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失って気づくもの

作者: バスカ
掲載日:2021/09/22

暗い内容となっているのでそういうのが苦手な方はブラバをお願いします。

 母が亡くなった。

 それは新年早々の1月に突然起きた。



「お母さんの様子がおかしい!」



 そんな父の一言で全てが始まった。

 母の寝床に駆け寄る私と姉。

 そこには布団の中で目を開けたまま動かなくなった母の姿があった。



「お母さん!」



 何度も母を呼ぶ私と姉。

 だが母の反応はない。

 何度体をゆすっても反応はない。



「救急車を呼んで!」



 父の一言で百十九番する姉。

 そして電話先の救急隊の指示で心臓マッサージをする。



「一、ニ、三、四、五……」



 お願いだから反応をしてくれ!

 そう願いながらの心臓マッサージだった。

 やがて救急車のサイレンが聞こえ救急隊の方が家の中に入ってきた。

 そして救急隊の方から一言を聞かされた。



「既に死後硬直が始まってるのでもう手遅れです」



 耳を疑う言葉だった。

 しかしその時は涙は出なかった。

 その言葉を受け入れることができなかった。

 いや、受け入れたくなかったのだと思う。

 今となっては当時の心境のことは良く覚えてないないのだ。



 それから警察が呼ばれ現場検証が行われた。

 自宅で亡くなった場合はいかなる理湯でも事件性があるかもしれないので検証が必要とのことだった。



 現場検証が終わるまでリビングに集まる家族。

 誰もが呆然としている。

 突然のことだったから当たり前だ。

 それから呼ばれた医師が到着し事件性がないことを告げられ現場検証は終わった。

 この日はとても長い1日感じられた。



 その日の夜父に呼ばれた。

 呼ばれた先は母が眠る部屋だった。



「見てごらん。お母さん笑ってるでしょ」



 父の言葉で母を見る。

 そこには笑いながら静かに眠る母の姿があった。

 その姿を見た瞬間涙が溢れ出てきた。

 止まらない、止まらない、止まらない、止まらない!

 いくら止めようとしても次から次へと溢れ出てくる涙。

 自分ではどうしようもなかった。

 この時初めて母の死を受け入れたのだと思う。



 それからは葬儀屋と葬儀のことなどを話し合った。

 このご時世なので家族だけで葬儀を行いすぐに出棺する方向で進めた。



 出棺の日は来てほしくない。

 そんなことを出棺までの数日間は思っていた。

 だがそんな思いを嘲笑うかのように出棺の日がやってきた。

 出棺前に母の姿を見た。

 これでもう会えなくなる。

 そんなことを考えているとまた涙が溢れ出た。



 霊柩車(れいきゅうしゃ)に母の入った棺を乗せると火葬場に向けて走り出した。

 お母さん早く目を覚まして!

 このままだと焼かれちゃうよ!

 そんな子供のような非現実的なことを火葬場に向かう霊柩車の中で何度も思っていた。



 そんな思いの中霊柩車は火葬場に到着した。

 母の入った棺が霊柩車から降ろされるとそのまま運ばれていった。

 私たちは別の部屋へと案内された。

 その部屋には母のことを知った数名の知人がいてくれた。

 他にも最後のお別れに来たいという人はいたのだが、このご時世だったので最低限でとり行うことにしたのだ。

 集まってくれた知人といろいろと話をしたはずなのだが、今は何を話したのかよく覚えていない。



 部屋で待っていると火葬の準備ができたとアナウンスが流れると係の人が一人部屋の中に入ってきた。

 係の人が案内をするという事だったのでその後を私たちは付いて行った。

 案内されたのは火葬を行う部屋だった。

 そこには母が入った棺に花、そして母の写真があった。



 母さんはもう焼かれてしまう。

 もう本当に最後のだという気持ちで一杯になった。

 やがて最後のお別れという事でそれぞれが母の棺に花を添えていく。

 花が全て添えられると棺が閉められた。

 棺はそのまま火葬炉の前へと運ばれ行く。



 焼かないで。焼かないでくれ!

 何度思ったことだろうか。

 だが母の入った棺は火葬炉の中へと入れられた。



 これ母と会うことはもうできない。

 母の姿を見ることもできない。

 そんなことを思いながら控室に案内される。

 集まってくれた数名の知人たちはこのご時世ということもあり、最後のお別れの後そのまま帰宅をした。

 だから控室にいるのは私たち家族だけだった。



 食事をしながら火葬が終わるのを待った。

 どれだけ経っただろうか、火葬が終了したというアナウンスと共に係の人が控室に来て案内をしてくれた。

 案内された部屋に行くとそこには骨となって変わり果てた母の姿があった。

 正直これが母だとは信じられなかった。

 だがまぎれもなく目の前にあるのは母の遺骨だった。



 祭場の人が骨の説明をしてくれた後に母の遺骨を骨壺の中へと入れていく。

 そして最後に祭場の人が母の遺骨を骨壺に収めてくれた。

 それから骨壺を自宅に持ち帰り、四十九日を待って納骨を済ませた。



 母が亡くなってからもっと会話をしておけば良かった。

 もっとあんなことやこんなことをしてあげれば良かったと思う事もあった。

 だが、それはもう叶わない思いなのだ。

 何気ない当たり前のような日常の中では気付かなかったことだけれど、母という存在を失って気付いたのだ。

 だからこそ私は伝えたい。

 少しでも良いから家族との時間を大切にして欲しいと。

 趣味に時間を費やしたいという気持ちもわかる。

 親に反抗をしている人もいると思う。

 それでも数分でも良いから家族との時間を作ってほしい。

 失ってから後悔をしてももう遅いのだから……。

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