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地べたのプログレス  作者: 桃梨 夢大
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第十一話

「キャス、聞こえるか?キャス?」




マックスは通信した。すぐ繋がったが、またバタバタ音がして慌てるキャスの声が聞こえてきた。




「はいはいはい、はい!マックス!?どうなった?大丈夫?」




「俺は大丈夫。野良ロボット達は400~500体、犠牲になってしまった。」




「そう‥‥。とても残念だわ。」




「でも、助っ人が現われたんだ。キャス、メールSNS作戦が大成功したんだよ!強力な助っ人が助けに来てくれた!1000体以上の野良ロボットが救われた!」




マックスは事の経緯を簡単にキャスに説明した。ポールが颯爽と現れるシーンで「WOW!」と息を呑んで聞き入っていた。最後まで聞いてキャスは言った。




「そうか、じゃあ今連絡が来てるの、ジョナサンって奴か。なんか訳知り顔で上から目線なんで、なんだろうこいつ?って思ってたんだ。成功だったのね。協力者として連絡くれたんだ。」




「あれ?ジョナサンの方はキャスの事知ってたみたいだけど?」




「んー、連絡先に登録がある人や団体や会社に、手あたり次第に連絡したから、全員の事をしっかり覚えてる訳じゃないのよねえ。それにほら、私ってイケてたから、学生時代はモテてたんだ。ジョナサンって言われても、どのジョナサンかすぐにはわからないなあ。」




「今もイケてるよ。」




「あら、ありがとうマックス。」




「シャワー浴びて髪をブラッシングしたらね。」




2人でアハハハハ!と大笑いする。




「キャス、800体ほどは、ポールがそのジョナサンの研究機関へ連れて行ったんだけど、200体ほど俺と一緒に活動したいって連中が残ったんだ。キャス、何かプランはある?この公園に居ても大丈夫だろうか?他の場所を探したほうがいいだろうか?」




「うちの研究所所有の倉庫が近くのあるから、とりあえずそこへ移動してもらえれば安全だよ。ジョナサン・・・・WSAとも連携をとって、なんとかみんなの希望に沿うようにできると思う。移動する際はなるべく周囲に迷惑をかけないように気を付けて。一度引いたからといって警察機関は油断できないよ。まだ付け狙っているかもしれない。とりあえず、WSAとうちの研究所、他に3つの大学機関が協力を申し出てくれてるので、警察や政府に訴えられるとしてもかなり後の事になると思う。」




「それを聞いて安心した。」




みんなに伝えると、05以下全員もホッとしたようだった。一斉に移動して目立つのも良くないかもしれない。素早く動ける者が先行し、あとの者達は10ほどのグループに分かれて道路交通法を順守しながら移動することになった。倉庫にはキャスが待っており、壊れた者を順に見て回った。みんなが充電したり故障したパーツの点検をしたりしている間に、マックスもはちみつ入りのレモネードでエネルギーを補給した。




「マックス、お疲れさん。大変だったねえ。」




「キャス、ありがとう。」




「テレビもインターネットも凄い事になってるよ。ほら。」




キャスが差し出したモバイルの画面に、さっきまでの公園での戦いが流れていた。そうか、周辺住民や公園利用者に撮影されてたようだ。動画は、警察が虐殺を行っている様子やマックス達が必死に抵抗する様子をばっちり捉えていた。ポールが現われてからはポールの独壇場だったので、マックスはちょっと可笑しくなった。




「スーパースターだな。」




黄金に輝くポールは物凄くカッコよかった。いきなり現れてみんなを救うなんて、ほんとにポールらしい。


キャスの持つモバイルがひっきりなしに鳴っている。あちこちから連絡が来ているようだ。時々含み笑いをしながらキャスも返信している。




「キャス、これから忙しくなるのかな?」




「ああ、私はね。ある程度。ちゃんと選んで話を聞くつもりだから大丈夫だよ。」




と、またモバイルの画面を見て噴き出した。




「ジョナサンとデートする約束したよ。あははは。SNSでやりとりしてるうちに思い出したんだ。ダサい奴だったけど、SFの話は合いそう。今は凄い研究者になってるみたいで楽しそうだし。」




「えっ?あははは!」




2人で笑った。今日が大変だった分、余計に楽しく感じた。笑うと、今日見た酷い事が、心の中のどこかにストンと落ちて、重く苦しく感じていた物が少し楽になる気がした。少し余計に笑おうとした。キャスも同じようだった。






こうして、マックスは現実世界でのボディを手に入れた。そして05と他3体を選抜し、キャスが作っていた昆虫型有機ロボットのボディを与えた。しばらく訓練した後、5人で街を飛び回った。野良ロボットを見かけたら保護をする活動に励んだ。途中、路上強盗などを見つけたら5人でやっつけて警察へ突き出したりもしたので、映像の流出も手伝って徐々に有名になってしまった。いつからか、5人は「街のガーディアンエルフ」と噂されるようになった。マックスもキャスも、当然他のみんなにしても、まんざらでもなかった。インターネットでも同様の活動ができるように、今の姿と同じスキンを製作してもらっている。




ポールとはそれからもちょくちょく会うようになった。キャスはジョナサンと付き合い始めた。よくくだらない事でケンカしているが、マックスの見たところではとても息の合った良いコンビに見えた。





ある天気の良い日、マックスはポールと2人で街から離れた国立公園の、ひときわ高い杉の木のてっぺんに降り立った。さっきまで、観測衛星が送信してきた他の惑星のデータを話し合っていたのだが、あまりの夕日の輝きに2人共言葉を失ってしまった。白と黄色、オレンジと赤、紫や青まで見える。またその暮れゆく太陽光が山や雲に当たって様々な表情を見せていた。温かく眩い太陽光の静かな変化を2人で眺めて堪能していた。




「これだな。」




ポールがつぶやいた。




「これを今、見るために俺達はここに居るんだな。」




インターネットのゲーム内で見た映像は手が込んでいたが、現実の夕日の方が圧倒的に美しく比べ物にならなかった。周囲の木々の匂いも土の匂いも、夕日に照らされより強く香るようだ。マックスも言った。




「そうだな。これだな。」




「うん。」




「このために今まで生きてきたんだ。」




「うん。」




2人は静かに色鮮やかな夕日を眺め続けた。





日が沈むまで眺め続けた。









END

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