源氏の君、パパになる
結婚して数ヶ月。
まだまだ新婚ほやほや。
僕は葵にべったりのラブラブだよ。
最近、葵も僕に慣れてきたのか、自分から抱き着いてきてくれることがあるんだ。もちろん、二人っきりのときだけね。それも、オズオズと遠慮がちに。なにそれ!ものすごく可愛い!!萌える。美しく聡明で気高い妻が、二人のときは純情可憐な乙女になる。いい!いいよね!!男のロマンだよ!
あんまりにも仲が良かったせいかコウノトリが早くにやって来た!
来年にはパパになる!やったね!
「葵の上、これは滋養に利くらしいから調理してもらったんだ!さぁ、お口を開けて、あ~~~~ん」
恥ずかしそうに口を開ける奥さんは可愛い!
初めての懐妊で不安げにしている葵の上のために美味しい物や珍しい物を沢山取り寄せたし、大宮や大弐の乳母、弘徽殿の女御からも出産に関わるあれこれを聞いたり、父親になる心構えを右大臣に聞いたりした。
桐壺帝や左大臣には聞かないのかって?
一応、聞いてみたけど……聞かなきゃよかったと思う事ばかり。
桐壺帝は「更衣が儚くなるのではないかと気が気ではなかった」と延々と桐壺の更衣の話ばかりするし、左大臣は「鷹揚にしていれば、いつの間にか子供が出来ておりました」とのこと。
参考にならない!
特に左大臣はふざけてんのか?と本気で思ったけど、本人的には真面目だった。平安の男の感性はわからん。
その中で、意外に右大臣はマトモだった。
艶福家で異母兄弟ばかりの要るにも拘らず、愛妻家だった(妻が多いのに愛妻家というのもおかしいけど他に言いようがない)。
こまめに文のやり取りをしているし、子育てにも積極的に参加していたようだ(意外過ぎる)。
悪阻で苦しんでいる妻の背中をさすってあげたり、気分転換に小さな宴を催したり、出産が近づいたら必ず定時帰ったりしていた模様。実に細やかな気配りをしていた。子供が産まれてからも、子育てを妻や乳母任せにしたりはしていない。夜泣きが酷い時は一緒に眠ったり、遊んだり、勉強を見たり。この時代にしては珍しい位に親子のコミュニケーションが取れていると感心してしまった。
どうりで、物語の中の弘徽殿の女御と右大臣の父娘の親密さが現代に近かった訳だ。
何度も話合いやら相談事をしていた理由がよく分かる。末娘の朧月夜の君にしても、嵐の晩に心配して娘の様子を見に来れた訳だ(そのせいで源氏の君との浮気がバレたけど)。
今日もラブラブして過ごしていたら、葵が急に嘔吐した。
なにごと!
え?ええええ????
産婆を呼んで~!!!




