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8.44.共闘


『ベンツ!? 大丈夫か!?』

『早く治して!』

『よ、よし任せろ!』


 オールに回復魔法を使ってもらって、傷を治してもらう。

 瞬く間に元通りになった……と思ったところで、違和感があった。


『……あれ?』

『え、なんかあったか?』

『……めちゃくちゃ体が軽いんだけど……』

『ん? へ? いやどうでもいいだろ! そっち終わったか!?』

『もうちょい! 行ってくる!』

『もうちょい……?』


 まだ倒し切っていないのにここに戻ってきたことに、少し首を傾げているようだったが今は説明している時間がない。

 雷魔法を使って戻ってみれば、ヴァロッドは未だにジェイルドと攻防戦を繰り広げていた。


「……!? なに!?」

『はああ!!』

「げぇっは!!」


 全速力、それに加えて何故か軽くなった体での攻撃は相当な威力があったらしく、ジェイルドは回避行動をとることすらできなかったらしい。

 ようやく連撃が終わって、ヴァロッドは盾を地面に刺して息を整えている。

 離れていたのは数分だったのだが、それだけでも相当な激戦が繰り広げられていたらしい。


『大丈夫かい?』

「ぜぇーっ、はぁーぁ……遅いぞ……」


 大きな傷はない。

 ヴァロッドは戦いの中で昔の経験を思い出し、最強と謳われる男に対して善戦していた。

 だがまだ油断してはいけない。

 もう少しで倒せる相手だとしても、ジェイルドは回復魔法のような物を持っているのだ。


『ヴァロッド。あいつ回復魔法を持ってる』

「なに?」

『致命傷を与えたと思ったら急に眠ったんだ。そしたら体が治ってた』

「となると……すでに回復済みか……」


 彼を吹き飛ばした方向を見てみると、ゆらゆらとした足取りでこちらに歩いてきているジェイルドの姿が見て取れた。

 綺麗な一撃を与えることはできたが、これではこちらに勝ち目がない。


 しかし、状況的に有利なのはこちらだ。

 ベンツは回復し、さらに少し強化されて帰ってきた。

 ヴァロッドのディフェンダーガーディアンも残っているので、長期戦もこなすことができるだろう。


「黒エンリル。お前の適性魔法は?」

『……身体能力強化の魔法と雷魔法』

「俺は光魔法だけだ。お前が敵を吹き飛ばしたら追撃するんだ。打撃での攻撃は相手に回復される。斬撃だ」

『……人間の知識は助かるよ』


 ダンッと地面を蹴ったベンツは、再びジェイルドに突撃する。

 今度は奇襲ではないので回避することはできたようだが、攻撃には転じられなかったらしい。


「速くなってねぇか!?」


 連続攻撃がジェイルドとベンツで繰り広げられる。

 ベンツにはディフェンダーガーディアンがいるので雷魔法は効かず、何なら物理攻撃もそれで弾いてしまうことができた。

 ジェイルドの動きが見えるので、ディフェンダーガーディアンもそれに合わせるようにして動くのだ。


「ぐぬぅ……!!」

『はぁあ!』


 纏雷、雷円陣、雷弾、雷狼。

 様々な雷魔法を使ってジェイルドを追い込んでいく。

 あともう少しで勝負が決まる。

 それはベンツもヴァロッドも、さらにはジェイルドも分かっていることだ。


 ジェイルドはマズいマズいと心の中で叫び続けるが、増援は来ない。


「あの二人は何をやっていやがる!! くそああああ!!」

『うるさい!!!!』


 ジェイルドが両腕を振り上げて剣を掲げる。

 雷が剣に溜まっていくが、その瞬間……。

 ベンツが腹部を切り裂いた。


「──ッ!!」

『お返しだ』


 雷弾をジェイルドの上と下に作り出す。

 発動させれば雷弾同士は雷の糸で結ばれ、繋がる。

 その通り道にいるジェイルドは雷撃を空中でもろに喰らってしまった。


「ガガ──ッ──バガガ──アバ──ッ」


 落下場所にベンツは足を置き、体の中にある魔力のほとんどを使って地雷電を設置した。

 すぐに空気を吸って魔力を作り出し、ヴァロッドを咥えてその場から離脱する。

 ヴァロッドは急に何をするんだと驚いたようだったが、声をかける前に後方から爆撃音が轟いてベンツの行動を理解した。


 雷弾が爆発したのだ。

 あれであれば、体が四散してしまうだろう。

 意識がなければ回復はできないだろうし、これで勝負はついたと言ってもいい。

 後方から匂ってくる血の匂いが、ベンツに勝利を確信させたのだった。


 ガンッ!!


『グァッ!?』

「おおおおおお!?」


 ベンツは何かにぶつかり、ヴァロッドは少し遠くに投げ飛ばされた。

 顔を振るって何が起きたのかを確認してみるが、そこには何もない。

 しかし透明な何かがベンツを後方へと押しやっていた。


『な、なんだこれ!?』

「黒エンリル! どうした!」

『見えない壁がある!』


 どんどん収縮している、ということが分かる。

 その先には何がいるのだろうかと見てみれば、そこではオールがレイとウェイスと一緒に戦っていた。

 レイが魔法を使う度、ウェイスが魔法を使う度にそれは収縮している。


 この中にある魔素を使うと、透明な壁が収縮するものなのだと、ベンツはすぐに理解した。


『ヴァロッド! 先に行って』

「お前は!?」

『大丈夫!』


 ベンツはこの事を伝えに行く為、三匹の元へと急行した。

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