うわなりうち、またの名を「百鬼夜行」
僕の「顔かくして闇討ちしよう!」というアイディアを聞いて俄然ヤル気に成った四の君は、当日の深夜、総勢三百人の女人を従えて夫の愛人宅を襲撃した。
次の日には、元三位の中将の邸宅跡は綺麗な焼け野原の出来上がり。
四の君、容赦ない。
「付け火は私ではありません!」
「え?違うの?」
「私たちを鬼や妖怪と勘違いした館の者達が厄除けと称して火をつけたんですよ!浄化の炎とか言ってましたわ!」
大胆というか、アホというべきか。
「まあ、そのお陰で検非違使に捕らえられたのが向こうの者達だけですけど」
「どさくさに紛れて逃げてきたんだね」
「私たちが撤退する頃合いでしたから。ある意味、ちょうど良かったのかもしれませんけどね。光のいう『仮装行列』とやらを周囲は『百鬼夜行』と勘違いしてくれたようで疑いの目すら向けられないでしょうね!」
そうなんだよ。
僕のアイディア。「仮装」がまさかの「百鬼夜行」扱い。個人的には季節外れのハロウィンのつもりだったのに……。
甲冑姿に鬼の面を被っていた四の君は本物の「鬼」と勘違いされた。
鬼が引き連れた妖怪の群れが一定の方向に向かって歩いていく姿は百鬼夜行そのものだったらしく、「鬼が出た!」、「妖怪の群れだ!」、「百鬼夜行を見た!」と世間を騒がせた。
僕としては四の君の「鬼の鎧姿」は「蘭陵王」の仮装のつもりだったのに……。何がいけなかったのかな?「美貌の王」がその美しさで敵に侮られないように「鬼の面」を付けたという話をそのまま応用しただけなのに……あれかな、現代人的感覚が平安人の感覚とマッチしなかったのかな?




