるように痛い……」
突然、雷鳥の体に激痛が走った。
「そろそろ限界が近いな」
「どう言う……ことだよ?」
「さっきも言ったが容量オーバーのお前の体が
限界に近いってことだ。とりあえずこれを飲
めば何とかなるだろう」
ゴクンッ
多尾に渡された黒い粒を飲んだ途端、一瞬
で痛みがなくなった。
「痛みが消えた?!なんで?なんで?」
「勘太郎の里に代々伝わる長老のウンチを煎じ
て作った秘薬だ」
「ぷぅーーーー!うんち?!」
「うんちどが何か文句あるか?これで短時間だ
が痛みが消えている間は戦えるはずだ。その
代わり副作用でさっきの痛みの数倍の症状が
3日は続くから激痛で死ぬなよ」
「先に説明してくれよ。んーまあこれしか方法
がないなら仕方ないよな」
空中に集まったビーストの残骸が元の姿
「お出ましだぞ」
そしてゆっくりと降臨するビースト。
「ありがとうございます。お陰でかなり強くな
れました。なるほど、妖怪と融合したんです
ね。弱っても上位妖怪、強いはずです。1ラ
ウンドはお恥ずかしい所をお見せいたしまし
た。あなたを落胆させないように全力で行き
ますよ。さあ、第2ラウンドと行きましょうか」
ビーストは雷鳥に超接近しニコッと微笑んだ。
次の瞬間、閃光波を口から放った。
まともに直撃。吹っ飛ぶ雷鳥。
「クソー、接近してきたのが見えなかった。て
かさっきよりも強くなってる気がすんだけど」
「間違いなく強くなってるな。だがスピードは
捕らえれないレベルじゃないぞ。お前には俺
の能力もあるんだ。熱や空気の流れを感じろ。
そして奴のエネルギーの核を感知するんだ」
「言ってることが難しすぎてよ」
「お前のような単細胞はこう言う野生的習性は
簡単なはずだ。集中しろ」
気合いを入れ直す雷鳥。
ビーストの右パンチが雷鳥の顔面を直撃。
シュッ
パンチが空を切る音がした。
雷鳥は当たる寸前で回避していた。
怯まずビーストは雷鳥を攻撃。
しかし雷鳥はこれも当たる寸前で回避。
「本当だ。これはイケる」
「言っただろ俺に感謝するんだな」
「分かった分かった」
ビーストはそれでも攻撃を仕掛ける。
しかし雷鳥は全て回避防御。
「何回やっても無駄だぜ。もう見切っちゃった
もんねー」
しかし笑いながら攻撃を続けるビースト。
多尾は何かに気づいた。
「おいっ退がれっ」
ビーストは雷鳥に攻撃を仕掛ける瞬間
体を2体に分離させた。
左の1体は回避成功
右の1体は回避失敗
「残念でしたね」
気づいた時には遅かった。
雷鳥は左腕を切り落とされてしまった。
「はい一丁あがり」
「うわぁーー痛ーー」
「あーあー油断するからだ」
〜命・朱音〜
遠くから見ていた命達は
「清水寺のガキから妖気を感じる」
「多尾と何かあったようじゃの。まぁどちらに
せよワシらとは次元が違いすぎるわぁ。ここ
で見物でもさせてもらおうかのぉ(面白ーな
ってきたわい)」
「でも……清水くんの腕が」
〜雷鳥VS〜
物体絶命の雷鳥。出血も酷い。
「妖魂を渡せば優しく殺してあげるよ」
とりあえずその場を逃げる雷鳥。
「ふぅ。逃げるなら容赦しないよ」
ビーストは掌を空に翳した。
次の瞬間、掌から無数のビームが降り注ぐ
「早くしないと出血多量で死ぬぞ」
「確か朱音が回復術を使えるって言ってたな」
「早く腕を元に戻せば良いだろ」
「はっ?落ちた腕は簡単には戻んねえんだよ」
「だから早く腕を再生しろ」
「何言ってんだよ腕は切られたんだよ。それ
より止血が先だ。仲間と合流する」
「言ってなかったか。これはかなり妖力を使う
が俺は再生能力を備えてあるんだ。だから貴
様も出来るはずだ。たぶん」
「たぶんって」
「このまま逃げながら生えるイメージで集中。
パンって感じだ。」
逃げながら精神を集中させる雷鳥。
「騙されたと思って。えっとバンって生えるイ
メージで。
パンっ!!」
なんと!?本当に生えた!
「生えた!?えっ生えた!」
「だから言っただろ」
「多尾すげーっ。でもこのネバネバが臭い」
「俺様のことは、多尾ではなくおっちんと呼べ」
「おっちん宜しく。改めてオレは雷鳥」
ゆっくり自己紹介している時間はなさそうだ。
「雷鳥、行くぞ」
ビーストのビームを掻い潜り
「次はこっちの番だ」
雷鳥は右後ろに回り込む。
ビーストの頬に裏拳炸裂。
怯む隙に数十発の拳を叩き込む。
ビーストはまた体を2つに分離させ
左右からのランダム攻撃だ。
「そう何回も食らうかよ」
雷鳥はビーストの右体を衝撃波で吹っ飛ばす。
その隙に左体を原形がないほど殴り続けた。
吹っ飛ばした右体が攻撃を仕掛ける。
左体はその間に再生。
右体と左体の2体で雷鳥を攻撃。
「くそー2体同時はキツイな」
「力も強くなった上に再生能力も上がっている。
これくらいの攻撃では埒が開かないな」
「おっちん策はあるのかよ」
「時間もそろそろだな。雷鳥、妖力だけを最大
値まで高めるぞ」
「どう言う意味だよ?今はその妖力を使えてん
だろ?」
「同時に神通力が混じっているんだ。これだと
大技が使えない。アイツが再生出来ない威力
を加えるには大技しかないんだ」
「どうすんだよ」
「総合的に奴の方が今は格上だ。隙を作って最
短距離で撃つ。とにかく意識して妖力だけを
最大限に高めるんだ。早くしろ」
ビーストは再生を終え攻撃してくる
「さあ終わりにしましょう」
意識して妖力を高めるが思うようにいかない
「出来ない…おっちん出来ないって」
「神通力仏通力に妖力、いきなりは難しいか。
10秒だけ時間を作ってやるから集中しろ。
(時間的にも雷鳥の体がそろそろ限界)…」
接近してくるビーストにおっちんが何かをし
ようとしている
「おいバケモノこっちを見ろ」
可愛いおっちんの目が蛇の目に、ビーストは
声に反応しておっちんを見た
「蛇眼石化縛り」
ビーストの下半身が石化していく
「なんだ?動けない!」
「足しか石化できんとは情けない。まぁラッキー
と思うしかないな。全ての妖力を雷鳥に渡し
たと…思っていたが…生命を維持する妖力く
らいは残してくれた…うっ…負荷が凄いな…
あとは任せた…」
「おっちん大丈夫?」
おっちん、肩からスーッと落ちていく
「おっちん?!」
「大丈夫だ…集中しろ…気の流れを感じるんだ。
俺たちも自然の一部だ…」
一旦呼吸を整え、最集中する雷鳥
「俺の前で悲しみの惨劇は起きさせない」
雷鳥周辺の地面がボコッと凹み出した。黄色・
紫・緑の闘気が雷鳥を取り巻く。目を瞑る
「これが通力?すごく暖かい。あの奥にあるが
妖力。通力と反発し合っている。頼む力を貸
してくれ」
'どうぞ'
白銀の闘気が雷鳥を燃えるように包む
「これが本当の妖怪」
ビーストの石化が解け始めた
「あのチビっ姑息な術…ん?解けたようだな。
これで死ねっシャー」
フルパワーのトップスピードで向かってくる
ビースト
「皮膚が溶け出してきやがった。いよいよタイ
ムリミットか」
雷鳥の右目が蛇目に。白銀の闘気が更に炎の
ように燃え盛る
「蛇拳っっ」
空気が一瞬止った
「鎌風翔っっっ」
空気が動き出したと同時に無数の鎌風が発生。
ビーストは無数十に切り裂かれた
「再生はさせんっ」
白銀のオーラに火花が生じた
「竜炎波っっ」
トルネードの炎がビーストの破片を焼き尽く
した。まるで竜が獲物を飲み込むかの様に
「くそーこんな半妖擬きにーー……」
そしてビーストを倒した
「大丈夫かっおっちんっ」
「倒せ…たん…だな…うぅ」
「あー倒せたぜっ。おっちんのお陰だぜ」
「ダメだ…俺は…生命を維持…する妖力しか…
なかったようだ…もう使い切った…」
「もう喋るな…」
「あとは安らかに…」
「おっちーーーーん」
「Zzzz」
「おっちん?」
おっちんを揺すると
「なんだ?寝かせろ」
「紛らわしいわっ」
おっちんを叩き起こす雷鳥
その時である
「雷神結界破鏡」
田村が結界を解いて雷鳥の元へやってきた
「遅くなった。ん?ビースト達が居ないね。戦
ってた妖怪は?雷鳥、肩のお方は?」
「さっき戦っていた上位妖怪の多尾だ。訳あっ
たこんな姿になった。おっちんと呼んでくれ。
それより雷鳥の手当を頼む」
戦い尽くし倒れ込む雷鳥
「タム兄…訳あって…」
「事情はあとで聞く。小原、雷鳥を関西支部の
医務室まで」
「まかせんしゃい♡」
命や朱音達も集まってきた
「派手にやられたみたいだな」
「鬼道州のガキ、僻みを言いおって(しかしあ
の上位妖怪大蛇と融合とな)2人ともかなり
差をつけられたのぉ」
「小原さん。私、回復術で付き添います…」
「朱音ちんサンキュー♡」
小原と朱音は雷鳥を連れて飛び去った
田村はおっちんから結界内で起きた事を聞か
された
「雷鳥のことは本部に報告し返答を待ちます。
おっちんさんのことも含めて話してみます。
今回のことで敵の目的が見えてきた一方、敵
の戦力規模が未知数になりました。恐らく近
々、上層部が動き出しますね」
「ぬらりひょんには俺から伝えておいてやる」
「おっちんさん助かります」
「てことで俺は寝る…Zzz」
そして一ヶ月が過ぎた
「鬼神っ鉄裂っ」
「青虎炎舞踊」
「蛇拳鎌風翔」
雷鳥・命・朱音のナイスコンビネーション
レベル8ビースト5体を一瞬で倒した
「命だ。ビースト処理完了」
「お疲れ様です命チーム」
オペレーターとの通信を済ませた命
「何とか雷鳥に追いついたのぉ」
「岩ジィ、俺の方が上だって。それなのに何で
命チームなんだよ」
「俺が総合で優れているからだ」
「命君…雷鳥君…仲良く…しよ…」
なんとか形になった命チーム。本格的に激化
するビーストに対し、大きく動くスワット部
隊と国家機関。妖魂も一部は敵の手に渡って
しまっている可能性がある中で、ぬらりひょ
んも上位妖怪の封印を解く条件で動き出した。
しかし内部でこの状態をよく思わない者達も