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8.5.Side-ディーナ-リーダー会議


 ヴァロッドがギルドから出た後、ディーナは冒険者を集めることにした。

 とは言っても招集する人物は決まりきっているのでそんなに時間はかからなかった。


 呼んだのは三人。

 誰もがパーティーメンバーのリーダー格であり、冒険者ランクも高位で実力のある兵どもだ。

 ハバル、ナレッチ、ファイナン。

 ここに呼んだのはこの三人である。


 リスティも彼らと引けを取らないほどの実力者ではあるのだが……派手好きなので隠密行動には向いていない。

 なのでここに呼ぶことはなかった。


 長いつばのハットを被り直しながら、ハバルはディーナに再確認をする。


「俺たちに……情報収集を任せたいって? アストロア王国の?」

「ああ」

「なんとも……難易度が高そうな話だ」


 ディーナは既に全員にアストロア王国の情報収集を依頼したいと話をしていた。

 だがあの国は広大で、情報を収集するのにも時間を有する。

 それに加え、今ライドル領にいる者たちは危険視されている。

 なので国に入ることすら難しいのだ。


 だが調べて欲しいのは、中に入らなくても分かる情報。

 一番欲しい情報はアストロア王国の兵士の動向だ。

 この領地を反乱軍として認識しているのであれば、兵を動かす可能性は十分にある。

 その兵士の動向さえ分かれば、対処しようもあるのだ。


「お前たちなら万が一見つかっても逃げ切れるだろうからな」

「分かんないよー? 僕たちと同じくらい強い奴らもごろごろいるんだから」

「だな。だがハバルが一番適任なんじゃないか?」

「……俺かぁ……」


 ハバルの能力は空を飛ぶことができる。

 機動力はここにいる誰よりもあるだろう。

 しかし、その強すぎる魔法は扱いが非常に難しいということも、ここにいる皆が知っている。

 それでもハバルが一番適任であった。


「だが一人だけでは駄目だろ」

「ああ。最低でも二人は欲しいんだ。人が居ればいるだけいいんだがな」


 監視と報告は同時にはできない。

 だから二人以上での監視が必要なのだ。


 ではあと一人はどうするのかと考えるが……。

 もう決まっているようなものだった。


「ナレッチだな……」

「だな」

「あ、やっぱり?」


 ファイナンは隠密行動が得意ではない。

 その性格も相まって苦手なのだ。

 一方ナレッチはそういう仕事でも淡々とこなすし、明るいこの性格で人から話を聞くのは得意である。


 しかし今回は人との接触はしないだろう。

 何とか中に入れればその限りではないが……戦争の準備をしているかもしれない国においそれと入る人間は目立つ。

 あまりやりたくはない行動だ。


「ま、何とかなるっしょ」

「……なぁ。今思ったんだけどよ」

「なにー?」


 ファイナンが何かを思い出すように外を見ながらそう言った。

 ここからは隣の建物しか見えないが、彼はそれより先のものを見ている様だった。


「……エンリル……使えないのか?」

「えーんーりーるー?」


 それを聞いて、三人は考え込む。

 確かにあの機動力は馬よりも速い。

 いってしまえばハバルの最速移動よりもはるかに速い機動力を持っているだろう。


 彼らを連れて行くことができさえすれば、情報の報告は素早い速度で行うことができるだろう。

 しかしそれが可能なのかと言われると、頭を悩ませる。

 何故なら、会話が成り立たないからだ。

 だが例外はある。


 ベリルだ。

 彼だけはエンリルの言葉を聞き、通訳をしている。

 何故それができるようになったのかを覚えている者はいるものの、どうして会話ができるようになったかを理解している者はいなかった。


「それが可能ならば……」

「集めた情報の通達が有り得ない程に速い速度でできる。情報も戦いでは必要な事だし、何なら情報で戦況が左右されることさえある」

「じゃあ……試してみるか?」

「誰が?」

「ハバルが」

「……? ……!? 俺か!?」


 いきなり丸投げされたことに驚くしかないハバル。

 いつもは寡黙だがこの時ばかりは大きな声を出してしまった。


 嫌というわけではないが、それなりに不安もある。

 それが成功するかどうか怪しいからだ。


 彼らは知らないことだが、血印魔法とは非常に強力なものである場合が多い。

 ベリルとセレナが結んだ血印魔法は一方的なものだったので、解除条件も緩いものだが、全てを理解した上で血印魔法を使用する場合は、双方の同意が得られたということになり、強力なものとなるのだ。


 ハバルはそのことを知りはしなかったが、危険な事なのではないかと感じ取っていた。

 ベリルが成功しているので問題はないだろうと思ってはいるが、いざ自分がとなるとやはり一歩身を引いてしまう。


「だがやるとしてもどいつにやるんだ? あの黒のエンリルは難しそうだぞ?」

「角の生えているエンリルは雷魔法が得意だと聞いたことがある。そいつでどうだろう?」

「ありだな」

「お前ら……人の許可を取らないで……」


 他人事だと思ってする行動は意外と早い。

 ハバルを含めた冒険者四人は、まずフェンリルに話を聞いてみるべく、ギルドを出たのだった。


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