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9.34.本気の本気


『ぬぅうううおらあああああああああ!!!!』

「!? !!? ギュジュルルルドゥジュ!!」


 ガンマが巨大な足を尻尾で吹っ飛ばす。

 ついでに魔力を吸う炎を使い、足に青い炎が燃え移った。

 急激に魔力を奪われた巨大な粘液質の魔物は怯えてすぐに炎を払おうとするが、これは魔力を油にして燃える炎。

 そう簡単に消えるものではない。


 粘液も魔力で作っているらしく、それも燃やしてしまう。

 どんどん体が小さくなっていくのを確認した瞬間、シャロが最大火力で炎をぶつける。


 高火力の炎は一瞬で粘液を蒸発させ、相手に大火傷を負わせることができた。

 そして炎も魔力で作られている為、ガンマの青い炎がそれを糧にして更に炎が燃え広がる。


「ギャジャジャザジュジャジャヴャ!!」

『はっはぁー! 効いてる効いてる! このまま魔力全部吸い尽くしてやるぜ!』

『ガンマ兄ちゃん! あいつ体がでかいのは粘液で体を覆ってるからっぽい! 本体は小さいかも!』

『じゃあどんどん魔力燃やしてやるぜ! 炎魔法……!!』


 周囲に青い炎を吹き上がらせる。

 狙いを定め、広範囲の攻撃をイメージして横に腕を薙ぐ。


『凍て付きの炎!!』


 腕を振るった勢いで風が発生する。

 青い炎が一気に魔物へと向かい、容赦なく体を包み込んだ。


 うねり、叩き、走り回るその魔物は、どんどん小さくなっていってついには粘液も出すことができなくなっていた。

 巨大だった体は既に五分の一にまで縮小し、最後にポンッと出てきた蜘蛛のような虫が慌てて逃走を図る。


『ふんっ』

『ピギィイイィィイ!!!!』


 もう一度腕を振るい、青い炎をその虫に纏わせた。

 仲間の中で一番目のいいガンマが、この小さな虫を見逃すわけがない。

 逃走を図った時点で勝負はついていたのだ。


 青い炎の中で暴れていたようだが、ついに魔力が底を尽きたようでコロンッと転がって灰になった。

 怖いのは見た目だけだったなと二匹は嘆息したが、ワープゲートは未だに消えていない。

 まだ戦いが終わっていない証拠だ。


『……どうするか』

『まだ出てくるかな?』

『分からん。だが、警戒はしておかなければならないな』


 ワープゲートを消す方法を、この二匹は知らない。

 そんな方法は今まで一度だって気にしたことすらなかったのだ。

 分からない以上、とりあえず自然に消えるのを待つしかないだろう。

 ここからしか敵は出てこないというのは分かっている。


 待ち伏せができるのであれば、こちらの方が幾分か有利に戦いを進められるだろう。

 先手を取れるか取れないかでは大きく変わってくるからだ。


 二匹が警戒しながら座って待っていると、パチパチと手を叩く音がワープゲートの奥から聞こえてきた。

 立ち上がって二匹は魔法を纏う。


 ワープゲートから足が出てきた。

 人間と同じ物だ。

 それから体が出てきて顔が露わになる。


 頭に二本の角。

 昔一度だけ見たことがあるその姿を見て、ガンマとシャロは睨みを利かせる。


『悪魔ぁ……!』

「ペットをそう簡単に殺してもらっちゃ困るなぁ……。まぁ増やせるからいいけども」

『てめぇが主犯か……』

「そうだよ。お前らに仕込まれた封印を解かないといけないんでね。おい、あの狐は何処だ」

『知らねぇなぁ!!』


 悪魔はエンリルと会話ができる。

 それがなぜかは分からないが、目的は理解することができた。

 あとは叩き潰すのみ。


 ガンマが凍て付きの炎を悪魔に放つ。

 しかしそれは寸前で払われて消えてしまった。


『……なに?』

「狐は?」

『知らないね!!』


 シャロが体に炎を纏って突撃する。

 炎纏(えんてん)

 これであれば敵は不用意に近距離での攻撃をすることはできない。

 もししようものなら、高火力の炎で身を焼かれることだろう。


 大きく腕を振るい、炎をぶつけるイメージで殴りつける。

 しかし、悪魔はそれを受け止めた。


「邪魔だ」


 地面から正方形の土が出現し、シャロの腹部を捉えた。

 高く飛び上がったシャロは受け身を取ることができずに地面へと体を打ち据える。


『シャロ!!』

「何か勘違いしているようだけど、俺は昔の俺じゃない。領地は広くなり、そして濃厚になり、力が付いた」

『貴様ァ……!!』

「なので……」


 ガンマが身体能力強化の魔法を使った全力の一撃を、悪魔に向ける。

 しかし、それは受け止められてしまった。


「ただの火力だけでは、俺は倒せない」

『なんっ……!?』

「で? 狐は?」

『知らねぇ!!』


 青い炎を悪魔に纏わせる。

 変わった魔法だと侮っていたらしいが、魔力が急激に失われていることに気付いてすぐにガンマを殴り飛ばす。

 その威力はすさまじく、何度か地面を跳ねてようやく勢いを失った。


『ぐぬぅ……ぐぅ!? くそ……』


 殴られた場所が酷く痛む。

 骨か内臓がやられたとみていいだろう。

 力はまだ入るが、あの一撃を受け止められるとなると勝ち筋は限られてくる。


 しかし凍て付きの炎には驚きの表情を見せた。

 恐らくあれだけは防ぐことができないのだろう。

 ガンマはそれを体に纏わせる。


『氷炎纏い……』

「チッ、それは手が出せねぇな……。じゃ、こっち」

『!?』


 倒れているシャロの方に、黒い球が射出される。

 それはマズいとガンマは一気に地面を蹴り、シャロの代わりにそれを受けた。


 ボギャッ。

 想像以上に重いボール。

 鉄、いやそれ以上の重量がある黒い球が、ガンマの脚の骨を易々と折った。


『ぐぅッ!?』


 片足を庇うようにして立つが、これでは避けることもままならない。

 もし避けることができたとしても、シャロが動けないので避けることはできないだろう。

 そんなことをしたら、オールに叱られてしまう。


 だがこの状況は絶望的だ。

 動けない仲間に折れた脚。

 機動力と火力を失ったガンマは、少し体の大きいエンリルだ。


 ここにはオールの回復領域は届いていない。

 そんなことをしていることも、ガンマは知らなかった。

 故に……今はただ守りに徹することを考えるほかない。


(やっぱり魔法、もう少し学んどくんだったな……)


 自分ができるのは、あと一つしかない。

 本気の攻撃は何度も何度も使ったことはあるが……本気の本気は一度も使ったことがなかった。

 なぜなら、地形が酷く変わってしまうからである。


『一回くらいなら……いけるかぁ……』

「?」

『身体能力強化の魔法……!』


 バヂリッ!!

 赤く濃く、そして太い稲妻がガンマの体を走り抜ける。

 折れた脚の筋肉を引き絞り、バキャッという音を立てて折れた骨を元の位置に戻した。

 激痛を伴ったが、それによってさらに力が湧く。


『凍て付きの炎……!!』


 シャロから少し離れて魔法を使う。

 青い炎がガンマを包み、腕に集中し始める。


「え、ちょっと待ってそれはヤバ──」

『一点集中!!』


 ズガンッ、シュボォアアア!!!!

 魔力の上昇値に驚いた悪魔だったが、逃げる前に仕留める。

 そんなつもりで折れていない腕を一瞬で振り下ろした。


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