鳳凰の理由
目の前で兄上が人外の化け物と会話している。
兄上が問いかけると大鳥の化け物は「ピィピィ」と言ってる。偶に「キャピキャピ」やら「ルルルル」と聞こえる時があるけど何言っているのかサッパリだ。ただ統一性のない鳴き声である事は間違いないし、なにやら兄上に一生懸命説明しているのは理解できた。
「光、どうやら鳳凰様は大陸にいる人に命を狙われていてこの国に逃げ込んできたようなんだ」
大鳥の化け物が何を言ってるのかちっとも分からなかったけど、兄上には分かったようだ。でも、命を狙われる神獣って何!? 普通は尊ばれるのでは?
「え~~と。つまり何? 鳳凰を食べれば不老不死になるという噂がたっているから狙われているってこと?」
「そうなんだ。しかも鳳凰様が産み落とす卵を食すと『仙人』になれると信じられているらしいんだ。お気の毒な事だ……」
物凄い風評被害。
そんな伝説……うちの国には無いけど?
大体、不老不死伝説は人魚じゃないの?
人魚の肉を食べれば「不死」に成れるというのが日本の主流なんですけど(ただし人魚の肉は猛毒だから一か八かの大博打)。
「兄上、神は元々『天界』の住人のはずです。人間に会いたく無ければ『天界』にいれば宜しいのでは?」
ピィー!ピィピィ、クィ!
なんだろう?
必死に兄上を説得している感じ。何か天界に帰れない理由でもあるのかな?
兄上も段々難しい顔になってきている。
「どうやら鳳凰様は家出の最中らしい。うん? この場合、天界出と言うべきかな?」
「家出……」
「そうなんだ。鳳凰様が仰るには、他の神獣の方々から人を苦手としている事を大層責められたらしく、御自身を理解してくれない天界に見切りをつけて出た処に運悪く人間の王と家臣達に見つかって捕まりかけたそうだ」
兄上……。
あのピーピーと鳴く声でよく分かったよね。
僕はこれっぽちも分かんなかった。
兄上はすっかり鳳凰の身に起きた出来事に同情しちゃってるけど、あの図太そうな鳳凰がヤラレかけてそのまま放置とは思えない。きっと逃げる間に呪いでもぶっ放してそうだ。