主犯格は大伯父!?
侵入者を全員お縄にすることが出来た。死人無し。すご!
「二の宮様、首謀者は典薬の助のようです」
「じゃれ?(訳:誰?)」
「桐壺の更衣様のお身内らしいのですが……」
「ちらない(訳:しらない)」
「本当かどうかは桐壺の更衣様にお尋ねしてみなければ分かりませんが、典薬の助は『桐壺の更衣様の身内にこんな事をしてタダで済むと思っているのか』と偉い剣幕で騒いでおります」
犯罪者の分際で態度がデカいな。
「ちょりあえじゅいってみるか(訳:とりあえず行ってみるか)」
――僧坊の庭――
「儂を誰だと思ってる!桐壷の更衣の大伯父様だぞ!こんなことをしていいと思っとるのか!!!」
爺だ。
どうみても七十歳は優に超えてるような皺くちゃの小柄な爺。
「お前らなどな、桐壺の更衣様に訴えりゃあ、どうにでもできるんじゃ!!!覚えとくんじゃな!!!」
バカだ。
アホでバカがいる。
桐壺の更衣の名前は黄門様の印籠じゃねぇぞ!
そんな効力はない!
「桐壺の更衣様を呼んでこい!!!」
ば~~~~か!
桐壺の更衣様の存在そのものが危いんだよ!
彼女の武器は父帝の愛情だけ。
寵愛を失ったらどうなるか……。
「おごれちゅものひしゃしからじゅ。けんきょをしゅれ!(訳:おごれるもの久しからず。謙虚をしれ!)」
僕の声が届いたのか、爺が首だけこちらを向いた。
「童か!偉そうな…なにもんじゃ!?」
え?
僕を知らないの?
「なんと無礼な!貴様、桐壺の更衣様のお身内というのは嘘だな!」
「なんじゃと!?」
「この方は、二の宮様だ!桐壺更衣様の唯一人の御子だぞ!」
「!」
小汚い爺は口を開けたまま固まってしまった。
本当に僕の事を知らなかったのか。
母の大伯父というのもデマだな。
その前に、この爺と母は全く似ていない。
僕や母の身内なら、もっと美人なはず(偏見と独断)!
「あにゃたがたのじゃいじょうはぼくがきめちゃの(訳:あなた方の罪状は僕が決めたの)」
一応、父帝にも伝えて了承を得てるから問題ない。
――北山の聖域を荒らす賊が、不敬にも『桐壺の更衣の一行』を名乗っているため、成敗する――
なにも間違ってない。
典薬の助:薬を扱う部署、典薬寮の次官。