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10.4.魂との会話


『……』

(……)


 そろそろこいつの謎を解き明かさなければなー、とは思っている。

 え、でもこれ単刀直入に聞いていいものなの?

 普通はなんか……いや普通ってなんだ。

 声がする時点で普通じゃないわ。


 まぁ……大体分かってるんだけどさ。


『えーと、フェンリルさん』

(可笑しなことを言うな。フェンリルは君だろう)

『まぁそうなんだけど……てか何で綺麗に話せてんの? 前はノイズかかってたのに』

(君の多すぎる魔力総量が原因で話すことができなかったんだ。声をかけた時はとても無理をしたんだからな)

『へー……。ずっといたのか?』

(いや、オートの毛皮に身を隠していた。ガンマが持ち上げられなかったのはそのせいだ。君が魔法で毛皮を持った時、魂を君の中へと移動させた)

『ああ~理解が追い付かねぇ~』

(別に理解する必要はない)

『そうかもしれないけどさ……』


 まぁ言っている意味は大体分かりますけども。

 こちとらそれなりに前世の知識はあるんですから。

 もう有り得ないことが起きたって驚きはしませんよ……。


 えーと、確かフェンリルって生まれ変わり続けてるんだよな。

 ……お?

 まって父さんの毛皮に至って事は……もしかして父さんがフェンリル候補だった?


『その辺どうなの?』

(その通りだ。オートはフェンリルの候補だったが、お前が産まれたことによりフェンリルの器が変わった。しかし私はオートの中にいた為、魂を移すことができなかったのだ)

『……それで俺が?』

(君の前世を私は知らない。だが魂がフェンリルの体に入ったということは、何らかの形で死んでいる可能性が高い)


 まぁそこは……予想してたけどね……。

 綺麗さっぱり忘れてるから別に後悔とかはないんですけど。

 ていうか面白い話だなぁ。


 あれ、でも父さんは何で俺が産まれる前にフェンリルにならなかったんだろう。

 色が黒かったから?

 いやそんな単純な理由じゃないわな。


(お前が産まれることを、世界は知っていたからだ)

『せ、世界?』

(ああ。二十一年間、私はオートの中で生き続けた。だというのにフェンリルにはならなかったということは、オート以上に相応しいフェンリルが産まれることを世界が知っていたのだよ)

『ん~流石によく分からん』

(難しい話だ。まぁオールでなければフェンリルにはなれなかったということだけを知っていればいい)


 ふーん……。

 本当に難しい話だ。

 なんとなくは分かるけど、理解しきることはできないな。


 なんで俺が選ばれたのかも分らんし、何がしたかったのかも分かんない。

 でも楽しめたな。

 今までいろんなことがありすぎたけど。


(私は君に感謝している)

『俺に?』

(ああ。百十七回私は生まれ変わり、フェンリルとして仲間を率いてきた。だが、ここまで変わることはできなかった)

『どういうことだ?』

(私は望んでいたのだ。人間との共存を。子供たちが怯えることのない生活を。だが、私の力では魔物や人間を退けることはできても、人間に歩み寄ることはできなかった。いつしかそれが当たり前となり満足していた時もあったことを覚えている。だがやはり、子供たちが人間の手によって殺される時、どうしても後悔してしまっていた)


 フェンリルの魂は、小さくため息をついた。


(どうにかならないものかと、深く考えたが……実現することは叶わなかった。どのように変わればいいのかも、私には分らなかったのだ。だが君は私の成せぬことを成した。私の力は敵を寄せ付けないものだ。だが君の力は、敵を消す力だ)

『面白い表現するなぁ……。まぁ確かに、人間は敵ではなくなったけどな』

(フフ、あとは任せてほしい。君が死ねば、私がまた生まれ変わる。君と同じ考えで、人間たちと歩みを合わせよう)

『それはありがたいなぁ』


 俺がいなくなっても、同じ道を歩んでくれるリーダーがいるというのは、なんとも安心するものだ。

 これからの心配が一切なくなるのだからな。


 だが、仲間たちと人間たちを見て、ふと思う。


『……もう、リーダーは要らないかもな』

(ああ、かもしれない……。だが生まれた子供たちは守らねば)

『確かに。じゃあ子守り頼むわ』

(フッフフ……。そんな頼みごとをされたのはこの数百年初めてだぞ)

『そんな頼みもたまにはいいだろう?』

(悪くはないな)


 俺は笑った。

 フェンリルの魂も、くつくつと笑う。


『あ、そう言えばお前名前は?』

(必要か?)

『必要だろ。フェンリルの魂って長いんだよ』

(ふむ……)


 それもそうかと納得したのか、彼は名前を教えてくれた。


(オルオード)

『良い名前じゃん』

(意味などないぞ?)

『なくてもいいさ。名前があるだけでいいものだからな』

(そういうものか)

『そういうもんだよ』

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