5.39.説明
住処から東にある平原へと、リューサーに降りてもらった。
そこには既にベンツがいて、毛を逆立てて警戒している。
俺たちが降りたと同時に、ガンマも到着したようだ。
『なんだなんだ!? どうなってんだ兄さん!』
『落ち着けー?』
『うっわなにその毛玉!』
『『『毛玉とは失礼な!!』』』
『そう思ってんなら返事したら駄目だろ』
『『『あっ!』』』
ベンツもうっわってすごい言い方するじゃん。
俺びっくりしたわ。
リューサーも言葉は分かるようなので、どことなく楽し気にしている様だ。
『オール、この子たちが仲間?』
『ああ、そうだ。俺らの群れの中でも強い奴だな。俺の兄弟だし』
『あら~。じゃあ強そうね!』
『ガンマだったら力で負けるかもしれないぞ?』
『……それは嘘でしょ~』
『…………』
『え、マジなの?』
いやまじなの。
俺でも力だけだったら絶対に負けるもん。
俺たちがそんな風に話していると、状況をしっかり説明してくれとベンツに怒られてしまった。
まぁそうだよな。
すまんすまん。
俺はとりあえず、この狐たちに会ったという事と、それから竜がリーダー争いをしているので、それを何とかしてもらうために竜に会いに行ったという事を説明した。
俺が行く前にした遠吠えはしっかりと聞こえていたようだが、まさか竜に会いにい行くとは思っていなかったようだ。
まぁ、そりゃそうだ。
結果として竜とは友好関係を結べそうだし、特に問題はない。
この狐も俺に従ってくれるので仲間として迎え入れるつもりだ。
なんせ知らない魔法沢山知ってるっぽいしな!
教えてもらいたいのだ。
空間魔法とか夢が広がります。
『と、とりあえず現状は把握したよ……』
『竜って……。兄さんよく仲良くできたね』
『まぁいろいろあったからな』
ほぼ偶然だったけどな。
リューサーが転生者じゃなきゃこうはいかなかっただろう。
幸運だった。
とりあえずリューサーと契約はしたし、後はリューサーが竜たちを制圧すれば、竜が襲ってくるなどという事は無くなるはずだ。
幸い、リューサーもやる気になってくれたみたいだからな。
よかったよかった。
そう言えば、山のヌシってどうなったんだろうか?
なんかもう襲ってくる様な敵って、あの魔物の軍くらいしかいないしな。
特に脅威という脅威もいないわけだが……。
んー。
『その辺どうなってんの?』
『『え……?』』
ベンツとガンマが全く同じタイミングでそう言った。
これにはどこか既視感がある。
こういう場合は決まって……。
『『何で知らないの?』』
と言われるのがオチである。
なになになに。
『もう決まってるよ?』
『ワァッツ????』
まぁじで?
え、うっそ本当に?
俺全然そんなの分かんなかったんだけど。
すると、またベンツが大きなため息をついてから説明をしてくれた。
『……竜と話が出来ていることが証拠だよ……』
『んうぇ?』
俺はリューサーの方を見る。
すると、リューサーもうんうんと頷いていた。
なんでお前も知ってんねん。
あんた俺と同じ転生者だろ。
えーと……あ、そう言えば。
俺が初めて竜の住処に行ったとき、他の竜にあったけど話はできなかった。
でもリューサーとは出来たよな。
それとなんか関係があるのか?
んーよくわからん。
首を傾げている俺に、リューサーが説明をしてくれた。
『実は私もびっくりしたのよ。竜族と話すことが出来るのは、それぞれの山のヌシだけなの』
『へー……。でもリューサーと会う前に他の竜と会ったけど、そいつとは会話できなかったぞ? それはなんでだ?』
『え、そんなの決まってるじゃない』
まじか。
『雑魚だから』
『ブッ』
ええええええ……。
りゅ、竜界隈怖いなおい……。
まぁ確かに弱かったけどさ!
周囲を見れば、なんか知らんけど皆冷たい目で俺を見ていた。
やめろよ。
『じゃ、私は帰るわね』
『お、おう』
リューサーはそう言って、大きく翼を羽ばたいて空に飛んでいく。
風圧に飛ばされないように、俺は空間魔法で透明な壁を作る。
ベンツとガンマはなぜ風が来ないのか不思議がっていたようだったが、それを説明する前にリューサーは飛んでいってしまった。
それを見送った後、俺は住処に帰る為に足を運んだのだった。




