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8.1.初陣

以前予約投稿していた分がすべてなくなったので、今日から完結まで毎日投稿です

完結まで大体四ヶ月ですので、それまでどうぞ皆様お付き合いくださいませ


 あの事件から二週間……。

 未だに領民の不安は消えずに残っており、怯えながら生活するという日々を過ごしていた。

 だが俺たちがいることにより、生活自体は安定している。

 とはいえ賑やかだった街は、人がいるというのに寂れている気がする。


 まぁこうなってしまうのも仕方がないことだ。

 完全に孤立してしまったからな。

 支援を求めようにも今の状況では不可能だろうし、アストロア王国も何も言ってこない。

 何があっても黙認する構えなのだろうか。


 やはり、領民には何があっても大丈夫だということを行動で示さないといけないな……。

 ガンマのことはヴァロッドが説明してくれたおかげで、前と変わらない扱いをしてくれている。

 しかしそれでも怖がっている人間はいるようなので、そこには近寄らないようにとガンマにも伝えている。

 無理に行くことはないだろうけど、念のため。


 それと、シャロの代わりに一角狼たちにこちら側へ来てもらった。

 こいつらはそもそも人間の事をあまり脅威とは感じていないので、領民ともすぐに打ち解けた様だ。

 とりあえずこいつらが居れば防衛はできるだろう。

 勿論俺たちだけでも可能だが、これも安全を配慮してのことである。

 こいつら普通に強いからな。


 しかし、こうして不安がられると士気にも関わってくる。

 もし戦争になったとして負けると考えている者は多いだろうが、逆に分からないという者もいる。

 だが大丈夫と言う者は一人としていない。

 何とかこの状況を打破しないと……。


 だがそんな精神状態の中でも、俺たちには変わらず接してくれている。

 ありがたいことなのだが……無理をしているということも分かるのだ。

 早くこの不安を取り除いてやらなければ。


 しかしこんな時だからこそ、悪い知らせもやってくる。

 ようやく、動き出したらしい。


 ヴァロッドがベリルとセレナを連れて、深刻そうな顔でこちらにやって来た。

 手には小さな紙きれが握られている。


「フェンリルよ」

『なんだ?』

「サニア王国に兵が集められ、こちらに進軍してきているらしい。更にアストロア王国は私たちのことを反乱軍と仕立て上げ、その侵略を許したようだ」

『やっとか。待ちくたびれたぞ』

「……? 待っていたのか?」


 そりゃそうさ。

 もしかしたら……もしかしたらだが……。


『敵討ちができるかもしれん』

「……そうか」


 ていうか、ヴァロッド凄い疲れているみたいだな……。

 まぁあれから二週間、領民に声をかけては色々言われてたりしたからな。

 こいつも同じく不安なのだ。

 この領地の代表というだけで、同じ人間には変わりがないのだから。


『数は? 位置は?』

「私の部下からの情報だったから、距離としては意外と近くに来ているらしい。残り五日と言ったところか。数は……五千。これが先鋒だ。まだ次も来る。他の国にも増援を要請しているとみていいだろうな」


 なーんだ五千か。

 ……あの時の魔物と比べれば、そんなに多い感じじゃない気がするなぁ。

 つっても頭がいいだろうから、簡単には捌けないだろうけどね。


 じゃ、行くとしますか。


『ヴェイルガ!』

『はいここに!!』

『一角狼を全て集めて俺について来い』

『おお! オール様と一緒に狩りですか! 了解しましたお任せくださぁい!!』


 雷魔法を使わずに仲間を呼びに行ったヴェイルガ。

 先ほどの会話をベリルの通訳で理解したヴァロッドは、明らかに焦り始める。


「何をするつもりだ!?」

『何って……その五千の敵を片付けに行くんだよ』

「なっ!?」

「せ、セレナ。本当こう言ってるの?」

『言ってるよー?』


 そもそも、この状況を作り出してしまったのは俺たちだ。

 これくらいはしておかないと、申し訳が立たない。


 それに、一角狼たちだけで何処までできるか見てみたいというのもある。

 心配には及ばなさそうだが、とりあえずガンマも連れて行く。

 こいつの本当の本気も、見てみたいからな。


 俺はすぐに立ち上がってライドル領を出ようとする。

 だがヴァロッドは後ろから呼び止めた。


「無茶だ! 数匹で行くつもりか!?」

『あー大丈夫だ』

「なわけないだろう!」

『じゃあお前も行くか? 他の奴は邪魔になるからお前だけな』

「私が一人行っても意味ないだろう!?」


 そんなことないんだけどなぁ~。

 ていうかめんどくせぇから連れてこう。


 闇の糸で絡め取り、俺の背中に乗せる。


「のぉ!?」

『セレナ。ベリルに半日ほど借りていくと伝えてくれ。後はレイドに任せておけば問題ない』

『あいっ!』

「え!? お父様!? セレナ!? どうなった!?」

『連れてくってー。れーど? に後は任せればいいって言ってたよ』


 よし、なんか聞かれる前に行こう。


 俺はすぐにダッシュして敵のいる方へ向かって行く。

 一角狼たちも俺が移動していることに気が付いたのか、すぐに追いかけて来た。

 ガンマも一緒だ。


 まぁ領主が居なくなるのは問題かもしれないが、見てもらった方が早いからな。

 じゃーさっさとやっちゃいましょう。


「おわああああ!?」

『『『うるさいのです』』』

「!? やめろ抑え込むな!!」


 ナイスだ三狐。


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