7.1.来た仲間
あれから数日が経った。
このライドル領の復興は滞りなく終了し、以前までとはいかないが活気を取り戻しつつあるようだ。
以前のあの戦いで、住民の多くがやられてしまった。
その原因を作り出したのは俺たちなのだが……できるだけの事はしたつもりだ。
それはそれとして……この数日で俺が里の近くにいるという事も慣れてきてしまったようで、時々肉や食べ物を人間たちが持ってくるようになった。
そんなに遠くない場所に拠点を構えているので、触れ合いなどはそれなりに頻繁にしている。
無論俺とセレナだけではあるが。
だが俺の毛並みは人間にとってはあまり評判は良くないようだ。
どうやら毛にも魔力が籠っている様で、触ると硬いのだとか。
もう毛が身を守るための防具となっているらしい……。
それは知らなかった。
長毛種みたいな感じだから、結構柔らかいと思ったんだけどなぁ。
おかしい。
まぁ別にいいけどさ。
それと、三狐が帰って来た。
無事にリューサーと出会うことができたようで、血印魔法の話を聞くことができたようだ。
今回の状況を説明して見たところ……。
『『『セレナが解約したいという考えを持てば、すぐにでも解約される比較的安全な血印魔法のようです』』』
『……うん、セレナ絶対解約しないよねぇ?』
『なああああああ!!』
一時的な血印魔法ではあるため、その効力も非常に弱く簡単に解除はできるらしいのだが……。
あの様子では絶対に解約はしないだろう。
むしろこの状況を心底喜んでいるところまである。
めちゃくちゃ楽しそうだもんなぁ……。
それを聞いてベンツは地面に伏せました。
こいつも今のセレナの心情は理解しているようなので、解約は絶望的だと思っているらしい。
耳が地面に付くんじゃないかってくらい下がっている……。
まぁ……いいんじゃない?
あの子が人間との足掛かりになっている事は間違いないし、今の所人間たち全員がセレナの事を受け入れている。
なんならそれを羨ましがっている者もいる程だ。
それに……。
『人間の食ってる食べ物美味くない?』
『『『分かります』』』
『今それどころじゃないんだけど』
普通に焼いただけの肉とは全く違う味がするのだ。
塩コショウでも振りかけているのかは分からないが、しっかりと味というものが付いている。
セレナは今ベリルの家でお世話になっているので、毎日あの食事を食べているのだろう。
まさかこっちに帰ってこない日が来るとは思わなかったが、ベンツもなんだかんだ言って妥協してきている節はある。
というか、どうにもなりそうにないという諦めの方が強いかもしれないが。
『お、来たか』
遠くから嗅いだことのある匂いがした。
暫くするとその狼は俺たちがいる洞窟に顔を出す。
『来ましたよ……オール様』
『少し遅かったな、メイラム』
紫色の毛並みをした狼、メイラム。
毒魔法のスペシャリストである。
呼んだ理由なのだが、実はダークエルフの襲撃であの毒が矢に含まれていたらしく、数人の人間が危ない状況にあるのだ。
人間の回復魔法で延命はできているようだが、毒を何とかしなければなんともならないらしい。
という事でこいつを呼んだのだ。
早速人間の里に向かって解毒治療をしてもらうことにする。
ベンツはセレナの様子を見に向かうようだ。
大きなため息が後ろ髪を引くが、とりあえず俺たちは人間の治療へと向かうことにした。
彼らを助ければ、また俺たちの警戒心はより一層解かれることだろう。
『メイラム、他の仲間は上手くやっているか?』
『ええ……。ガンマ殿と、シャロが……筆頭となり、上手くやっています……』
『スルースナーやレイは?』
『あいつは、最近動きませんね……。理由は分かりませんが。レイは、また獲物をこちらに、持ってきました……』
ふむ、皆が皆上手くやっていることに安心はしたが……スルースナーがあまり動かないっていうのはなんだか妙な話だな。
昔から俺の副リーダーとして仲間をまとめ上げ、いろいろと動き回っていたように感じるのだが……。
それで結構助けられたし、何かあるのであれば言ってもらわなければならないな。
今度帰った時にでも話を聞いてみるとしよう。
何もなければいいのだが……体調不良かな?
ていうかレイたち、あいつらは一体どれだけ持ってくれば気が済むのだ。
山を越えた先はそんなに魔物が居たのか……?
あ、いや……動物も混じってたな……。
んー、これでもテクシオ王国での土地の汚染と何か関係があることなのだろうか。
あの土地のせいでこっちにまで被害が出るのは本当に止めてもらいたい。
だが随分ここから離れているはずなんだけどな。
そう簡単に魔物が押し寄せてくるだろうか?
あの魔族に自分の住んでいる所のこと吐いてもらえばよかったなぁ。
まぁ今は干渉できないだろうし、放っておいても問題ないだろう。
『じゃあメイラム、頼む』
『了解、しました』




