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8.29.動きだした兵士


『オール様』

『……』

『……オール様ぁー』

『んっ?』


 ゆったりとした口調がやけに耳に付いた。

 なんだと思って目を開けてみると、そこにはメイラムが俺の足をツンツンと突いている。


 あれ、どうしたんだろう。


『なんだ?』

『人間が、動き出した……ようです。ガルザが……帰ってきて、報告してくれました……』

『アストロア王国の方面か』

『はい』


 ようやく動き出したのか。

 だったら俺たちも動かないといけないな。


 匂いを辿って仲間たちの位置を確認する。

 ほとんどの仲間はライドル領から出ていないようで、領民たちの側にいたり、各々がしたいことを好きにしているらしい。


 うん、いつも通りといえばいつも通りだな。


『敵はどれくらいでここに来る?』

『半月、と言っていましたね……』

『大体十五日か。この世界の一ヵ月がどれくらいかは知らんけども』


 ライドル領は戦う準備ができている。

 狼たちも配置させなければならないが、それはまだ後でもいいだろう。


 しかしアストロア王国が動き出したということであれば、サニア王国からも兵士が進軍してきているはずだ。

 あっちには今ベンツがいるが……そこまではまだ辿り着かないだろう。

 だけど俺も向こうに行っておいた方がいいな。

 留守番はメイラムとラインに任せる予定だし、問題はないだろう。

 こいつらなら普通に戦えるだけの力を持っているしな。

 領民を守りながらでも余裕で戦えるだろう。


 となると人間たちの動きを把握したいところだな。

 サニア王国方面へ行く兵士は誰だ?

 全部なのかな?


『その辺、メイラムは何か聞いてるか?』

『いえ』

『まぁそりゃそうか。ガルザは今何処にいる?』

『戦える人間が集まる……場所ですね』

『ギルドかな』


 んじゃそっちに向かってみるとしますか。

 とはいってもすぐ近くなんだけどね。


 俺がそっちへと向かっていると、すぐに誰かが走ってきた。

 こいつは確か……。


「フェンリル。ヴァロッド様が呼んでいる」

『ハバルか。なんでガルザが来なかったんだろう。まぁいいか』


 呼んでいるということであれば好都合だ。

 ハバルの案内でギルドへと向かうことにする。


 近づいて分かったのだが、どうやら少しざわついている様だ。

 まぁアストロア王国が攻めてきているのだから、騒がしくなるのも当然か。

 俺は体がデカすぎるので中には入れない。

 なのでここから探してみるが……。

 さて、ヴァロッドは何処だ?


「ガルザ、どこだ」

『ここだここ。ったく、変なことをさせるんじゃない』

「大事なことなんだって……」

『ガルザお前何してんの』

『リーダー……いやこれは……』


 ガルザがなんか頭に乗っけとる。

 何その水晶みたいなやつ。

 てかよく頭に乗っけていられんなぁ?


『俺もよく分からないんです。帰ってきたらこれを頭の上に乗っけられました』

『んじゃそれが何かハバルに聞いてくれ』

『はい。ハバル、これは何だ?』

「レンさんが作った魔道具。お前、視線が付いて回るって言ってただろう? 多分それは監視されてる。だから遠隔で操っているであろう敵の魔力を辿って見つけるのさ」

『もっといい風にはならなかったのか』

「俺に言われてもな……」


 あー、つまり逆探知ってことか。

 中々面白い魔道具もあるんだなぁ。

 さすが特級魔術師ですねぇ。


 これをしてたからハバルが俺のところに来たわけね。

 なるほど。

 で、その成果はあったのか?


「……何も変わらんな……」

『なんだ? どういうことだ?』

「いや、魔力が辿れない……みたいだ。あとでレンさんの所にいって話をしてみるよ」


 成果はなかったらしいな。

 ……これは俺が近づいてしまったからだろうか?

 なんか俺の魔力に負けて解除されるみたいなこと三狐が言ってたもんな。

 ……まぁいっか。


 で、ヴァロッドは何処よ。

 早く話を済ませたいんですが。

 ……これはあいつが来る前にハバルに聞いてもいいか。


『ガルザ、通訳を頼む。ハバルに分かる範囲で人間たちの予定を聞いてくれ』

『分かりました』


 ガルザはすぐに通訳をしてくれた。

 少し考えこんだあと、ハバルは予定を教えてくれる。


「俺たち冒険者のことだけしか分からないが……。俺らはサニア王国方面へと向かう予定だ。アストロア王国の方面はフェンリルとエンリルたちに任せるんじゃないか?」

『それならそれで有難いな。足並みを揃える必要がなくなる。サニア王国方面ではどう行動する予定なんだ?』

「ヴァロッド様が指揮を執る。だが戦うのはエンリルたちになるかもしれん……。向こうは連合軍だ。正面から戦って勝てる相手ではないだろうからな」

『んじゃもう戦争は俺たちに任せてもらおうか。そっちの方がいい』

「……え?」


 こいつらは後ろから付いてきてくれるだけで十分だ。

 俺たちが敵を倒すところさえ見てくれれば、それで問題ないだろう。

 アストロア王国方面へは兵力を出さないらしいし、それこそ俺たちの独壇場になる。


 だったらもうやることは一つでしょ。


『よし! アストロア王国を先にぶっ潰すぞ!』

『えっ? ……リーダー? それはどういうことですか?』

『だってアストロア王国にはライドル領の兵士誰も行かないんだろう? だったら戦うタイミングは俺たちで決めていいってことだ』

『あ、はぁ。まぁ確かにそうですが……』

『それに向こうの戦いも見てみたいしな! アストロア王国倒してからサニア王国方面に行っても余裕で間に合うっぽいし』


 うん、これで十分なんじゃない?

 向かわせる戦力は多い方がいいし、各個撃破ができるなら尚のことよ。

 到着に時間が掛かるということは、連絡するのにも時間はかかる。

 一方がやられていたとしても、もう一方はそれを知らないから絶対に攻めてくるはずだ。


 連絡手段があんまりない世界で良かったな。

 よっしゃ、じゃあヴァロッドにこれを提案してさっさと戦争終わらせに行きますか!

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