7.4.見定める
ラインの連れて来た仲間は、まさかのガンマとシャロだった。
この二匹は人間に対してとても否定的な意見を持っており、未だ恨みを持っている。
一番来る可能性が少ないと考えていた二匹だったが……一体どういう風の吹き回しなのだろうか。
ラインが説得したとも思えないし……。
とにかく話を聞いてみることにしよう。
だがここにいては話し合いはできなさそうだな。
拠点の方に戻ることにしよう。
ラインもそっちの方に向かっているみたいだしな。
『メイラム、ここは頼んだ』
『……? 頼んだとは……?』
「あ! いたいた!」
『!?』
すると、遠くの方から数人の人間がやってきた。
彼ら彼女らは手に様々な手入れ道具や飾りつけ道具を持っており、メイラムに近づいてくる。
俺は匂いを嗅いでいる時、人間がこちらに向かってきている事が分かっていた。
各々が飾りつけをする為の道具を持っていたのにも気付いたので、こうして逃げることにしたのだ。
その事にようやく気付いたメイラムは俺の後姿を見ていたようだが、追いかけてくる事はしなかった。
任されたことを全うしようとしたのだろう。
だが俺は後ろを振り返らずに拠点へと向かった。
多分次に会う時は綺麗になっていることだろう。
戻ってみると、既にそこには三匹が座っており、俺を待っていたらしい。
歩いて近づき、話を聞くためにとりあえず座っておく。
どう聞いたものかと悩んだが、ガンマの方から話しかけてくれた。
『兄さん、驚いたか?』
『当り前じゃないか。随分この作戦に否定的だったしな。お前も、シャロも』
俺がそう言うと、ガンマには変化はなかったが、シャロは少しだけ目を背けた。
それがどういう意味なのかはよく分からなかったが、ここに来てくれたというだけで進展はあったような気はする。
ありがたいことだ。
こいつらも、人間たちを嫌いながらも変わろうとしてくれている。
では俺はそれをサポートしなければならない。
そう思っていたのだが……。
『俺は、まだ人間を許せない』
『俺もだよオール兄ちゃん』
『……ふむ』
考えは、未だに変わってはいなかったようだ。
ではどうしてここに来たのかが気になる。
それを聞こうとしたのだが、俺が何かを言う前にまずシャロが話をし始めてくれた。
『だから、見定めようと思う』
『……』
『俺たちは、兄さんみたいな切り替えはできない。人間が俺たち家族の事を殺したことは変わらないんだ。俺たちに利益のある人間だとしても、信頼できる人間であれど、どんな奴が居たとしても、この事実だけは変わらない』
こいつらの言っている事は、一切間違っていない。
だから俺も何も言えない。
暫くは、言いたい事を言わせてあげよう。
俺も再確認しておかなければな。
俺が小さく頷いたのを確認した後、シャロがまた話し出す。
『でも、オール兄ちゃんが言うように、俺たちの子供たちのためになるのであれば、やってみる価値はあると思う。だから、一番オール兄ちゃんの考えに否定的だった俺とガンマ兄ちゃんが来た』
『ああ。人間が本当に変わってんのか、この目と鼻で確かめる』
『お前たちは、お前たちのやり方で変わるんだな。分かった』
それで考えを変えてくれるのであれば、それでいい。
納得のいく答えを探し出して欲しいものだ。
こいつらなりに、人間たちを信頼しようと、自分たちが変わろうとしてくれている。
俺はそれだけでも嬉しい。
だが……ここにこれだけの数の仲間が滞在するとなると、流石に本拠点から食料を少しばかり持ってこなければならないな。
メイラムとベンツ、セレナ、ラインであれば人間に変な事をする事はないだろうし、ラインにガンマとシャロを見張らせておけばいいだろう。
ワープで行けばいいので、運び入れ自体は簡単だが……。
またセレナの時みたいに子供たちが入ってきたら洒落にならん。
時間はかかるが、ここは徒歩で行くことにしよう。
近場まではワープを使えばいいだろうけどな。
子供たちが来られない距離で使うかね。
『じゃ、お前たち三匹は常に一緒に行動してくれるか?』
『それくらいなら』
『お、オール兄ちゃん。多分僕じゃこの二匹止められないよ……?』
『心配すんなよライン。俺たちだって根本を叩き潰しに来たわけじゃねえんだから』
『信じてるからな』
『おう』
うん、とりあえずはこれで問題なさそうだ。
じゃあ俺はサクッと食料を回収してくるとしましょうかね……。




