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閑話 大宮(左大臣の正妻)side


「二の宮を葵の上の背の君に……?」


「内々に帝からお話があったのですよ」


「私は構いませんが、右大臣家から再三に渡って葵の上の入内の申し込みがございます。宜しいのですか?」


「帝の勅命でもあるのです。右大臣家も文句は言わないでしょう」


夫の左大臣は嬉しそうの私に報告をしてくださいます。(桐壺帝)の寵臣であり信頼厚い左大臣に嫁いで十数年。娘の葵を産んだ時は何れは「中宮」の位に立つものとばかり思っていました。当時、兄の寵愛は権勢高い弘徽殿の女御の上にあり、女御は既に皇女をお産みになっており、新たに懐妊もしていたのです。

翌年に皇子誕生の知らせを聞いた時は「次の中宮は右大臣家から、その次の中宮は左大臣家から」と歌にも読まれた程でした。私は勿論のこと左大臣家もそれを当然と心得ていたといいますのに。


葵の上を皇籍を離れる皇子に嫁がせるとは……。



「二の宮様と葵が婚姻すれば、中将、お前は二の宮様の『義兄』になる。色々とお世話してあげなさい」


「宮中でも話題の光の君ですね。私も興味があったので丁度いいです。手取り足取り教えてさせ上げます」


「頼むから、()()()()()がする事を教えてあげなさい」


「はいはい」


「それと……右大臣から嫌味を言われたぞ。婿殿が一向に屋敷に寄り付かないがお父上に似たのでしょうか?とな……」


「あははははは!」


「笑い事ではないぞ」


「病気療養で実家にいる、病が重く床から出られないとでも何とでも言っておいてくださいよ」


「出仕しているのに……分かり易い嘘はつけぬ」


「はははは!」


政略結婚の重要性を分かっていながら無視するような息子にも頭が痛い。

二の宮がそうでない事を祈るしかありませんね。




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