表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
45/119

桐壺の更衣の流産、元後涼殿の更衣の出産


僕は呆れている。

両親に。

正しくは父親に。



父帝は醜聞の真っただ中にいるっていうのに、桐壺の更衣とイチャイチャベタベタを繰り返していた。

図太い。

まともな神経の持ち主なら病んでるぞ?

ただでさえ母更衣を離さない父帝は、遂に、母更衣を清涼殿で暮らすように命じた。

阿保かな?

余計に醜聞に尾ひれたつくだろ!

案の定、尾ひれがついた。



「主上は一体何時になったら桐壺の更衣を里下りさせるのだ?」


「桐壺の更衣の容態が心配だと清涼殿に住まわせて、早、三月(みつき)。一向に里下りさせぬとは」


「帝はこのまま御所で産ませる気ではあるまいな」


「いや、幾ら何でもそのようなことは……」


「あの帝の事が。有りえようぞ」



もーしらん。


世間の悪評など知ったことか!と言わんばかりに、桐壺の更衣と人目をはばからずイチャつく父帝。まあ、人目っていっても清涼殿の中で、だけどね。息子の目なんて全く気にしない両親を気遣うのもバカバカしくなったので、大弐の乳母を伴って僕は『桐壺』に帰った。

いや~~~~。

教祖(母親)信者(女房)が居ない空間っていうのは実に快適だ!

落ち着いた静かで平穏な日々。

これだよ、これ!

これを求めていたんだ!


「桐壺の更衣様とそのお付きの女房達が居ないだけでこれほどに穏やかに過ごせるのですね」


大弐の乳母も感心していた。

信者でない女房達の顔も心なしか明るくなった気がする。


このまま平穏無事に過ごしたい、と望んだのがいけなかったのか、神は僕に新たな試練を課した。





――桐壺の更衣、流産――



その凶報が『桐壺』にまで伝わってくるまでの間、既に他の妃たちは詳細を知り尽くしていた(流石だ……)。



「御子が流れておしまいになったそうですわ」


「医師たちが派遣されたようですが間に合わなかったとか」


「それが、駆け付けた時は閨の最中で、中に入れなかったそうじゃありませんか」


「まあ!日が高くなっているというのに、そのような行為に耽っているから悲劇が起こったのですわ」


「更衣の自業自得というものです」


「主上の寵を他に向けられては困るのでしょう」


「にしても、身籠っている時にそのような事をしているとは、浅はかにもほどがあります」


「御子の事など何も考えていないのでしょう」


「母親としての自覚が無さ過ぎますわ」



僕が清涼殿に行くまでの道のり。

簾の向こう側から聞こえてくる言葉の数々。

母更衣が流産した事しか知らなかったので、彼女たちの会話は実に勉強になる。


清涼殿に籠ってヤッてる最中に流産した。

うん。医師達も治療できないわ。

部屋に踏み込む訳にも行かず、出てくるのを待ってからの治療だったんだろうな。

憐れ、医師。気の毒過ぎる。






――清涼殿――




「何故だ!何故このような悲劇が起きたのだ!ああ~~~~~~桐壺の更衣との吾子が……」


父帝は嘆きているけど、同情はしない。

だって、身重の母更衣に、好き勝手やりたい放題してたら当然、流産の危機になるよね?

医師や薬師にも諫められてたよね?

無責任にも「大丈夫ですわ。帝と更衣様の御子ですもの」と言っていたのは、桐壺の更衣付の女房達だけ(真に受けるなよ!)。



清涼殿()()が嘆き悲しんでいる中、元後涼殿の更衣は十月に無事に出産。

生まれたのは皇女。


女二の宮の誕生である。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ