閑話 四の君side
「お断りします」
「ええ~~どうしても?」
「どうしてもです」
「顔良し、頭良し、性格良しだよ?お買い得ってもんでしょう?」
「……自分で言います」
「だってもう時間がないんだよ。なりふり構っている場合じゃない!」
「何度、求婚されても返事は同じです」
「ええ~~~~!」
トボトボと『弘徽殿』から去っていく光にも困ったもの。出会った時から私に求婚してくるのだから。人妻である事も知っての上での求婚。まあ、私としても悪い気はしません。くすぐったい気分にさせられてホワホワしたものを感じるのも事実。
「やれやれ、また光を振ったのかい?」
「私は頭の中将の正妻なんですよ。仕方ありません」
「そんなもの何とでもなるというのに」
困った方がココにも一人。
残念そうな表情を浮かべる目の前の貴人。
「光は将来有望だよ?元服の際に授けられる官位は従三位だ。あの子は頭も良いし協調性もある。母上やおじい様とも気が合う。出世は間違いないよ。四の君なら安心して光を任せられるんだけどね」
「東宮様……」
「四の君と光は仲が良い。光の事は気に入っているのだろう?」
「弟のように思ってます」
「本当に?」
「ええ!ほ・ん・と・う、です」
「そういう事にしておこう」
楽しそうに笑う東宮の姿に少しゲンナリしてしまう。
一体何処まで気付いているのかしら?
けど、私が光を「弟分」と思っているのは本当のこと。それに「夫君」が追加されても私的には何の問題もなかったりする。なら、どうして求婚を断わったかというと姉上の代わりはゴメンだということ。姉上と比較されるのもゴメンだわ。




