3.13.準備完了
ブクマ1000人超えてました……有難う……有難う……!
あれから一か月が経った。
警戒していた俺たちだが、ここまで人間が来ないと流石に警戒心も弱くなっていく。
だがそれでも、ロード爺ちゃんとオートは警戒だけは緩めるなと、群れに言い続けていた。
前回もこれくらいの期間時間が空いたと聞く。
本当に安心して良いのは、半年がたった後らしい。
それまで警戒しなければならないのかと、少し憂鬱になるが、まぁそれでも問題ないだろう。
来なければ優雅に過ごせる。
それに、来る方角は恐らく西。
西から来たのであれば、まず初めに俺とベンツが仕掛けた地雷電が発動するはずだ。
俺たちが罠を仕掛けた場所には、絶対に近づくなと説明をしているため、未だ間違って罠を踏んだ味方はいない。
もし間違えて踏んでしまうと大惨事だ。
相手に自分たちの位置を教えてしまうかもしれないし、なんなら犠牲も出る可能性がある。
それだけは避けたいのだ。
因みに……まぁ罠なので他の小動物はよく引っ掛かる。
なので、一週間に一回は罠を張りなおしに行っていた。
だがそこで取れる獲物の肉がまぁ旨い。
強い電撃で肉が多少焼けているのだ。
やはり焼けている肉というのは食べやすいし、何より風味が広がるような気がした。
肉には変わりないが、食感が変わるだけで肉だという事を再認識させてくれる。
ていうか焼いた肉なんて何年ぶりだろう!
ということで、俺は一生懸命また罠を張ります。
罠の位置は、俺がすべて把握している。
無限箱は仕掛けた場所の位置がわかるので、俺が歩いても間違って踏むという事は絶対にない。
ベンツも自分の魔力を感じ取れるようなので、何処に仕掛けてあるかくらいは把握しているようだ。
壁にも地面にも木の根にも設置しているため、何も知らずに歩いていれば必ず一度は引っ掛かるだろう。
それを打破するような奴が居たら面倒くさいなとは思うが、まぁその時はその時だ。
違う方法を考えればいい話。
この罠は相手を全滅させるものではないのだ。
進行を遅らせることが出来れば十分。
『よし、今日はこんなもんか』
『また結構獲れたね~』
今日も獲物が罠に結構引っ掛かっていた。
その為、今はこれをどうやって持って帰ろうか考えている最中だ。
『兄ちゃんが俺を運んだ時のあれでいいんじゃない?』
『それもそうだな』
と、いう事で、俺はその獲物たちを風でひょちとまとめて持ち上げる。
今回もしっかりと肉が焼けているのか、少しばかり毛が焦げているようだ。
今日の獲物も美味しそうである。
スン。
『……!』
走り出そうとした瞬間、俺の鼻がとある匂いを嗅ぎ取った。
その方向は西。
それも……結構多い。
『兄ちゃん……? どうしたの?』
『来た』
『何が?』
『人間!!』
俺は獲物を捨てて走り出す。
言葉の意味を理解したベンツも、俺に続いて走り出した。
『兄ちゃん本当に来たの!?』
『間違いない! あの匂いは人間だ! ベンツ! 先に行って早く知らせてくれ』
『いいけど兄ちゃんは!?』
『もう一個だけ特別な罠を仕掛けておくだけ!』
『わかった! 気を付けてね!』
そう言い残すと、ベンツはオレンジ色の稲妻を体に纏って一瞬で消えた。
ベンツの持てる最速で、群れの所に向かったのだろう。
『子供たちには手を出させんぞ!』
俺は土狼を三体作る。
この一ヵ月間、この土狼について随分と勉強したものだ。
何故ロード爺ちゃんのように速攻で発動しないのか。
それは、この一体一体が、本当の土狼を発動させるためのスイッチのような役割を持っていたからである。
スイッチを発動させるまでは、本当の土狼は出現せず、この一匹の土狼だけが残っている状態となるのだ。
こいつは発動するまで消えないし、移動もできる。
なので、こいつ自身が罠となってくれるのだ。
本当の土狼を発動させるスイッチは、声のない遠吠え。
この後、土狼の津波が押し寄せる。
この三体の土狼には、人間を見つけたら即座にスイッチを入れて土狼を発生させろという命令を入れておく。
こうすれば、土狼が人間を発見した瞬間、土狼の津波が人間たちを襲うだろう。
因みに、俺は人間を殺したくはないので、怪我をさせたら土狼の外に放り出すようにとも命令している。
これで俺は人を殺さなくて済むのだ。
『頼むぞ土狼!』
「──」
三匹は小さく頷き、俺が指定した場所に配置してもらう。
これで、準備は完了だ。
『よし、俺も帰るぞ』
俺の任務は子供たちを守る事。
早く帰らなければいけない。
ベンツの真似をして雷と身体能力強化の魔法を使用して、全速力で拠点へと帰っていったのだった。




