3.43.複合魔法を作りたい
えーーっと。
風魔法は結構あるし、水、雷は作った。
炎魔法は今は作れないから保留として、光魔法と闇魔法はネタ切れ。
土魔法も同じ。
うん、完全にネタが切れているみたいなので、これからは複合魔法を作ってみよう。
とりあえず絶対に作っとかないといけないのが……。
闇魔法と光魔法の複合魔法。
うん、難題!!
光と闇ってどうしたらいいのよ……。
あー、そうだな。
とりあえず個々をくっつけてみるか。
俺が出来る光魔法で、使いやすいのは太陽の杭と聖槍かな?
聖槍はお父さんの見て覚えた魔法だけど、結構使いやすいです。
闇魔法で使いやすい物って言ったら……やっぱりワープゲートだよね。
じゃあ太陽の杭と、ワープゲートを組み合わせて作るとなると……。
『あれ、これ複合してないじゃん。一個一個を個別に撃ちだしてるだけじゃん』
考えてみたのは太陽の杭を撃ちだし、それをワープゲートに突っ込ませて全く違う所から射出するという物だったが……。
複合……要するに混ざってない。
ただの連携魔法になってしまっているのだ。
そう考えると感電水も同じように感じたのだが、あれは別に一緒に使っているのでセーフとした。
複合魔法の風神は、威力を高める為に三つの魔法を重ね掛けしているので、これもセーフ。
聖水は光魔法を水魔法に混ぜないと作ることが出来ないので、これれもセーフだ。
こう考えてみると、やっぱり光魔法と闇魔法の相性は最悪だと思う……。
どうしろって言うんですか。
多分なんかいい魔法はあるんだと思うけど、俺の知識では作れそうにありませんでした。
残念……。
『ま、いいか。気を取り直して他のを作ってみよう!』
こうしていれば、そのうち何かいい魔法を思いつくだろう。
考えて出来るような物ではないのであれば、思いつくまで他の魔法に専念した方が有意義である。
と、いう事で実験していきましょう。
炎魔法はこの場所でやるとやばそうなので、それ以外で。
さて、まずは何をしてみようか。
あ、そういえばデルタがやってたあの魔法。
土と闇を複合させて作った人形みたいな奴。
あれを練習してみようか。
多分あの魔法は、水狼を作る時と同じようにイメージが大切になる魔法だ。
形が違うだけの土狼。
では何をイメージして作ってみようか……。
という事で、とりあえず地面に手を叩きつけて、土魔法を使用する。
土がごぼっと持ち上がったので、俺はそれをまた土魔法で形を整えていく。
『あ……待てよ……? もしかしてこれいけるんじゃね?』
急に頭の中に出てきた物を忠実に再現するため、俺は慎重に土を削っていった。
兜……腕当て、肩当て、そして背中につける防具……。
それを全て土で作り出し、魔力を注ぎ込んで強度を上げる。
闇魔法を使って作り出した武具を持ち上げ、闇の糸で体に巻き付け縛っていく。
闇魔法はこういう裁縫のような事が出来ると、これで初めて知った。
中々面白いな。
そこで俺は、先ほど掘り返した穴に水魔法で水を貯め、今の俺の体を映し出してみる。
そこには、狼用の鎧兜を身に着けた俺が立っていた。
頭には狼の頭部に合わせた兜が付けられ、闇の糸で顔に固定している。
兜には牙が装飾として付けられている為、結構かっこいい。
胸には、喉輪が付けられており、肩には大袖、体には背中から被せる胴、足には関節以外の場所に脛当てなどが付けられている。
イメージの通りに出来ていたので、俺はその姿に非常に満足した。
だが色合いがないのでちょっと悲しい。
随分と綺麗に作っているので、何処がどの部分なのかという事はわかるのだが……やはり色が欲しいところだ。
使う土の性質を変えると、色が少しはつくかもしれないな。
『ええやん!』
前世で甲冑を着せている犬を見たことがあったので、それを再現してみたのだ。
ここまで上手くいくとは思っていなかった。
だがこれは普通にかっこいい。
闇魔法を維持し続けなければならないというのが、少々面倒ではあるが、防具を着ているという安心感はとても心強い。
全員に着せたら、さぞかっこいい部隊になるのだろうなと、俺は妄想して確信した。
子供たちに着せたら可愛いに違いない。
採寸などは、実際に土魔法で象ればいい話なので、全く問題はないだろう。
今度帰ったらやってみることにする。
作ろうとしていた物とは全く別の物が出来上がってしまったが、まぁいいだろう。
『でもあれだなぁ。これも複合魔法とは言えないな』
土魔法で防具を作り、闇魔法でそれを固定している。
なのでこれも複合魔法には入らないだろう。
『ぬぁああああ複合魔法難しいよぉ~~!』
その歯痒さを、とりあえず転げまわって表現する。
作りたいが、なかなか満足のいく物が作れない……。
ぶっちゃけ手詰まりですはい。
『どうすりゃいいのぉ……。あー水と土を混ぜ合わせて泥とかぁ~? そんなのしか思いつかな…………。いやそれじゃん。複合魔法それじゃん』
パッと思いついたので、とりあえず土魔法と水魔法を使用して泥沼を作ってみる。
泥にする地面を土魔法で選択し、水魔法を使って水と土と混ぜ合わせてみた。
すると、地面の一部が黒く滲み、ズッという音がして泥沼が完成した。
本当にできたかどうかを確認する為、その辺にあった小石を泥沼に向かって転がして落とす。
小石は泥沼に落ち、一時的に停止したが、それからはずぶずぶと沈んでいく。
暫くすると完全に小石の姿が見えなくなった。
『成功~……』
やっぱり魔法って急に出てきて急に思いつく物なんですね。
なんかずっと考えていた俺が馬鹿みたい。
まぁ成功したならそれでいいか!
次は何を作ろうかな~。
そう思ってまた考え始めた時、子供たちのいた所から小さな火柱が上がっていることに気が付いた。
炎魔法が使えるのはシャロ一匹だけなので、多分その子が犯人だろう。
まだ危ないと言っているのに何故使ってしまったのか……。
これは一度戻って説教をしなければならない。
そう思い、俺は山を下りる。
坂道なので普通の状態であっても、結構な速度が出た。
勢いを一切殺すことなく、子供たちのいた場所へと足を進める。
「ゥオーーーーーーーー!」
『!』
遠くから遠吠えが聞こえた。
狼の遠吠えにはいくつかの種類がある。
集まれ、逃げろ、危険だ、などといった簡単な物なのだが、俺はそれを全て覚えている。
その為、その遠吠えを聞いた俺は瞬時に意味を理解したのだが……その遠吠えの意味はこうだ。
『また来たのか! 人間……!』
遠吠えの意味は、「敵襲」であった。




