北山の姫君
蔵人の中将が助けた雀の子は姫君のペットだったようだ。
姫君は雀を「チュン子」と名付けて可愛がってた。
雀と話すさまは、長刀で大太刀回りした姫とは思えないほどの可憐な姿だ。
薄い紅色かかった紫の衣装がよく似合っている。
ただし、脇差と姫君の周りにある武器のせいで、殺伐とした空気ではあるけど。
和製メルヘンチックな世界観を醸し出している姫君と雀。
雀との感動の再会後、姫君は雀を助けた礼と今までも無礼を謝ってくれたけど。
その後のセリフが不穏過ぎる。「この身を好きに使え」ってなに?
「姫君、我々は、あなた方に危害を与えるつもりは毛頭ありません」
蔵人の中将も姫の言葉に不穏を感じたのか、必死に訂正している。
「蔵人の中将様はそうかもしれませんが、他の方々も同じとは限りません。
なにしろ、山深い場所ですから、なにが起こったとしても逃げ場など有りません。虎の威を借りる狐は、実に強かで巧妙ですから」
ち~~~~ん。
取り付く島もない、とはこの事だろう。
僕達の正体を僧都から聞いても態度を一切変えない。言葉遣いが丁寧になった位だ。
その反面、桐壺帝の御一同は、彼女にとって山賊に等しい類なんだろう。否定できない処が悲しい。
「姫君、彼らの狼藉を許せとは申しません。ですが、私にあなた方を守る手伝いをさせてください」
よし!
良くいった!
中将えらいぞ!その調子で、姫君の株を上げよう!
「いいえ」
ん?
「その必要はございません」
……あれ?
断わられた。
何故?




