追放される女房たち
桐壺の更衣付の女房は一掃された。
言い方が悪いかな?
でも、それ以外に言いようがない。
彼女達のしたことは帝の妃を中傷だけでなく、女二の宮に対しての侮辱行為でもあるのだ。
皇族に対する態度ではない。ましてや、元後涼殿の更衣は内大臣家という後ろ盾を得て、従三位の御息所の身分になっている。地位でいうなら、更衣の中では最高クラスだ。
桐壺の更衣では逆立ちしてても勝てない身分さだよ。
そんな相手に喧嘩を売ったんだ。
宮中から追放されても文句は言えない。
寧ろ、それだけで済んでラッキーだよ。
良かったね、今が平安時代で。
いや、この場合は女人で良かった、というべきかな?
女人を斬首したりすることは滅多にない(戦国時代位じゃない?それでも珍しいけど)。
しかも、戦争も無い平和な時代だ。
彼女達に与えられた罰は二つだけ。
『宮中の追放』と『都から追放』。
都からの追放がちょっと厳しいかな?
だけどある意味で、都に残っている方が辛い目にあう可能性が多い。
村八分の四面楚歌になる立場だからね。
そんな目にあうなら、新しい場所で居場所を作った方がずっとマシってもんだよ。
「大納言家からの女房達ですから、大納言家が責任を持って彼女達の先行きを決めたようです」
「だいじょうぶなの?」
「女房達の殆どが受領の出であった事も良かったようです。親元に戻らせればよいだけですから。そうでない者や近しい親族が居ない者は地方の方々との婚姻を急がせている御様子です」
なるほど。
上手い手だ。
結婚相手の元に嫁いでいく、となれば、『都落ち』の誹りを受けずに済むし、理由を聞く者もいない。
「主上から、桐壺の局の女房を増やすように指示が入っておりますが、如何致しましょう」
「今のままでいいよ。母上はこのまませーりょうでんとこーろでんでくらすことになるだろうから」
「畏まりました」
四歳の身で既に『桐壺』の主だ。
流産後、母更衣は清涼殿で静養中だ(非常識め!)。
恐らく、今まで上局としていた『後涼殿』を生活の場にするつもりだろう。
齢、四歳で家庭内別居……実に快適だ!
今、『桐壺』にいる女房達は父帝が選んで母につけた者達ばかり。
その中でも、母の信者にならなかった数少ない者達だ。
カルト宗教の総本山からやっと離れる事が出来た開放感がある。
女房達も朗らかに笑う事が増えている。
この場所に信者はいらない!
断固拒否だ!
追放された女房達は他と違って熱烈な信者とは一線を画していたけど、人としての性質が悪かったから僕とも相性があんまり良くなかった。
母更衣に意向に沿わない似非信者が一層された事は、僕にとっても母にとっても、また、皆にとっても、いい結果だ。




