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10.5.近づく死期


 ライドル領は今日も賑やかです。

 今日は領内の会話に耳を傾けていきましょう。


『だからくせぇっつってんじゃん!!』

「なんでよ!! 今日は抑えた方よ!?」

『抑えられてねぇっつってんの!!』

「嗅覚が鋭すぎるだけでしょ絶対!!」

『お前の鼻の方こそどうなってんだ!!』

「「「「リスティさん。今日きついです」」」」

「なあああんでえええええええああああああ!!?」

『うるせぇ!!!!』


 簡易契約を先日結んだリスティとウェイスですね。

 んー、傾けるべき声を間違えてしまったようです。

 では次に参りましょう。


「いいかドロ!」

『うん』

「土魔法というのは!」

『沼じゃないの?』

「……沼?」

『沼』

「…………え、沼?」

『沼』


 調子を狂わせるのが得意なドロ。

 ドロの言っていることを理解しようとしているが、そんな魔法を見たことがないので常にクエスチョンマークを頭上に浮かび上がらせているナレッチ。

 土魔法が得意な者同士、それなりに意気投合するかと思ったのだが、ナレッチのハイテンションにドロの少し引っ込み思案な性格が混じって中和されている気がします。

 こっちはいいコンビっぽい。

 気がする。


 んじゃ次に行ってみましょう。


『ハバル、それは何だ』

「テマリア様から貰ったんだ……お前に、と」

『いらん捨てろ』

「領主の奥様から貰った物を捨てるわけにはいかないのだよ……」

『そもそもなんだそのひらひらは。何の役に立つ?』

「可愛くなれるんじゃないか?」

『捨てろ!!』


 カチューシャのような物を作ってもらったらしい。

 ガルザには似合わないからやめとけマジで。


 とまぁ、今日もライドル領は賑やかです。

 契約している仲間たちは上手くやっているようですね。

 うんうん、いい兆候だ。


『貴方は何を満足しているわけ?』

『ライドル領の様子を見るのはなかなかいいもんだぞ……』

『私には分からないわ』

『てかお前は何をしに来たんだ』

『全部終わったから休暇よ休暇。もー戦ってばかりで大変だったんだから、モフモフ見て癒されなとね~』

『怖がられてるぞ』

『うっそ……』


 リューサーの巨大な体に怯える子供たちは多い。

 今も俺の陰に隠れている子もいるのだ。


 まぁリューサーは小さな子供たちを触ることはできないので、見るだけで満足している。

 触っても感触が分からないので、見て愛でる方がいいのだという。

 だが怖がられているということには若干のショックを受けたようだ。


 ていうかライドル領の人間も、リューサーがいることに驚かなくなってきたな。

 適応能力が高いんだけど。

 いやこれ俺たちのせいか。


『……ぅ』


 ああー……ついに来たかぁ……。

 スルースナーが言っていた事と同じだな。

 まさかこんなに早く来るとは思っていなかったけど。


 魔力総量が減り始めた。

 非常にゆっくりなのでそう簡単にはなくなりそうにはないが……近い内に空っぽになってしまうだろう。

 この事を伝えるべきか、伝えないべきか……。

 ……伝えるべきだろうな。


『リューサー』

『んー?』

『俺の死期が近いって言ったらどうする?』

『葬式は出てあげるわ』

『冷たくないか??』

『あんた無茶しすぎたのよ。その罰よ罰。はぁー、唯一の同郷の人間がすぐに死んじゃうなんてなぁー。約束破ってんじゃないわよ……っとにもう』

『……悪い』


 リューサーは口ではそう言っているが、本心は寂しそうだということが最後の言葉の震え方で伺うことができた。

 悲しんでくれているのは嬉しいな。

 まぁ、まだすぐには死なないと思うけどね。


 つっても覚悟はしておいた方が良いだろうな。

 あー、なんか怖くなってきた。

 どうしよ、モフモフしよ……。


『うりゃー』

『おわあ!』

『わー!』


 近くにいた子供たちを軽く転がして遊ぶ。

 子供たちも楽しんでいるようだ。

 ほいほいっ、そいっ。


『……オールはそれでいいの?』

『ああ、俺はもう満足したしな』

『潔いわね』

『……どの道、アルビノの俺はそう長くは生きられなかった。少し……時期が早くなっただけの話さ……。で、お前はこれからどうするんだ?』

『どうもこうも、あんたが残した物全部守るつもりよ。その為に私は竜のリーダーになったんだから』

『んじゃ、これから生まれ変わるフェンリルによろしくな。俺の友達だ』

『……ふぅん。じゃあ仲良くしてあげるわ』


 とんでもないほど上から目線だなこいつ……。

 まぁ種族的にも頂点に立つ存在だろうから、オルオードも納得してくれるかな。

 事実上はあいつの方が年上なんだけどね……。


『ということでオルオード。覚えておいてくれよー』

(いいだろう)

『お前らどこまで上から目線なんだ……』

『『『オール様、もうお休みください』』』

『ええー』


 ……あ、そういえば……。


『三狐。お前俺が死んだらどうするつもりだ?』

『『『オルオード様に憑りつく予定です。それまではガンマ様とベンツ様に』』』

『そうか』


 こいつらも予定はあるんだな。

 だったらいいか。


 んじゃ、三狐の言う通り今日は寝ましょうかねぇ……。

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― 新着の感想 ―
[一言] 雰囲気がどんどん最終回に近づいていく……
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