従三位の御息所の誕生
「お拾いは姫宮を産んだか……」
父帝は母更衣の流産のショックで寝込んでる。床についたまま元後涼殿の更衣が姫宮を産んだ報告を受けていた。
「我が娘の誕生……これが桐壺の更衣との間に生まれた姫宮ならばどれ程嬉しかったことか……」
異母妹に失礼だろ!
普通に喜んでろ!
「もしや、姫宮は間違えて別の胎にいってしまったのではあるまいか?」
アホな事を言いだした。
「誕生した姫宮は本当なら桐壺の更衣の姫として生まれた来るはずだったのではないか?それならば、父親として取り返さな…<<バキッ!!!>>……」
まったく。碌な事を言わないんだから。
お陰で僕の新しい扇子がまたダメになっちゃったよ。
「二の宮様……」
振り向くと医師が真っ青な顔で僕と父帝を見ている。
診察の時間かな?
「ちちうえはいまねむったばかりだからしずかにね(訳:父上は今眠ったばかりだから静かにね)」
「はい……」
顔が青から白くなり始めてるけど、この医師大丈夫かな?
もしかしたら父のおかしな発言を聞き過ぎて気分が悪くなっているのかも。
数日後、元後涼殿の更衣は『従三位の御息所』に叙され、女二の宮は『内親王』となった。
後見人がいないのに、何故、『従三位の御息所』と『内親王』に成れたのか不思議に思っていたら、理由が判明した。
なんと、内大臣と蔵人の中将が元後涼殿の更衣と女二の宮の後ろ盾に成ったというのだから驚きだ。
――桐壺――
「従三位の御息所とは何かと縁がありまして、父上と相談し、大納言家の子弟達を我が家で預かる事に決めたんです」
「ようしにするってこと?(訳:養子にするってこと?)」
「いいえ、そこまでは致しません。彼らは、いずれ大納言家を継ぐ身ですから。飽く迄も、後見人として面倒をみるだけです。元服前の男子も数名おりますので」
「ちゅーじょうはそれをいふためにきたの?(訳:中将はそれを言うために来たの?)」
「はい。御報告は必要かと思いまして」
どうもおかしい。蔵人の中将がこんなに気を遣うなんて。明日は雨か?
「それと…二の宮様には謝らなければならない事が起こりまして」
「なに?」
「実を言いますと、従三位の御息所の誹謗中傷の噂を流していた犯人が桐壺の更衣様付きの女房達と判明しまして、彼女達に対しての処分が成されたのです」
「え?」
初耳なんですけど。




