候補生VSビースト
〜結界内〜
結界内に閉じ込められた候補生は岩場に隠れ
て様子を伺う。
「あーあーあーっどうすんだよっ」
1人でアタフタする雷鳥。
「黙れ。騒いでも状況は変わらん」
「鬼道衆のガキの言う通りじゃ」
「俺たちを閉じ込めたと言うよりは神通力の高
い者を排除したと言う方が正しいだろ」
「うむ、封印を解いたのも、あやつらの一味で
間違いないじゃろう」
「俺たちを……正しいだろ笑笑」
命のキザな発言にモノマネをして茶化す雷鳥。
それに対して全く反応しない命。
「どんだけ落ち着いてんだよっ。ちょこちょこ
小馬鹿にしやがって。てかこんな所に隠れて
どうすんだよっ。タム兄と姉ちゃん居ないん
じゃ話しにならねーじゃんっ」
「うるさいガキじゃなー。2〜3時間もすれば
田村が結界を解いてくれるじゃろう」
「田村なら何とかするだろう」
「何でお前まで呼び捨てなんだよ。タム兄が2〜
3時間でって、その間どうすんだよ。タム兄な
らこんな結界、一瞬で壊せるだろ。こうなりゃ
俺がアイツらをっ」
「少し黙ってろ。清水寺の後継から長兄を外した
意味が何となく分かるな。実戦の経験もない分
際で大口を叩くな」
「んだとっこの野郎ー。何も知らねーくせに意見
してんじゃねーよっ、初めから気に食わなかっ
たんだよお前はっ」
命と雷鳥が一触即発。
「待て待て。清水坊よ噛み付くでない、鬼道衆の
ガキも煽るな。まぁ田村の桁外れた神通力なら
結界を吹っ飛すのは訳ないじゃろう」
「そうすればイイじゃんかよ」
「やはりアホだな」
「だとーっ」
「だから煽るなっちゅーに。そうなればワシら
ごと御陀仏じゃ。時間はかかるが結界を解い
てくれるのが一番じゃ。ここもすぐに数十体
のビーストに潰されるじゃろう。多尾がズバ
抜けて強いビーストを少し引きつけてくれと
る間に別のビーストを倒す。3人で一斉に妖
怪の援護に回るっちゅのが得策じゃ。あの妖
怪が倒れ2〜3時間閉じ込められたとして、
百%殺されるじゃろぉ。恐らく狙いは多尾じゃ
て今はワシらに手出しはないじゃろ」
どちらにしろリスクは否めないようだ。
「急がねばヤバイのぉ。多尾が倒れてはもとも
こうもないからのぉ」
「手前の20m級と10m級は俺がやる。道は
作ってやるから後方の雑魚は任せても大丈夫か?」
「誰に物を言っとるんじゃ、朱音は毎日あんな
雑魚ビーストより強いもんと戦っとるんじゃ。
それに青虎も居るしのぉ、のお朱音」
「………」
「俺は?俺は?」
「お前は邪魔しないようにコイツらの手伝いで
もしていろ」
「言い方がいちいち腹立つんだよなーってデカ
いビーストお前一人で何とかなるのかよ?」
「お前に心配されるまでもない」
「生意気言いやがって。じゃあお言葉に甘えて
雑魚を叩き潰してやるぜっ」
「清水坊も鬼道衆のガキも分かってると思うが
外野のビーストを倒しても単独での妖怪援護
は決してせんように。最低でも2人、力の差
は歴然。あくまで妖怪の回復とサポートじゃ」
岩助の警告に頷く。
戦闘態勢に入る朱音・命・雷鳥。
「しゃーやるぞ!」
意気込む雷鳥は悪き力が邪魔して神通力の安
定が困難な為、拳に神通力を集めると言った
至ってシンプルな戦闘スタイルで挑む。
「全力で殴るのみっ」
朱音は印を結び呪文を唱えた。
「平旦より伝わりし青き虎十二支の名の下に、
ショウファン」
青く輝く大きな虎を召喚した。
「宜……しく。青虎……」
「朱音様、内容は把握してます」
「姉さんは……元気?」
「はい。神龍が言うには今かなり難しい任務に
ついているとのことです」
「余談はそこまでじゃ。朱音、青虎、準備は良
いかのぉ?」
朱音と岩助に青虎が加わった。
「朱音、回復術は頼んだぞぃ」
「わかりました」
雷鳥が朱音に声をかけてきた。
「お前、喋れんだなぁ」
「はい……」
命もまた呪文を唱え始めた。すると黒い闘気
が全身を覆い、腕が紫に変色していく。首に
黒い鬼の印が浮き上がってきた。
「鬼神っ服人っ」
命の右腕がバケモノ化した。
「何だお前の腕!?ビーストじゃんか!」
「一緒にするな。鬼神、鬼だ」
いざっ戦場へ。各自は戦場へ飛び立った。
〜命VS〜
命(神通力5000+鬼神2000)
vs
二〇m級ビースト(レベル五〇)
全員で20m級のビーストへ向かう。
命より前へ出たのは朱音と岩助だ。
「鬼道衆のガキぃ、切り刻みやすくしといてや
るから安心せぃ」
岩助は大きな団扇を朱音に渡した。
「鴉団扇じゃ。朱音ぇ思いっきり頼んだぞい」
朱音が一仰ぎすると、とてつもない風が発生。
20m級のビーストが仰け反った。
「ここは俺1人でやると言っただろ」
「サービスじゃ。お返しは不要じゃ」
「余計な真似を。あとは任せろ、先を急げ」
命は一気に畳み掛けにいく。
「はーーーっ。鬼神」
鬼神化した腕が黒紫色を強くしていく。
「鉄砕っっ」
2体まとめて切断。
鬼神の力、恐るべし。
「知性がないことを幸運だったと思え」
叫び狂う巨大ビースト。
「ヴォーグヴォーっガーー」
〜朱音VS〜
朱音(3000+青虎1500)
vs
ビースト数十体(レベル4〜約50体)
朱音は才覚を発動させた。
全身に粉氷を纏い始めた。
「岩ちゃん固めます。地盤凍結」
体内に溜め込んだ冷気を一気に放出。
朱音を中心に半径10m範囲の地面を一瞬で
凍らせビーストの動きを止めた。
「青虎、一気に片付けます」
「分かりました」
指先が絶対零度に到達した朱音と青虎。
「猛虎烈風翔」
コンビネーション技が炸裂。
朱音と青虎は次々とビーストを切り刻んでい
く。数十数百に切り刻まれた肉片は吹雪のよ
うに空中を舞う。
「朱音・青虎、残りも一気に行くぞい」
〜雷鳥VS〜
雷鳥(2000+悪き力??)
vs
ビーストの肉片!?
「うりゃーっ」
朱音と青虎が切り刻んだビースト。
の肉片を処理していく雷鳥。
「俺もあんな技あればカッコ良いんだけどよ」
そう言い雷鳥は手を止めた。
「ふっふっふっふー。イイ事考えたぞ。みんな
敵に集中している隙に俺が一人で妖怪を助け
る。妖怪を守りながら奇跡的に敵を倒し勝利っ。
雷鳥さん凄ーい♡カッコイイー♡いや市民を
守るのが俺の使命ですっ!みたいなみたいな。
よしっバレないように実行だっ」
一方で多尾とビーストの戦いは明らかに力の
差が表れていた。
〜多尾VS〜
「クソ……」
「おいおい多尾、死なないでくれよ。これでも
手加減してるんだからさ」
「ゴボッゴボッ、このやろ……」
多尾の攻撃はもう掠りもしない。
逆にビーストの攻撃は全てヒット。
多尾は立っているのがやっとである。
「先に妖魂を渡してくれ。間違えて破壊しては
不味い。だろ?」
「うるせーこの野郎が……ゴボッゴボッ。何故
俺を襲う?妖魂をどうするつもりだ?」
「言ったら従ってくれる?まあ冥土の土産に教
えてやるよ。俺達はある特定の妖魂を探して
いる。そしてその特定の妖魂は上位妖怪が所
持している可能性が高いと判明した。なので
確率の高いお前さんが該当したって訳。何故
に特定の妖魂が必要なのかは俺も知らされて
いない」
「そう言うことか……」
多尾が意識を失いそうだ。
「おいおい寝るなよ」
ビーストは多尾の顔を蹴り上げ首を掴み締め
上げた。
「うはぁ……」
「話しは最後まで聞くんでしょ?」
ビーストは話しを続けた。
「あっそれから上位妖怪のお前が勝てない俺は、
デゥイスと言って十階級の下からニ番目だ。
意味が分かるか?目的が分かったとしてもお
前達では歯が立たないんだよ。これは必然的
な結末なんだよ。ちゃんと処理してやるから
安心しろよ。知り合いに妖肉マニアも居るか
ら有効に活用してやるよっはっはっはっはー」
多尾は嘲笑うビーストの顔に唾を吐いた。
「このクソ妖怪っ調子に乗るなっっ」
ビーストはキレた。
多尾の顔面をサンドバッグのように殴り続け
地面に蹴り叩きつけた。
多尾はピクリとも動かない。
「雑魚が調子に乗るなっ」
ピクリとも動かない多尾を更に何十回と踏み
つけたあげく遠方まで蹴り飛ばした。
「ふーっふーっ……。しまったやり過ぎた。妖
魂は大丈夫だろうな。回収しなければ俺が消
されてしまう」
一方で雷鳥はビーストと多尾の戦場付近まで
来てしまっていた。
「バレてないな。かなり近くまで来たな。ん?
誰か倒れてる?」
ここで初めて多尾と雷鳥が出会う。
「おい、大丈夫か?さっきの妖怪じゃねえか」
「クソっ……ここ……までか……」
「死にかけじゃん。今、朱音って言う」
多尾は話を遮り雷鳥の腕を強く掴んだ。
「俺はもう死ぬ……。頼みがある……。」
「なんだよ?初対面なんだけど。それより手当
が先だろ」
「これをアイツに……渡さないで……」
多尾は雷鳥に妖魂を託し力尽きた。
「って急に渡されても。死んだのか?」
そこへビーストがやってきた。
「誰だお前?仲間か?」
「うわっビーストっ」
「誰だって聞いてるんだよ」
「俺は雷鳥。清水雷鳥」
絶対絶命の雷鳥。
いきなりパッドエンドなのか。