北山の姫君と女武士団
――僧房 の庭――
「整列!!!
聖地なる北山に招かざる客が図々しくも住み着いている!畜生にも劣る行いを昼夜問わず行い、聖地を汚し続ける化生ども!奴らがここに来たら如何する!」
「「「「「「排除すべし」」」」」」
「理性をなくした男は獣だ!奴が襲ってきたらどうする!」
「「「「「「潰すべし」」」」」」
「力なき女子と侮り狼藉を行うものに死の鉄槌あるのみ!!!」
「「「「「「はい!」」」」」」
「躊躇するな!」
「「「「「「はい!」」」」」」
「殺すべし!」
「「「「「「殺すべし」」」」」」
庭に軍隊のようにきれいに整列した女たち。
それぞれの手には鉈や槍や刀がしっかりと握りしめている。
女たちの前方で、どこその大隊長殿のように吠える北山の姫君。
狂気に満ち溢れた異様な空間。
これから戦地に赴かん、とするほど女たちの目はぎらついている。
今にも人殺しが出来そうな雰囲気だ。
「帝のお付きの者が未だに忍び寄ってくることがあるのです。
僧たちを常に護衛として配備する訳にもいかず、姫が自ら刀を握ったのが始まりです。姫には武術の才能があったようで、瞬く間に頭角を現し、今では女房達に指南する程になりました」
左隣に立つ僧都に言葉が胸に突き刺さる。
「屋敷に侵入されてなすすべも無かった女房たちも、最近では、武器を手に持って反撃出来るまでになり申した。
今までは姫君の身を守るために、その身を犠牲にしていた女房達が応戦するようになった事で被害も減っております」
……フォローになってねぇ!
もう被害出ちゃってた!
そうゆう事はもっと早く教えて!
「女房たちの身に起きた事は姫は知りません」
「教えないのですか?」
「知れば姫が気に病むと皆が申して…蔵人の中将様もこの件は姫には知らせないで頂きたいのです」
「分かりました」
道理で、姫よりも女房たちの方が僕らを警戒しまくってる訳だ。
未だって、姫の演説に聞き入っている風に見えて僕と蔵人の中将を『いつでもヤル』気配は消えてないもん。
犯罪被害者の会に加害者の身内が「守ってあげる」と言った処で信じるアホはいない。
逆に、罠か?と勘繰る。
「諸君!厳しい訓練にも耐え、そなたたちは立派な武人になった!
もはや力なき女子ではない!我々は戦う力を得た!
奮起せよ!!!
我らの身を誇りを汚そうとする不埒者どもを許してはならぬ!
闘争あるのみ!戦い続けよ!勝つまで戦うのだ!」
「「「「「「おおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!」」」」」」
なんだろ?
ここだけ別の物語のような気がしてきた。
クロスオーバーの世界じゃないよね?
隣に立つ蔵人の中将は姫君を魅入っている。
心なしか目がハートになってない?
頬も赤みがかってきてる…まさか…惚れちゃった?