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8.17.狼たちの会議


 日は傾き、日向ぼっこもできない時間となってきた。

 よくそこまで眠り続けていられるなと思ったが、そもそも狼たちは夜行性だしね。

 まぁ一日起きていても問題はないんだけども。


 ということで全員が起床したので、早速話し合いを始めていきたい。

 まぁあくまでも予定ね。

 その時になったら状況も変わるだろうし、その辺は臨機応変に行きましょう。


『で? 俺たちはそれまで何をするんだ?』

『ガンマ……。それはもう少し後で話すんだよ。今は人間が攻めてきたときのことを決めるの』

『ああ、そうか』


 ガンマが大きく息を吐く。

 なんでこいつはこんなに余裕なんだ。


『んじゃ、まずは状況を説明するぞ。人間は二方向から攻めてくるらしい。一つはアストロア王国方面。もう一つはサニア王国とテクシオ王国方面。この二つの国は北西にあるからな。攻めてくるなら同じ方角だ』

『……テクシオっつったら……』

『……俺たちが元いた棲み処の近くにある、人間の棲み処だ』


 ガンマはこの名前を憶えていた様で、若干苛立たし気に爪を地面に立てた。

 子供が少しびっくりしたのを見て、それを引っ込ませる。


『ぶっちゃけこれは、お前には任せられん』

『なんでだ』

『仲間ごと吹き飛ばしそうだからな……』

『いや、そんなことは……』

『ガンマがキレたら対処できるの兄ちゃんしかいないんだよ。それに一回、我を失っていたしね』

『う、ぐぬぬ……』


 ガンマとしては敵を討ちたいのだろう。

 それはそうだ。

 だがそれでまた我を失い、敵味方関係なく攻撃されると、こちらにも甚大な被害が出る。

 そうなる可能性は低いだろうが、あれを一度止めようとして失敗した身からすれば、あまりやらせたくない配役だ。


 ベンツの話を聞いて、ガンマは少し悔し気に唸った。

 自分がやらかしたことを反省はしているし、これ以上大きく出なかったっていうのは成長した証なのかもな。


『すまんなガンマ。お前にはアストロア王国の方を任せたい。攻城兵器なんかも持ってくる可能性があるから、それを余裕で壊せるお前が適任だ』

『はぁ……。分かった。兄さんに従おう』


 これは予定ではなく確定で良さそうだな。

 さて次は……一角狼たちの動きについて考えてみるか。


 こいつらは雷魔法しか使えないが、それだけでも普通に強い。

 雷を触れさせたらほぼ勝ちが決まるんだからな。

 いってしまえばこいつらは雷魔法のスペシャリストだし、その技術面も目を見張るものがある。

 となると……。


『ヴェイルガ。お前たちにもアストロア王国の方面を頼みたい』

『ガンマ殿と同じ方角ですね! ですがよろしいのですか? 僕はレーダーで敵の位置を確認することができますが……。二つの棲み処かから来る方角の情報を知る為に、僕だけはそっち側にいた方がいいと思うのですが』

『んー、それなんだけどな。俺がそっち側に居れば問題なさそうなんだ。だから情報を集めることができるヴェイルガに、俺がいない方角を任せたいんだ』

『ああー! なるほど! でしたら僕は適任ということですね! 任されました!』


 嬉し気に尻尾振ってんな……。

 イヌかお前は。

 ま、ヴェイルガがそっちに行くっていうことになると……。


『俺はサニア王国とテクシオ王国が来るであろう場所に向かう』

『まぁそうなるね。他に誰か連れていく?』

『ベンツ、それとレイ、ウェイス。お前ら三匹を連れていく』

『『……ほぇ!?』』


 名前を呼ばれて驚いた様子を見せた二匹は、聞き間違いでじゃないだろうかと耳を疑っている。

 大丈夫だぞお前たち。

 合ってるから。


『それとメイラムとラインは子供たちと留守番な。三匹を守ってくれ』

『分かり、ました』

『ちょっとオール兄ちゃん! 狩りに行くのはいいけど俺は大軍を相手にする魔法なんて持ってないよ!? 一対一が得意なだけだし!』

『レイもなの! 多対戦は得意だけど、そんなに長い時間使えるわけじゃないのー!』

『オール兄ちゃん……! ぼ、ぼくは!?』

『説明するから待つんだ……』


 言い寄ってくる三匹を何とか宥めつつ、その理由を説明する。

 まずはドロ……。


『ガンマの近くで戦うことになるんだ。だから遠距離魔法が得意なドロがそっちに行くのは当然だろう』

『あ、そ、そっか……。ガンマ兄ちゃんの隣り……危ないもんね……』

『……ん?』

『レイは周囲の敵を冷気で凍らせることはできるけど、それは味方にも被害が及ぶ。だからできるだけ味方の数が少ない方に配置する。ベンツは回避できるだろうしな』

『なるほどなの!』

『ウェイスはなんとなくだ』

『俺だけテキトー!?』


 いや、まぁ……なんていうんですかね。

 似てるんだよ能力が……。

 ここはちょっとした好奇心と好みだな、うん。


 ということで、アストロア王国の方に向かうのは……。

 ガンマ、一角狼たち、ドロ。

 サニア王国とテクシオ王国の方に向かうのは、俺と三狐、ベンツ、レイ、ウェイス。

 ライドル領に残るのはメイラムとラインということになった。


 まぁこれはまだ予定だし、一角狼、もしくはメイラムに少し移動してもらうことになるかもしれない。

 ガルザは絶対に動かせないけどな。

 通訳いないし。


 ってなると俺が向かう方にも誰か通訳ができる奴が欲しいところだが、無理にさせる必要はないだろう。

 前は人間たちが提案してきたしな。


 さてと、あとは敵の動きを監視しておかないとな。

 長いことかかりそうだけど……まぁやってみますか。


『んじゃ会議は終了! 敵が攻めてくるまでは、いつも通りに過ごしていいぞ~』

『れ、レイ! 特訓だ!』

『分かったのー!』

『むむ! 僕もやるのです!』

『『ヴェイルガはびりびりするからやだ!』』

『!!?』


 ふ、振られてやがる……。

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