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9.20.なんとか……


 三匹を回復し続けながら待っていると、ようやくワープゲートからベンツとメイラムが出てきた。

 メイラムは既に疲労している様子だが、それでも残りの三匹に解毒治療を施してくれる。

 負担をかけるなと思いながら、ベンツが連れてきたバルガンとリッツにも回復魔法を掛けた。


『ベンツ、向こうで何があったんだ。心配したんだぞ』

『仕方なかったんだ。変な黒い花があって、その根っこがバルガンとリッツの足に絡まってたの。近づくと根が襲ってくるし、花は千切っちゃいけないみたいで、メイラムが毒で花を枯らすまで何もできなかったんだ……』

『なんだその花は……』

『分からない』

『ていうか長い間向こうにいたけど大丈夫なのか?』

『僕が到着した頃にはメイラムが毒を放出させないようにしてくれてたみたいだったから、ずっと向こうで待機できたんだ』

『じゃあ体は大丈夫なんだな?』

『うん』


 それなら良かった。

 確かに見たところベンツの魔力は減っていないし、毒は吸っていなさそうだ。


 だが……一体誰がそんな危なすぎる花を本拠地の洞窟の中に?

 いや、あれは自然に発生するものだろう。

 何でもかんでも人のせいにしちゃだめだな。


 まぁこれはこいつらが目を覚ました時にでも聞けばいいか。

 脅威はなくなったし、暫く俺たちはここで待機だな。


 一息ついたところで、ヴェイルガが心配そうに声を掛けてくる。


『お、オール様は大丈夫ですか……?』

『? どうした? 俺は特になんともないが』

『あ、いえいえ、そうではなくて。回復魔法を使うと魔力総量が減ると聞いたことがあります。長い間使われていましたので、どうかなと……思いまして……』

『んーー……』


 俺の今の魔力総量を確認してみるが、減った感じは一切しない。

 しかしヴェイルガの言う通り、回復魔法は魔力総量を減少させてしまう魔法だ。

 多用は禁物だし、俺もそれを知ってこれまで使わないように使わないように、と気を付けてきた。

 思い返してみても、まだ数えるくらいしか使ったことはないはずだ。


 まぁ、俺はアルビノだし回復魔法を使わなかったとしても寿命は他の仲間たちより短いんだろうけど。

 でも今は大丈夫だな。


『今のところ減った感じはしないな。大丈夫だぞ』

『そうですか……』

『心配か?』

『はい。スルースナー殿がそうでしたので』

『あいつは戦う時に必ずといっていいほど回復魔法を使うからな……。使ってる数が違うのさ』


 安心させようとしてそう言ってみたが、ヴェイルガは未だに不安そうだ。

 自分の持ってない魔法なので、あまり強く言えないのかもしれないな。

 本当に大丈夫なんだけどね。


 ていうかリューサーが向こうを何とかしてくれるまで生き残らねばならん!

 同郷の転生者と面を合わせるのがあれで最後ってことにはしたくないからな!


『……ゴボッ……ハッ、ゲッ……』

『バルガンは喉をやられてるのか……。毒のせいで俺の回復魔法では治せそうにないな……。メイラム、何とかできるか?』

『しばし、お待ちください……。まだ、ルースの治療が……』

『急かしたな、すまん』


 魔力組織の修復と解毒治療は集中しないといけないんだったな。

 話しかけるのは良くないか。

 しばらくはメイラムに任せるしかなさそうだ。


 しっかし、回復魔法にも弱点があるとはなぁ。

 毒が回ってると回復が効きにくい。

 今回は結構ごり押しで回復させた感じがしたけど、解毒できていないので完全な回復はできなかった。


 この回復魔法は外傷にはとても有効だが、内傷には強い効果が現れないようだな。

 勉強になった。


『……オー、ル……さま……』

『! ルース! 大丈夫か!?』

『まだ喋っては、いけま……せん……。今から、魔力組織の修復を……』

『そんなこと、より……! お伝……えし、な……』

『無理するな。まだ治療は終わってないんだ』

『……ぐぐ……っ』


 俺がそう言っても、ルースは何かを伝えようと口をパクパクとさせている。

 確かに何があったのか気になるところだが、まずは助かってもらわなければならない。

 少し酷だが……。


『メイラム、魔力組織の修復を頼む』

『はい』


 激痛を伴う治療。

 だがその苦痛は短時間で消え失せるものだ。

 ルースは痛みによって足をバタバタと動かしたが、すぐに落ち着いたようで静かになる。

 しかし眠ってしまったようだ。


『眠りの毒を……入れました。これで起きる、頃には……元気になっているかと』

『そうか』


 すまんなルース。

 お前が助かってもらわなければ意味がないんだ。

 多分現状を一番よく理解しているのはこいつだろう。


 花の一番近くにいたバルガンとリッツにも話は聞きたいが、流石にこの二匹からはしばらく話を聞けないな。

 どちらも毒の発生源の間近くに居たのだ。

 それに根によって生命力を吸われている。

 しばらくは安静にさせておかなければ……。


『オール兄ちゃん……!』


 ほっとしたのも束の間、今度はバッシュが息も絶え絶えに訴えかけてくる。


『バッシュ。お前も寝てろ』

『ルース、姉さん……が、見てた……!』

『……なにを?』


 話ができるくらいに回復したようだ。

 だったら少しくらいは聞いてやってもいいだろう。


 しかし、次にバッシュの口から出た言葉は、耳を疑うものだった。


『ダーク、エルフ……!』


 俺を含めた四匹毛が、若干逆立った。

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