8.32.使えそうな魔法
んじゃ次は何を試してみようかな。
できれば仲間たちに被害が出なさそうな魔法がいいんだけど……。
『雷魔法使ってみるか』
始めから全力で魔力を込めるんじゃなくて、少しずつ増やしていく感じにするか。
まずはこれだよね。
『雷狼』
バヂヂッと音を立てながら、俺と同じ大きさの狼が隣に出現した。
雷で形作られているので、常時弾けながら電気の糸を地面や空中に伸ばしている。
うん、やっぱり手加減して作ったらそれなりに使える魔法にはなるみたいだな。
いやそうじゃなきゃ困るんだけどさ。
とりあえず動かしてみるか。
雷狼を遠くへと向かわせてみる。
こいつと俺には一本の雷で作られた糸が繋がっており、魔力を常に流し込むことによって雷狼の形を保ち続けている状態だ。
昔は自分から半径十メートルしか動かせなかったのだが、今回は何処までも遠くへと行かせることができた。
おお、これは結構いいんじゃないか?
使い道あんまりなさそうだけど。
確か二体まで同時に作れたよな。
んじゃ今度はもう少し魔力を込めて作ってみるか。
ヂヂヂッ!!
少し魔力を増やして雷狼を作ってみると、同じ大きさの雷狼が姿を現した。
しかしこちらの方が雷を強く纏っているのか、色が明るい。
時折伸びる雷の糸が地面に触れると、そこが小爆発を起こした。
『あかん』
すぐに雷の糸を切り離して、新たに作った雷狼を消滅させる。
駄目じゃんこれ。
普通に味方にダメージ入っちゃうやつ。
『あ、そうだ。身体能力強化の魔法を全力でやるとどうなるんだろう』
『えっ?』
『いや、オール様。それは試さなくても分かることでは……』
『ガンマ以上になれるかな?』
『ガンマ様は特化されていますからね。多分オール様でもガンマ様には及ばないかと……』
んー、そう言われると試してみたくなるんですよね!
とりあえず体の感覚を確かめてみるだけにしてみるか。
赤い稲妻を体に纏わせる。
瞬時に体が軽くなり、力が腹の底から湧き上がってくる感覚がした。
少し地面に爪を立ててみると、何の抵抗もなくすんなりと地面が抉られる。
軽く腕を振るってみれば爆風は草原を突っ走った。
『あかん』
『ガンマ様はもっとすごいですよね?』
『まぁ……地面をあんだけぶっ壊せるだけの力なんて想像もつかないしな。今の身体能力強化の魔法でもそこまでのビジョンは見えなかった』
やっぱり特化している奴らには勝てないか。
毒魔法はメイラムにしか殆ど操れないしな。
俺は毒を作り出す程度のことしかできない。
まぁこの辺は長年の経験というか熟練度とかそういう話になってくるんだろうな。
つっても俺の場合火力がなぁ……。
はい、次の技能試してみましょうかね。
今のところ使えるのが水狼しかないんだよな。
光魔法とかだったら使えるか……?
でもあれ非殺傷の魔法だから、今回の戦いではあんまり役に立たないかもしれないんだよね。
闇魔法は……まぁ深淵魔法が使えれば問題ないか。
今までは一匹を対象に使ってたから、範囲指定はしてみたことないな。
それを試してみるとしようか。
『深淵魔法』
範囲を空間魔法でできるだけ広く指定し、重力を付与する。
ずんっ、という音がしたことを確認すると、周囲の草が地面にへばりついていた。
『お、ようやくまともなのがきたな』
『……オール様、ちょっとあの岩を見てください』
『え?』
冥にそう言われて岩を見てみると、ズズズズズズッと地面にどんどんめり込んでいるのが確認できた。
草は軽いのでそういったことはないようだったが、重い物になるとああなってしまうらしい。
うん、仲間潰れちゃう封印。
初手では使えるだろうけど、混戦では使えないなぁ……。
『駄目だぁ……。使えそうなのがない……』
『……あっ。オール様! 土魔法と闇魔法の複合魔法、人形遊びはいかがですか?』
『デルタの得意な複合魔法か』
土で作った小さい鼠を俺に向かわせてきた時を思い出す。
確かにあれだったら好きな大きさの仲間を作れるし、魔力の込め方も自分で決めればいい。
これなら問題はなさそうだな。
『あとあと、暗黒魔法で接近戦のカバーができるかもしれませんよ』
『バルガンの変毛とかそういうやつだな』
あれは習得に苦労したな……。
少しミスっただけで俺まりもになっちゃうんだもん。
今はそんなことないけどね。
『……やっぱり俺の戦い方は、自分で戦わずに魔法で作り出した仲間を使って戦ってもらうのが一番いいのかな?』
『『『自然を守るためにそちらでお願いします』』』
『分かったよ……』
てなるとメインは人形遊びと水狼の王だな。
手加減すれば氷魔法とかも使えるし、その辺は臨機応変にいこう。
はい、じゃあ今回の稽古終わりっ。
これ以上やっても、危なすぎるってことを再確認するだけにしかならないだろうからね……。
んじゃ帰りますか。




