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3.28.縄張り拡張


 縄張りを広くするために、俺たちは罠を仕掛けた場所まで来ていた。

 死体の片づけは既に終了しており、残骸の山が少しだけ残っている程度だ。

 死体を燃やすのに、俺があの時東の森で片づけた木材が使用されている。

 一体あそこからここまでどうやって運んだのだろうかと思っていたのだが、ナックという狼がワープを使って運んだようだ。


 片付けが終わった狼たちは、一度帰って休憩をしてもらっている。

 流石に戦って連日働かせるのは酷という物だ。

 今は全員が帰って休んでいるだろう。


『ベンツ、ちょっと聞きたいことが……』

『縄張りの広げ方?』

『その通り』


 流石ベンツ。

 俺が何を聞きたいのかを既に把握していたようで、すぐにその質問に答えてくれた。


『縄張りを広げるときは、リーダーを合わせて三匹で行動して、広げる場所を確認していくの。その時に注意しなければならないのは、危険かどうか、獲物はいるか、水場はあるかの三種類かな?』

『割と簡単なんだな』

『そうでもないよ?』

『なんでだ?』


 え、まじ?

 そんなに難しそうな要素とか無さそうだし、俺の鼻があれば地形とかも大体は把握できそうなもんなんだけどな。


『リーダーは縄張りに目印をつけていかないといけないんだ。自分の匂いが付けばそれでいいんだけど、大体は木や岩に爪痕を残すよ』

『あ、そういう事ね』


 どうやら、リーダーは少し仕事量が多いというくらいで、別に特別なことがあるわけではない様だ。

 そのことに少し安心して、俺はまた先頭を歩いていく。

 今回の布陣は、先頭が俺、次がオートで最後尾がベンツだ。

 この陣形に何か深い意味があるのかもしれないと、俺は少し期待していたのだが……そんな事は全くなく、ただオートとベンツが俺についてきているだけだった。


『ベンツ』

『ん? ……ああ、そうだね』


 俺は地雷電を発見し、ベンツに声をかける。

 ここがこれから俺たちの縄張りになるのだから、こうした危険は取り除いておいた方が良いだろう。


 ベンツが前に出てきて、地雷電に手を当てる。

 一瞬びりっとした物がベンツに流れたかと思うと、ベンツはすぐに手を放して体を振るう。

 これで地雷電に仕込んでいた雷を回収できた。

 もう爆発はしないだろう。


 周囲を見渡してみると、他にも地雷電が多く埋まっていた。

 どうやら、人間たちはこの罠の対処法を編み出したらしく、地雷電の近くには必ず木の棒が突き刺さっている。

 何かの魔法で、地雷電を感知していったのだろう。

 だが、解除はできないらしい。

 解除できているのであれば、このような目印は立たないはずだからだ。

 

 という事は……この複合魔法って、人間たちはどんな魔法なのか理解できなかったって事かな。

 光魔法で雷を入れる箱作っただけなんだけどなぁ。

 何でも入れれるっていう面白い物だけどね。


 ん~……てなるともうちょっと違う罠欲しいな。

 だけど俺の知ってる罠なんてたかが知れてるんだよね~。

 パッと出てきたの地雷くらいだもん。

 あととらばさみ。

 流石にそれは再現できそうにない。

 土魔法使ったら出来そうではあるけど、魔力消費やばいからなあれ。

 あんまりやりたくない。


 とりあえず全部の地雷電を解除して回り、周囲の安全を確保した。

 これで子供たちが来ても、自由に走り回れるはずだ。


『お父さん。何処まで広げるの?』

『そうだな……。人間たちを止めたあの場所まで広げよう』


 オートの言うあの場所というのは、西側に回り込んだ仲間が、逃げてきた冒険者を最初に殺した場所だ。

 とりあえず、仲間たちが走った場所は全て縄張りにいれる予定らしい。

 それからまた少しづつ拡張していき、ここら一体の地形を群れの頭の中に叩き込ませる。

 俺たちも例外ではなく、この周囲で狩り、縄張りの見回りなどをさせられるようだ。


 俺は別に匂いで大体の地形がわかるから別に大丈夫なんだけどなぁ。

 ま、別にいいけどね。

 最近走って狩りしてなかったからなぁ~!

 ちょっと狩りしたいね。

 子供たちと一緒に食べたいのだ。


 すると、オートが木に爪を立てた。

 とりあえずこの場所を最初の縄張りの目印にするようだ。


『オール、あっちはどうなっている』

『あっちは開けた場所は全くないよ。木々が生い茂ってるから、隠れるのにはちょうどいいかも』

『ふむ、後衛にはあの場所に隠れてもらってもいいかもしれないな』


 以前に俺が、匂いで地形を割り出したところだ。

 あの場所は走りにくいし、前が見えにくいしで、行動が随分と制限された。

 人間であれば、あのような場所を歩くのは骨が折れるだろう。

 だが、逆に言えば隠れるにはいい場所だ。

 あの場所に潜んでいれば、感知能力がない限り見つけるのは困難を極めるだろう。


『じゃあとりあえずそこまで進んでいくか』

『行くのぉ……』

『当たり前だ。そうしなければ印が付けられんだろう』


 確かにそうなのだが……この体の大きさであの場所まで行くのは結構大変なのだ。

 とは言え、行かなければならない事には変わりがないので、大人しくオートについて行くことにする。


 この辺りの魔物は、あの地雷電の大きな音に驚いてしまったようで、この辺りにはいなくなってしまっているようだ。

 まぁ問題ないといえばないのだが、人間たちと戦うにしても、そういう第三勢力がいればこちらも楽になる。

 少しでもかく乱してくれれば、優位に立てる可能性があるのだ。

 その為、今度は音が発生しないような罠を作ろうと思う。


 オートは歩きながら、木や石に爪を立てていく。

 こうしてどんどん縄張りの範囲を広げていくのだ。

 それを何回か繰り返していくと、いつの間にか初めの場所に戻ってきていた。

 どうやら縄張りの範囲が決まったらしい。


『こんなものか』

『これで終わりなの?』

『始めのうちはな。後は群れの仲間がこの縄張りに慣れていくにつれて、また広げていくを繰り返す』


 ここは子供たちがいる拠点の場所から随分と遠い所なのだが……。

 この範囲を覚えるのはなかなか大変そうだ。

 まぁ覚えなければならないのだろうけど。


『オール。お前はナックと協力してあの木材を運んでこい』

『わかった。……あ! ついでにあの白い糸も持ってきていい!?』

『? いいが……子供たちの前には持っていくなよ。あれは危険だ』

『わかってるよ』


 もしかすると、木材とあの白い糸、もとい白いロープで音のあまり鳴らない罠が作れるかもしれない。

 考えがまとまったら即行動。

 とは言え、最初に木材を運びたいので、それはガンマに手伝ってもらおうと思う。


『おーし行くぞー!』

『張り切ってるなぁ』


 そりゃそうですよ。

 なんか工作みたいで楽しそうじゃん!

 でもそれで人間吹っ飛ばす装置作るんだけどね!


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