表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
331/370

9.11.お試し訪問


 子供たちに魔法の使い方を簡単に教えた後は、俺は後ろに下がって練習風景を見るだけになる。

 一回教えた後は、できるだけ自分で工夫しながら特訓するといいからね。

 何でも自分で気付いた方が理解は深くなる。


 今回一番厄介だったのはイリスだったなぁ。

 水魔法だけど魔力総量が少ないからほとんど何もできなかった。

 壁を作ることも難しんじゃないかな。


 でも罠っていうアイデアがすぐに出てきたので助かったわ。

 今はその練習ばかりをしているな。

 素晴らしい罠師になること間違いなしだね、うん。


『オール兄ちゃんやっぱ教えるの上手いね。さすが全属性持ち』

『そうかー? まぁそれなりにいいアイデアは出せたかなーとは思うけどね。でもケルマにはなにも教えてないしなー』

『暗黒魔法とかどんな魔法か知ってないと教えられないよ。気付けたのもすごいと思うけど』

『褒めても何も出ないぞー』

『別に求めてないよ?』


 いやそこまでバッサリ言わなくても。

 シャロは相変わらず真面目だなぁ。

 まぁそこがいいんだろうけどね。


 そういえばメイラムは今どこに居るんだろう。

 洞窟にいなかったしなぁ。

 あいつの子供も見たいぞ。


 そんなことを考えていると、シャロが声をかけてきた。


『これからどうするの?』

『これから、というと?』

『人間たちと俺たちのことだよ。一段落付いたっていっても、まだやらなきゃいけないことあるよね』

『俺たちがやることはほとんど終わったんだ。あとはこれからの防衛……とかかなぁ。まぁやることがないわけではない』

『例えば?』

『状況把握はしておかないとな。今人間たちがどういう風に動いているのかは知っておかなければならない。敵が来たら防衛しないといけないし……あとは……あんまりないかな』

『こっちにいていいの?』

『俺だって少しくらい休みたいんだよー察せよー』

『はははは』


 毎日毎日戦争の段取りとか、人間の動きの把握とか、監視とかいろいろやってたんですから。

 そりゃ疲れますよー。

 俺だけハードスケジュールなんですもん。

 傍から見たらなんもしてないように見えただろうけどね。

 しっかり土狼とかで監視したりしていたわけですよ。


 そんでもってあのわんぱく兄弟……シグマとラムダ。

 一体誰に似たんだか。

 ちょっと元気がありすぎてライドル領の子供を何回か怪我させちゃったんだよな。

 その時は俺が治したけども。


 今はベンツの子供たちがいるから安心だけどねー。

 あいつらも先輩風を吹かせたい時期っぽいし、新しく来たセダンとジムニーとマーチに色々教えてる。

 しばらくは大丈夫かな。


 ま、今は本当に俺が抱えている仕事はなくなったというわけだ。

 人間の動き次第で増えるかもしれないけどね。

 交渉が上手くいっていますよーに、っと。


『今、向こうは安全なんだね』

『そりゃもう安全も安全さ。テクシオ王国兵は今ライドル領にはいないけど、兵士たちは残っているし、ベンツもガンマも居るんだ。レイやウェイス、ドロもいるし戦力としては申し分ない。ヴェイルガのレーダーで知覚できない場所も把握できる。多分ここより安全だな』

『じゃあさ、子供たちを連れていかない?』

『……おぉ?』


 シャロがそんなことを言いだすとはな……。

 だがそれはいい傾向だし、子供たちのためにもなる話だ。


 まだこの小さな棲み処しか知らない子供たちに、広い世界を見せるいい機会だしな。

 俺からは言い出せなかったことだが、シャロが言うのであればこいつの子供たちは連れていくことができるだろう。

 あとはお母さん狼にも聞かなければならないが……。


『大丈夫なのか?』

『何があってもオール兄ちゃんが守ってくれそうだし、子供たちにもいろんな経験をさせておかないとね』

『……よし、じゃあお試し訪問って形でやってみるか。ずっとその場に滞在するかは子供たちに決めてもらおう』

『うん』


 ついに……ついにここまで来ましたか……!

 子供たちの未来を安定させるためには人間との接触は必要不可欠な要素だった。

 だがそれを仲間に強要することは俺にはできない。

 だからずっと待ってた……。

 シャロみたいな奴がこう言うのを……!


 いやぁ、これはマジで長かったっすね。

 んじゃ俺も一肌脱がなければなりませんなぁ!


『皆にこの事を話してみて、問題ないようであれば親同伴で連れて行こう。向こうにも事前に話は通しておくよ』

『その間俺は何をすればいいかな?』

『そうだなー。いや特にねぇわ』

『えー……』

『でも向こうに行った時、子供たちをまとめてくれると嬉しいな』

『あ、そうだね。分かった』


 まぁシャロの子供たちなら大丈夫だろう。

 問題はラインの子供だよ……。

 あいつらめっちゃ走るからな……。

 ほんと首輪でもつけておいた方が良いんじゃないだろうか。


 あとはデルタとメイラムにも話を通しておかないとね。

 いやー、これは楽しみな展開になってきましたなぁ!

 明日の朝向こうに連絡を入れるとするか。


 ……あれ?

 俺の仕事……増えてね……?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ