光の君、両親の所業に怒り心頭
ドスドスドス。
今、蔵人の中将と一緒に寺の客室の向かって歩いている。
最初、僧都が案内すると言ってくれたけど、それは拒否した。
嫌だったからじゃない。
申し訳ないからだ!
寺でナニやってんじゃ~~~~!
あの後、僧都に無理を言って父帝の生活を聞き出した。
僕も蔵人の中将もどれだけ恥ずかしかったか!
父帝は、朝から晩まで桐壺の更衣とベタベタとイチャついているそうだ。
呆れる話だけど、蔵人の中将が訂正するまで僧都は母更衣をずっと傍付きの女房だと勘違いしていた。
逆に謝られてしまったよ。
「二の宮様をお産みされた桐壺の更衣様とは露知らず、失礼な事を申してしまいました。お許しください」
天下の帝に苦言をいう訳にはいかず、女房だと思っていた母更衣に苦言を呈していた。が、その女房は人の話を聞いていないのか、それとも聞く必要がないと思っているのか反応が全く無い有り様。
そのため寺院の僧達の顰蹙を買っていた。
『こちらに返事一つ返さない不遜な女房殿だ』
『天女のように美しいが機転が無さ過ぎる、帝の手が付いているだけの下女ではないのか』
『もしや耳が聞こえておらぬのか?』
兎に角、評判が悪い。
なんでこんな山奥まで来て敵を増やすかな。
父帝は何してんだ?
自分の妻のフォロー位しろ!
「主上は、にょうぼ…桐壺の更衣様に苦言を呈する僧に大層お怒りになられ、『この女人に近寄るべからず』と申して、一室に囲い込まれておしまいになられました。それを見ていた僧達が益々桐壺の更衣様を『下級の女官』と判断したようで……」
さもありなん。
ず~~~~~~と母更衣と性交してる状態だ。
それを秘めてればいいものを、声が漏れまくって、寺の風紀を乱しまくってる。
獣か!
相手が帝じゃなきゃ、とっくに追い出されてるわ!
しかも、
「やりたい時に出来、したい時に出来るとは、僧都が申した通り、ありのままの自然環境とはなんと心地いいことか。ここでなら、毎日の運動にも欠かすことなく出来、実の健やかに過ごすことが出来ようぞ」
とか宣った。
ちげぇ!
僧都が言いたいのはそうじゃねぇ!
やべぇ。
僧兵が討伐にきそう。
『神聖な寺院を汚す不埒者どもに天中!』とか言って。
うん。僧兵が動く前に両親を連れて戻ろう。
――庵室――
「桐壺の更衣のなかに入っていないと落ち着かないのだ」
蔵人の中将が口を開けたまま固まってしまった。
無理もねぇ。
セックス中毒者の戯言を聞いたんだ。
「桐壺の更衣と一刻も離れたくはない。離れるくらいならいっそのこと、この刀で一思いにやっておくれ」
ふん!
「二の宮様なにを!!?」
<<ブスッ>>
「なじぇにじぇるの?(訳:なぜ逃げるの?)」
「ひ…光。本当にするとは……」
真っ青な顔の父帝と蔵人の中将。
なにを驚く。
「ぼくはいちゅでもほんきゅでしゅ(訳:僕はいつでも本気です)」
「ひかる……(絶句)」
刀をもう一度持ち直して振り下ろそうとすると、
「二の宮様!早まってはなりません!!!」
待ったがかかった。
庵室:僧尼の住む仮屋。