8.31.最終調整
戦うにあたって自分の力を把握しておくのは非常に重要なことだ。
……ってよく言うよね。
俺全然自分の力を把握できてないの。
いやだって、今までほとんど戦うことなかったし、なんなら仲間たちに任せることを多かったし。
思いっきり戦ったのって魔物の群れがなだれ込んで来た時くらいじゃないの?
あれも一部の力しか使ってないから本気とはいかないだろうけど……。
ということでですね!
三狐に手伝ってもらって色々試していこうと思いますよ!
『ということでよろしく!』
『結界が壊れる予感しかしません』
今回は界に頑張ってもらう感じですね。
空間魔法を使って結界を張ってもらい、それに思いっきり魔法を撃ち込んでいく。
場所はライドル領から少し離れた平原です。
ここであれば被害は出ないでしょう。
『んじゃまずは炎魔法な』
『強度は最大にしています。これ以上の結界は作れません』
『よっしゃ』
んじゃままずは初球魔法的なやつ。
『火球』
魔力を全力で込めて火球を作り出す。
自分の手くらいの大きさだ。
普通の物に比べて大きすぎる気もするが、まぁこれくらいであれば使っても大丈夫だろう。
あーよかっ──。
ボッと出現したそれは二秒後に三十倍にデカくなった。
『『『オール様スォオオオオップ!!!!』』』
『分かっとるわー!!!!』
これあかんやつ!!!!
絶対人に向けて使っちゃダメなタイプの魔法だよね!!!!
水魔法!!!!
いや待てそれはそれでマズいか!
水蒸気爆発とかされると更に洒落にならん!!
こ、こここここれどうしようかな!?
そうだ空間魔法だ!
このくそデカい火球を入れられるくらいデカい結界を作って、中の酸素を全部消す!
燃えてるから勝手に消えてくれるはずだ!
そーらよっ!!
正方形の結界を作り出し、火球を閉じ込める。
しばらくは燃えていたが次第に火が小さくなり、最後にはシュボュと跡形もなく消え去ってしまった。
『び、びっくりした……』
『あれじゃ僕の結界溶けちゃいます』
『うそ……』
駄目じゃねぇか。
えー、これ大丈夫か?
火力とんでもなさすぎて味方に被害とかでちゃったりしない?
それだけが心配になってきたんだけど……。
いや、今までも確かに魔法は使ってきましたよ?
でもここまで本気で魔力込めたことがない。
これ風刃とかもやばいのでは?
空に向かってほいっ。
雲が割れた。
『おやめなすって?』
前よりヤバくなっとる!!
昔は雲を切り裂く感じだったのに今は霧散しとる!!
おいどうなっちまったんだ俺の体は!!
『三狐』
『『『な、なんでしょう……』』』
『俺戦ってもいい?』
『『『絶対にダメです!!』』』
ですよねー。
いやーでもこれどうしよう。
あ、一番大切なやつは試しておかないとな!
『水狼の王、試してもいいか?』
『初めて見ますけど、それって任意で解除できるんですか?』
『できる筈だぞ。多分』
『『『多分』』』
ど、どうだったっけな……。
でも魔力吸われすぎてすぐにやめた時があったはずだから、大丈夫だとは思う。
昔のことすぎて覚えてねぇよ。
まぁ使っちまえ。
『水狼の王』
今回も魔力を思いっきり込める。
すると水で作られた一回り大きな狼が出現した。
色は水色だが青白く光り輝いており、非常に目立つ。
魔力が渦巻いているのか、半透明の体の中では勢いの良い水流が発生していた。
俺より少しだけ大きな水狼だな。
でも魔力消費はほぼなし。
今使った魔力も作り出してしまったので既にプラマイゼロ。
昔と同じ様にどんどん魔力を吸われている感じはするのだが、減っているという感覚がまるでない。
なんか齧られてる感じ?
水狼の王が突然動き出し、尻尾を地面に何度か叩きつける。
その衝撃で尻尾から水飛沫が上がると、それから小さな水狼が出現した。
大きさは……普通のエンリルくらいだ。
『え?』
『『『オール様? これってまさか』』』
『ああ……どうやらこいつは水狼を作り出せてしまうらしい。魔力が続く限り』
『『『無敵では?』』』
『あと破裂能力もあるなこれ』
『『『害悪では?』』』
いや俺もこうなるとは思ってなかったんだって。
でも水狼は火力じゃなくて能力が大幅に強化されるだけなのね。
破裂の威力はどれくらいあるか分からないけど……。
向こうには一角狼たちが向かうはずだから、こいつに先行させて周囲を水浸しにしてもらってから突撃してもらえば、いい感じで敵を殲滅できるんじゃないかな。
動きを制限するためにガンマに思いっきり地面を殴ってもらえば、あの時と同じことができるかも。
あいつの炎魔法……なんかおかしいしな。
魔力を吸う炎魔法とか恐ろしすぎるわ。
とりあえず水狼の能力は分かった……。
これだけは唯一まともに使えそうだな。
でもあと一個はしっかり試しておかないと。
『土狼使っていい?』
『いや、それは……。この平原全部飲み込むかもしれませんよ?』
『ちっちゃいのなら大丈夫かな』
『それで威力は変わるんですか?』
『試したことがないから分からん』
『『『んー……』』』
三狐が背中の上で首を傾げて悩んでいる。
魔法のプロフェッショナルのこいつらでも、この土狼は危険でしかないようだ。
だったら名残惜しいけどやめておきますかねぇ……。
まぁ遠吠えさせなければ普通に使える優秀な遠隔型狼だし、別にいっか。
『んじゃ他のも試してみるかぁ~』
『『『付き合うしかなさそうですね……』』』
『あ、危なそうだったら止めるから……』
『『『お願いしますね……』』』
んー、俺が本気で戦う時って、あるんでしょうかねぇー。




