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8.50.終戦


 あれから数日が経った。

 戦場に出ていた彼らもライドル領に帰ってきており、さらにはテクシオ王国の兵士たちがここに滞在している。

 だがテクシオ王国の兵士は二百人だけがこちらにきている。

 向こうは魔物で溢れかえっているので、やはり兵士は少なからず戻したかったのだろう。


 その辺は俺が帰った後にヴァロッドとファイアスが話をして決めたらしい。

 まぁ向こうの状況は知っているし、ヴァロッドとしても頼りすぎるのは不本意なのだろう。


 そして現在は、ヴァロッドとファイアスが同盟を正式に組んで、戦争に勝利したのでその賠償などを請求しているようだ。

 まぁアストロア王国もサニア王国も痛い目に合っているし、もう一回攻めようだなんて思わないだろう。

 もし来たとしても全部跳ね返すがな。


 最悪攻めることになるかもだけど、その時はどうしようか。

 さすがに城壁を壊すのは面倒だし、土魔法使って道を開けてもらうとしますかね。

 まぁそうなった場合は、だけどね。


 戦争のあとのことなんて俺は本気で分からないので、この辺はマジで任せるしかない。

 話し合いの場とかどうやって設けるんだろう。

 バチバチだろうから、もし場所を設けたとしてもそこに行くの結構勇気いるよなぁ。


 まぁガルザもハバルと一緒に話し合いに行くらしいし、あいつがいれば奇襲が来たとしても返り討ちにはできるだろう。

 その辺は安心しておくか。


『くぴー』

『すぴー』

『俺が座ると動けなくなるんだよなぁ~』


 シグマとラムダが、俺の腕を枕にして爆睡している。

 腹を出して寝るんじゃないよ。

 どれだけ安心してるの。

 とりあえず尻尾で隠しとこ。


『『ふぇっくし!!』』

『あっ』


 いや起きねぇのかよ。

 くしゃみしても寝続けるって君たちどうなってるんだい。

 可愛いかよ。


『兄ちゃーん』

『お、ベンツお帰り。どうだった?』

『んー、僕は人間たちの話を完璧に理解しているわけじゃないけど、ヴァロッドの話を聞いてみるに今からどこかに行くみたいだよ』

『そうなのか。場所は?』

『あすなんとか』

『アストロア王国か……』


 しょっぱなそっちに向かうのか。

 てことはサニア王国の方はテクシオ王国が対応してくれるのかな?

 いやでも、戦ったのはこのライドル領だし、代理として話を付けてもいいものなのか?

 うん、分からんね。

 まぁ何か考えがあるんでしょう。


 でも確かヴァロッドってアストロア王国で名を馳せた冒険者で、その功績が認められて領主になったんだよな。

 う~ん、複雑な感じだなぁ。

 自分たちが一つの領地を任せた人間に、まさか反旗を翻されるとは思ってもみなかっただろう。

 いや、謀反って大体そんな感じか。


『また難しいこと考えてるね?』

『知らないことは多いからな。思案しても意味ないとは分かっていても、考えちゃうんだよなぁ』

『分からないでもないけどね』

『で? お前はまだ簡易血印魔法を解除しないのか?』

『まぁね。人間を知るには言葉を覚えなきゃ』

『……ここに居る人間くらい、信じられるようになったか?』

『そうだね。ヴァロッドとベリルはその中でも一番信じられるかもね』


 ベンツが隣に座った。

 俺が直した脚を見てみるが、後遺症もなく綺麗に治っている。


『かも?』

『……まだ断言はできな……いや、これはしたくないだけかなぁ』

『ほう?』

『からかわないでよ。僕にもいろいろあるんだから』

『まぁセレナのことがあるからな。お前はこんなに悩んでいるのにセレナときたら……。親の心子知らずとはよく言ったものだ』


 セレナは相変わらずベリルや子供たちと遊んでいる。

 本当にあいつはこのままベリルとずっといるだろうな。

 それはそれでいいんだけど。


 そこでベリルと目が合った。

 大きく手を振ったのを見たセレナが、ぴょんぴょんと跳ねて吠えている。


『……こうしてみれば、普通の家族みたいだな』

『僕たちと人間が?』

『ああ。種族は違っても、家族にはなれる。……可笑しいとおもうか?』

『昔の僕なら、兄ちゃんを殴ってたかもね。でもまぁ……今なら分かるよ』

『ここまで長かったな』

『うん』


 まだ完全に終わったわけではない。

 なんなら始まったばかりだ。

 だが、俺たちはこの大きな一歩をしっかりと踏みしめ、これからのことに目を向けていかなければならないだろう。


 何が起こっても、俺たちはこの人間たちとの共存を望む。

 仲間への理解も得た。

 人間たちの理解も得た。

 あとは時間が、これを日常にしてくれるだろう。

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