10.1.ほのぼの
いい天気ですなぁ~~~~。
毛が温かくなっていくぅ。
いつになっても日向ぼっこは最高です。
あれから一週間が経った。
ライドル領のど真ん中でオブジェクトの様に居座っている俺が、皆と日向ぼっこを満喫しています。
見てくださいこの子供たち。
俺の腕やら尻尾やらを枕にしたりベッドにしたりして気持ちよさそうに寝ています。
夢が叶った気分。
体が大きすぎてモフモフに囲まれるっていうのはできなかったけど、数が増えれば実現するもんなんですねぇ。
満足……。
なぜかシグマとラムダは俺の頭に乗ってるけど。
俺リーダーやぞ。
いや別にいいけども。
『兄ちゃ……』
『おいおい、どうなってんだそれ』
『なんか昔の兄ちゃんに戻った感じするね』
『俺昔こんなんだっけか?』
『『そうだよ』』
『あ、そう……』
子供たちに囲まれている俺を見て、ベンツとガンマが呆れたように鼻を鳴らした。
そういや俺はなりふり構わず子供たちに近づこうとして、めっちゃお父さんに怒られたんだったな……。
あれはレイたち兄弟のお義父さんだったか。
『あ、そういえば……。レイたちの父さんはどうなった?』
『うん。レイたちに渡したよ。でも僕たちの父さんと同じように埋めて欲しいって言ってくれたから、デルタに手伝ってもらって埋めたよ』
『あいつらも大人になったなぁ』
『俺らからしたらまだまだ子供だろ』
『ガンマは手厳しいなぁ』
あいつらも頑張ってるし、なんならあの戦いで多くの功績を遺してくれたと思う。
もっと褒めてやってもいいと思うんだけどな。
いやこれは、ガンマの性格かな?
褒めて伸ばすタイプじゃないしなこいつ。
まぁ、過酷な生活をしていた時期を経験してきたからこそ、厳しくしてしまうんだろうけどね。
ああなることが今はないだろうし、もう生活は安定している。
本拠地は未だに放棄したままだけど、脅威がなくなった今は戻ってもいいかなとは考えているんだけど……どうかなぁ。
まぁその辺はおいおい、かな。
『で、兄さん。体は大丈夫なのか?』
『全然?』
『おい……』
『いやだって仕方ねぇだろ……。あんだけ乱暴に回復魔法使ったんだ。今の魔力総量はお前よりも少ないよ』
『……』
『ま、スルースナーが教えてくれた話を鑑みると、まだまだ死にそうにはないけどな。戦うことはもうできそうにないけど』
『そっか』
一定まで魔力総量が減ってしまうと、そこからは何もしなくてもどんどん減っていくとスルースナーから聞いた。
今のところ安定はしているし、減ってはいない。
でも……これは予想だが、回復魔法をこれ以上使わなければ寿命が延びる、という感じはしない。
多分何もしなくてもいつか魔力総量が減り続ける筈だ。
根拠はないが、俺の体のことだからなんとなく分かる。
まぁ元よりアルビノなんだ。
寿命は短いって知ってたし、その辺は覚悟していたから問題はない。
それに……。
俺は周囲を見る。
ライドル領の人間たちは復興作業を行っており、冒険者はいつも通り仕事をこなしに外へと赴く。
仲間たちはその手伝いだったり、魔法の特訓をしたりしていた。
すっかり馴染んだ俺たちという存在。
もし俺がいなくなっても、こいつらはやっていけるだろう。
最後まで見届けられないというのは少し寂しいけど、安心して別れられる。
まぁ……俺が倒れた時は大騒動だったらしいけどな……。
リューサーが騒ぐわ、メイラムが血相を変えて駆けつけるわ、人間たちも勝利の喜びを忘れて駆け寄ってくるわと……なんか大変だったらしい。
魔力の使い過ぎによる気絶だったらしいけどね。
まぁこれだけ魔力総量が減ったんだから、そうなってしまうのも無理はない、との話だった。
これはリューサーが教えてくれたぞ。
ちなみに、あいつは最後の敵を倒すべく竜の山に戻ったようだ。
戦いが終わったらこっちに戻ってきて話をしようと意気込んでいたけど……。
急ぎ過ぎて無理をしないかが心配だな……。
『あ、そうそう。ヴァロッドが戻ってきたよ』
『やっと戻ってきたのかあの野郎』
『仕方ないよ。こっちの状況なんて向こうに届いてる訳ないし』
『まぁそれはそうなんだけどなぁ』
『でも、話を聞いて大慌てで復興を手伝っているらしいよ。なんか様子が変だったけど』
『ん? どう変だったんだ?』
『んー、なんかすごーく急いでいる感じがした。いつになく真剣で、何かに怯えてるみたいだった』
『ほーん』
あいつも慌てるんだなぁ。
まぁそれはいいとして、とにかくベリルは褒めてやって欲しいな。
あれはいい演説だったぞ。
それにほんと、あいつにはよく助けられた。
通訳もだけど。
『『すぴー』』
『……ガンマの子供は良く寝るな』
『あの戦いで疲れてんだ。少し甘えさせてやってくれ』
『お前もお父さんらしくなってきたな』
『いや親父だっつの!』
『はははは、僕も子供たちの面倒見ないとな。セレナしか見てなかったし、レスタンには三匹を任せて負担をかけたから』
『その三匹も、お前と久しぶりにあえて楽しそうにしてたからな。もう少し構ってやれよ』
『分かってる』
うんうん、やっと落ち着いたし子供たちの面倒もこれから見られるはずだ。
とはいっても、もう面倒を見る必要がないくらい成長しているかもだけどな。
狩りもするし、魔法も使えるし、何なら先輩として子供たちに魔法や狩りを教えることもできるんだ。
……これもスルースナーのお陰だったかもな。
あいつが本拠地に居てくれたおかげで、子供たちに多くの経験を積ませてくれたんだ。
後任はバルガン先生だったけどな。
『ああ、バルガンたちは大丈夫か?』
『ルースとヒラ、バッシュ、リッツはもう回復してる。でもバルガンは喉をやられて喋れなくなったみたい……。魔力総量も削れてしまったから、魔法は使えなくなるだろうってメイラムが言ってた』
『そうか……』
仕方ないこととはいえ、完全に回復させられなかったのは悔しいな。
俺もあの時回復魔法を頑張って使ったと思うんだが……それでもだめだったか。
『あ、でもいいこともあるぜ』
『いいこと?』
『ああ! ベンツとセレナを真似て、簡易契約をする奴らが数匹いてな!』
『えっ!!?』
まじ!?




