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3.18.上機嫌


 目を開けて視界の共有を終わる。

 土狼は闇魔法が付与されており、発動させる前であれば目を閉じて視界が共有できるようになっていた。

 とても便利な反面、土狼の波を発生させないと消えないというちょっと面倒くさい特性を持っている。

 出来れば何の被害もなく、動き回れて視界の共有できる魔法を作りたいものだ。


『ていうか土狼強いな』


 初めて生きている生物に対して使用してみたが、数が居ればとても強い魔法だ。

 俺の限界は三匹までなので、あれだけの規模しか被害を出すことはできなかったが、それでも十分すぎる。

 ロード爺ちゃんであればもっと被害を拡大できたはずだ。

 何せ、あの遠吠えが必要ないのだから。

 その代わり現地にいる必要はあるみたいだけどね。


『兄ちゃんなんか嬉しそうだね』

『ふふん。どうやら、俺とベンツが仕掛けた罠はうまく発動したみたいだぞ』

『まぁ音がここまで聞こえてきたからそりゃわかるよ~』


 地雷電の爆発音は非常に大きい物だ。

 ここから随分と離れた場所に作ったというのに、ここまで音が聞こえてきた。


 地雷と雷を合わせた様な物なので、音だけは多分どんな魔法よりもでかいと思う。

 それを閉じ込め続けている無限箱も大概ではあるが、あれがなければこの作戦は成功していなかった。

 よくあの時までにこんな魔法を思いついたものだ。

 よくやったぞ過去の俺。


 だがもう人間の陣営を見ることはできない。

 代わりとなる目を全て使ってしまったのだ。

 再度送り届けることもできなくはないのだが、土狼は遠くに移動するのには向かない魔法。

 あの場所まで送り届ける前に、俺が疲れてしまうのが落ちなので、後は他の群れに人間たちの処理を任せることにする。


 殺されていく人間なんて見たくないしな。

 俺はこの可愛い子供たちと一緒に、皆の帰りを待つのだ。

 とは言っても……。


『全員寝てるな』

『まぁ仕方ないよ。子供は寝るものだからね』


 それもそうか。

 俺たちも昔こんなだったんだもんな。


 でもさ。

 何で全部俺の体に寄り添ってるわけなのさ。

 いやここは天国なのかもしれないけど、一切合切身動きが取れません。

 両腕の間にも入り込んで寝ているので、俺は顎を地面につけて休むことすら許されない状況が続いている。

 別にいいけどさー……どうせなら一緒に寝たかった……。

 これじゃ寝られません。


 まぁ俺は寝ずの晩をしないといけなさそうだしな。

 別に問題はない。


『ガンマ』

『なんだー?』

『獲物獲ってきて。出来れば柔らかい奴』

『ああ……子供たちにあげる奴ね。了解。俺もちょっと動きたかったんだよな』

『西にはいくなよ? 東に行けよ?』

『お父さんの言いつけを破るつもりはないって』


 ガンマはそう言うと、足音を立てないようにゆっくり歩いていき、一定の距離を取ったという事を確認した後、素早く走っていった。

 ガンマなりに子供たちを起こすまいとしてくれたようなのではあるが……数匹はその足音で目を開けて何だ何だと確認している。

 だが眠気には勝てないのか、また体をもぞもぞと動かしてから、目を閉じた。


 子供ってなんでこんなに可愛いんでしょうかね。

 何しても可愛いじゃん。


『兄ちゃん』

『んー?』

『あっち大丈夫かな』

『……あー……まぁ大丈夫だろ』


 そうは言ってみるが、やはり心配である。

 俺は人間たちの匂いを嗅いで発見したとき、その数もそれなりに把握していた。

 時間がなかったので詳しい数は数えれなかったのだが、その数は五百以上いたように思える。


 そんな数を一体どうやって捌いていくのか、俺には想像もつかないし、俺たちを狩るためだけにこれだけの数の人間が押し寄せてくるなんて微塵も思っていなかった。

 予想外……俺の予想の範囲を超えていたのだ。


 今頃、群れは人間たちの居る場所の近くに辿り着いているころだろう。

 前回の戦いでは負けたらしいし、今回もその可能性がない訳ではない。

 そう考えると急に不安になってくるが、それでも俺たちを守るために、あの狼たちは人間に立ち向かって行ったのだ。

 であれば、信じてやらなければならないだろう。

 信じて待つ事が、今俺たちが出来ることである。


『大丈夫さ』

『……だね』


 俺たちは俺たちのすべきことをしなければならない。

 いつ敵があの群れをすり抜けて、この場に来るかわからないのだ。

 油断していてはいけない。


「きゅ~~」

『……』


 油断していては……っ! いけないんだっ!


「く~」

「きゅ~」


 はああああ夢見てるのかな!?

 めっちゃ足動かすやん!

 ああああああかわいいねぇ!? ええ!?

 

 その姿を、ベンツは白い目で見ていたのだった。


『兄ちゃんの威厳……ないね』


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