5.38.血印魔法
いや怖すぎるだろ!
なんだよその魔法!
『でも大丈夫! 今回の契約内容は、私とオールの間では戦いを禁ずるって奴だから! オールの群れがこっちに来ることは無いだろうし、私たちの群れが敵意を持ってオールの住処に行けば、契約違反としてすぐに発動するわ!』
『お、おう……。なるほどな……』
にしても怖すぎる。
どうしてこんな魔法覚えてるんだよこいつは……。
だが安全は保障される物の様だな。
それなら安心だ。
ん?
だけどそれって……リーダー同士がするから可能な契約であって、まだリーダーでないリューサーは少し違うのではないか?
この辺はどうなっている。
『結果的には私がリーダーになるから問題ないわ!』
『その間は……?』
『…………急ぐから』
おうマジかこいつ。
つまるところ、この血印魔法は配下になってもらわないと発動しないものなんだな。
俺は既にリーダーだし、全員が俺の事を認めてくれているから問題ない。
だがリューサーはまだ数匹の仲間しかいない。
そいつらにはこの血印魔法が適用されるだろうが、仲間になっていない奴は無理なんだな。
てなるとリーダーの存在ってすごい大きいんだね。
俺がこの契約をしたら、他の子までその契約の内容を守らなければならなくなる。
今回は比較的優しい物だから問題ないが、そうでない場合はしっかりと考えておかなければいけないな。
気を付けよう。
『ま、今回はいいか。できるだけ早く頼むぞ』
『任せて!』
俺は肉球を風刃で斬り、リューサーの血の上に血を垂らす。
それが確認出来たら、すぐに治癒魔法で傷を回復させた。
何か起こるのかなと思って見ていたが……。
特に何も起こらない。
こんなに地味な物なのだろうか。
『これでいいのか?』
『これで完成よ』
『結構地味なんだなぁ……』
なんかこう、もっと魔法陣みたいなのが出ると思ってた。
あまりにも普通な物だったので、少し拍子抜けだ。
まぁ、できたというならそれは信じておこう。
しかし、どうして竜はこんな魔法を持っているんだ?
契約魔法とか初めて知ったぞ。
どうやって使うん?
『どうやってこの契約魔法の事を知ったんだ?』
『ああ。竜はね、契約魔法を沢山持っているのよ。力を求めてやってくる人間の為にね』
『へぇ……』
そうなんだ……。
まぁそう言う事もあるだろうな。
ここに来るまで結構な時間を有してしまったし、人間であれば数か月の旅になるだろう。
うん、どうでもいいな。
よし、帰るか。
『じゃ、俺は帰るよ』
『あーだめだめ! 私が送っていくわ! じゃないと場所分からないじゃない!』
『…………マジで?』
◆
という事で空を飛んでいます。
『『『ぎゃあああああああああああああああああああああああああああ!!!!』』』
『うるせええええええ!!』
『はははははは! 良いでしょ空! これだけは本当に良いわよ~!』
振り落とされないように、闇の糸で体を固定している。
まさか俺が他の生物に体を固定させるときが来るとは……。
あっ。
『ああああああああああああああ!!』
『『天ーーーー!!!!』』
天が俺の体から離れて闇の糸一本で繋がっている状態になってしまった。
絶対に取れないようにはしているのだが、天からしたらもう生きた心地はしないだろう。
とりあえず、ゆっくりと糸を手繰り寄せて、俺の体に避難させる。
天が放心してる……。
ごめんて。
『オールー! こっちであってるー?』
『高すぎてわからん!! 渓谷があったらその辺なんだけどなー!』
『あー! 分かったわ! 降りるわねー!』
とりあえず見つけてくれた様だ。
そもそも背中からだと何処に何があるか分からん。
だが、地面に近づいていくにつれて何処に何があるのかを把握することが出来た。
奥に少し広い空間が見えたので、あれは東にある平原だ。
あそこに降りてもらうことにしよう。
目立つからな!
あ、ベンツがすっ飛んできてる。




