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浮気男1



数日後――




「もう我慢なりません!!!」


「どうしたの?四の君?」


四の君が御所に遊びに来て早々に発した言葉。



「少将が浮気をしています」


「え?また?今月に入って四人目?」


「五人目です」



訂正された。

浮気の数が何時の間にか増えてる。



「東宮様、私は既に我慢の限界です。結婚からというもの浮気ばかり。最近では屋敷に寄り付かないのですよ?」


「それは困ったものだね。でも左近衛の少将の恋人は大勢いると聞くよ?相手に別れるように迫るのもどうかと思うよ?」


「私も何も全員と手を切れとは申しません。今、相手をしている五人目の女人と手を手を切って貰いたいだけです!」


「「?」」


他にも浮気相手がいるのに、五人目と縁を切れとは…いったい?


「何故、五人目の恋人と縁を切らせたいんだい?左近衛の少将の恋人は他にもいるのだろう?それにこれまでの経験上あまり長続きしないのではないかい」


兄上の助言はもっともだ。

四の君の夫は左大臣家の嫡男、左近衛の少将。未来の「頭の中将」だ。原作通りの浮気者だし、飽きっぽい性格のようで、恋人が出来ても直ぐに別れる、を繰り返している。


「確かに、数年すれば飽きるでしょうね」


「なら、別に問題なくない?」


「問題は別れた後です。太郎丸に調べさせた処、どうやら貧民街のならず者とも繋がりのある女人のようなのです。恐らく、少将の事を“金づる”だとでも思っているのでしょう」


太郎丸というのは四の君の犬の式神だ。何故か、犬神の儀式で式神に転移したらしい。


「金づるって……曲がりなりにも左大臣家の若様相手に命知らずな事しないよ?普通は」


「少将は自分の身分を偽って五人目の浮気相手と逢瀬を重ねています。浮気相手もまさか大臣家の嫡男とは思ってもいないみたいで、少将を『朝霧の君』と呼ぶ始末」


メンドクサイことしてるね。


「何で名乗らないの?」


「今、若い公卿方の間で流行しているのです。中流や下流の女人との逢瀬の際には名乗りを上げない事が!互いの事を詮索しない関係が恋の炎を燃え上がらっせるとか言ってますが、要は、都合のいい女人で遊んでいるんです。まぁ、彼女達もそのことを承知している部分はありますからね。別れるとなるとタダでは引き下がらないでしょう。質の悪い処では身ぐるみはがされたり、後々の脅しに使用されたりしますからね」


後日、少将は着の身着のまま浮気相手から逃げて帰ってきた。


「これに懲りて下流の女人は相手にしなくなるでしょう」


四の君は上機嫌で報告してきた。

なんでも、旦那さんが逃げ場所に自分を選んだことが酷く嬉しかったようだ。

女心は不思議だ。

また、四の君が睨んでいた通り、ヤクザまがいの連中とつるんでいたようで、右大臣家の婿と知らずに屋敷まで追いかけてきた男衆は数日後に川に遺体として浮かんでいた。

誰がヤッたのかって?ヤクザ連中も浮気女も相当恨みを買っていたみたいだから犯人は見つからないだろう、と噂されている。

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