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9.8.元気な子供たち


『よー、ただいまー』

『オール様。お帰りなさい』

『みんな元気そうだな』


 匂いで俺が帰ってきたことが分かっていたのか、洞窟の中で休んでいた仲間たちはさほど驚かなかった。

 それはそれで少し寂しい。

 でもまぁいつも通りといえばそれまでなんだけどね。


 どうやらここでは親たちが集まっているらしく、子供たちはいない。

 外で遊んでるみたいだな。

 でも親たちは何か話していたみたいだ。

 座っている位置からなんとなく察することができた。


『なんだなんだ? 何を話していたんだ?』

『子育てのことについて、ですかね』

『アリアは子供の世話得意そうだけどな』

『だから、皆に教えているんです』

『ああー、なるほどな』


 アリアを筆頭としたお母さん狼たちが、子育てについて話していたらしい。

 確かにこいつからならいい話が聞けそうだもんな。

 でも子供たちも大きくなった。

 今更必要なのだろうか?


『『『『孫のために必要な知識です!!』』』』

『おっ……!? ……おう……』


 す、すいませんでした……。

 うん、そ、そうだよな。

 確かに子供たちのこともあるからね。


 子供によって性格も違うだろうし、それらを共有できるこの会議はお母さん狼にとって大切な物なんだな。

 はい、分かりましたすいません……。


 いやそんな怒らなくてもいいじゃんっ!!


『まぁみんな元気そうで何よりだ』

『オール様はいつまでこちらに?』

『そうだなー。向こうも落ち着いたから、数日はこっちにいることにするよ』


 なんだかんだいって、ここは結構落ち着く場所だからな。

 魔物は少ないけど、獲物はしっかりいる。

 第二拠点ではヒラやリッツが獲物を狩っているらしいし、食料事情には困らないはずだ。


 つっても俺、ここでやれることとかあんまりないんですけどね。

 強いて言うなら子供の世話くらいかな。

 それでお母さん狼が助かるのであれば、いいけどね。


『あっ、そういえば三狐忘れてきたな……』

『ああ、それかー。なんか足りないなーって思ってたんだよ』


 子供たちに混じって遊ばせてやってたからなー。

 俺の魔力が入ってる土狼を後で向かわせておくか。

 しばらくは大丈夫だろうけど、長く供給がないと大変なことになりそうだからね。


 まぁでも、あいつらは置いてきて正解だったかな。

 増えた子供たちにまた遊ばれそうだし。

 あの事件のことは子供たちに話しているんだろうか?


『その辺大丈夫か?』

『ええ、問題ありませんよ。まぁ一度も三狐さんを見たことがないので、あまり実感は湧いてないみたいですか』

『それならそれで……いいのかぁ?』

『いいんじゃないですか?』

『そんなもんかー』


 アリアが言うんだからいいよね、うん。

 ていうか忘れないうちにさっさと作って向かわせておこう。


『土狼』


 うーん、やっぱりこいつ優秀だな。

 場所を指定しておけば勝手に向かってくれるんだもん。

 さ、やることも終わったし、暫くはここでゆっくりしますか。


『ん? あれ、バルガンは何処だ?』

『今は子供たちに訓練をさせています。川を降りていけばいると思いますよ』

『ああ、あの広い場所か』


 ほー、バルガンが魔法の訓練をしているのか。

 それは普通に気になるので行ってみることにするかね。

 子供たちにも会いたいし。


『じゃあそっちに行ってみるよ』

『はい。是非子供たちに魔法を教えてあげてください』

『そのつもりだよ』


 お母さん狼に見送られて、俺は洞窟を出た。

 シャロが後ろから付いてくる。

 どうやらまだ案内をしてくれるようだ。

 ありがたいね。


 とはいっても、訓練場所は知っている。

 案内されなくても大丈夫だけど、まぁ善意でやってくれてるから任せようかね。


 まだ会ってない子供たちは、メイラムの子供と、レインの子供か。

 そいつらが今魔法を練習しているのかな。


『んー……』

『お? どうしたシャロ』

『いや、バルガンさん……なんだけどね』

『うん』

『なんで闇魔法しか適性ないのに、いろんな魔法の使い方知ってるのかなって。炎魔法なんて俺より詳しいし、個々の魔力総量を見てできる技とかも教えてくれるんだ』


 バルガン、そんな能力あったっけか?

 暗黒魔法しか使えないはずだけどな。

 いや、闇魔法はそういうのもあるのかも……?


 ん? てことは……。


『お前たち、もしかしてバルガンのことあんまり知らないのか』

『うん』

『そうだったか』


 シャロたちはバルガンが元々いた群れにいたんだけどな。

 バルガンのことはあんまり知らないのか。

 まぁ……あいつ寄生されてたしなー……。

 そのリーダーもだったけど。


『……当時のリーダーの事覚えてないか? 俺の父さんがリーダーになる前の話だけど』

『うーん、あのリーダーはとにかく怖かったって印象しかないなぁ。見た目も怖かったし、よく俺の父さんと母さんが守ってくれてたよ』

『とんでもない野郎だな……』

『まぁね。だから父さんは俺たちを連れまわさなかったんだ。ずっと同じ洞窟に母さんと入ってた』

『てことは、当時のリーダーが倒されるまでは、他の仲間との面識もあんまりなかったのか』

『そうなるねー。ま、俺も小さかったから覚えてないことだらけだけどね』


 シャロは声のトーンを一つ上げ、楽しそうにして話を終わらせた。

 こいつとしても、あんまり思い出したくない話なんだろうな。

 今まで一回もこの話題が出てこなかったことから、それが伺える。


 てなると掘り返すのは野暮だな。

 でもバルガンのことについては俺も気になるから、話をしてみたい。

 とりあえず会いに行きますかね。


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