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閑話 内大臣side


「二の宮様はどうだ?」


「はい?」


「今上帝の第二皇子のことだ。北山の供をして以来、随分、親しくしているそうではないか。どのような御様子であった」


「そうですね、噂に違わず美しい皇子です。歳の割にしっかりなさっておいでで、御自分というものを持っている方とお見受けいたしましたが…それがどうかなさいましたか?」


「いや。世間を騒がす『九尾の母子』の実態を知りたいと思っただけだ」


「父上!二の宮様は世間で噂されるような皇子ではありません!賢い皇子です!」


「ああ、そのようだな。だからこそ気を付けねばならん」


「父上…?」


「お前には話しておかねばならない事がある。これは我が内大臣家のこれからに関わる事だ」


目を白黒させている息子にとっては思いがけない事だろう。

私もまさか、かの姫君が入内し、帝の寵妃になるなど思いもよらない事であった。只の寵愛ではない。悪影響を及ぼしている状況だ。


「父上、いったい如何されたのですか?」


「中将、父に同母の弟がいた事は知っているな」


「はい。父上や母上とは余り相性が宜しくなかったため縁戚付き合いを断ったとお聞きした記憶がございますが…それがどうかなさったのですか?」


「その縁戚が桐壺の更衣殿だ」


「はっ!?」


「今、帝の寵愛を一身に受けている桐壺の更衣は、そなたの()()にあたる。私にとっては()だな」


「え?え?え?」


驚き過ぎて言葉になっていない。

やはり言うのは早すぎたか?

だが、何時かは知る事になる。

他人から聞かされるよりは、父である私の口から伝えた方が対処の仕方も出来るというものだ。


「桐壺の更衣は、私の弟の娘だ」


目を大きく開き、口も開けっ放しで硬直している息子を放置して、話を先に進める。


「私には年の近い同母弟がいた。お前には叔父にあたる人物がな。弟は亡き母親に似て優し気な顔立ちの美しい容貌の持ち主だったが、その容貌に似合わず野心的な男でもあったのだ。野心を持つのは別に悪くはない。向上心の表われだからな。だが、弟の場合は露骨過ぎた。実の父親や兄である私を蹴落としてでも這い上がろうとする性質でな、私や父親と折り合いが悪かった。挙句の果てに、両親が選んできた姫君との縁組を勝手に破棄して、大納言家の姫と結婚する始末だ。流石に父も堪忍袋の尾が切れて、それ以降、親戚付き合いはしていない」


「それが桐壺の更衣様の父君だということですか」


「ああ。因みに、縁組を破棄された姫君は今では私の妻になっている」


「!!!」


内大臣の北の方。

私の妻は元は弟の許嫁(いいなずけ)であった。

親同士の付き合いも深い、宮家の姫君。

私や弟にとっては誰よりも身近にいた少女。

幼馴染の姫であった。




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